『 Freedom』 Jonathan Franzen(Farrar Straus & Giroux )
「アメリカを代表する作家ジョナサン・フランゼンの新刊」
この8月31日、ジョナサン・フランゼンの「Freedom」が発刊された。発行日の1週間以上前、8月23日付けタイム誌が僕のメールボックスに届き、その表紙がフランゼンだった。表紙には大きく「Great American Novelist(偉大なアメリカの小説家)」の文字があった。
これまでタイム誌の表紙となった小説家はサリンジャー、ノボコフ、モリソン、ジョイス、アップダイクの5人だけ。フランゼンも数少ない優れた作家たちの仲間入りを果たしたことになる。
ニューヨーク・タイムズ紙もこの作品を賞讃する評を載せ、ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューでは「アメリカン・フィクションの傑作」と大きな拍手を送った。
前作の小説「Corrections」で全米図書賞を受賞した著者が、次作のフィクションで「Corrections」を超えられるか注目されていたが、9年間を経て発表された新作は読者の期待を裏切ることはなかった。
僕は8月31日の午前中に予約をしていたこの本を受取るために近くのバーンズ&ノーブルに出かけていった。レジの後ろにある予約本の棚には「Freedom」があと5冊ほど並んでいた。
僕と同じように売切れを心配して予約をする人がいるんだなと思いながら、500ページ以上ある本を手にアパートまで戻った。
「Freedom」は夫婦であるパティとウォルター、彼らの子供たち、そしてウォルターの親友でアンチヒーローであるリチャードの人生を追った作品だ。
舞台がアメリカの中産階級家庭となっているところは前作「Corrections」と同じだ。
アルコール中毒の父親を持つウォルターは家の仕事を手伝うために自分を犠牲にして家から近い中流の大学に入学する。大学でスター・バスケット選手だったパティは、議員である母親に政治・経済的影響力を持つ家の息子にレイプされるが、両親はことを荒げたくなく、彼女は警察に訴え出ることをあきらめる。
大学でウォルターのルームメイトであるリチャードは、ウォルターを価値のないガールフレンドたちとの関係から救うために、そのガールフレンドたちとセックスをして彼女たちがウォルターに値しない人間だと証明してみせる。
その後、ウォルターはパティと結婚してセント・ポールに暮らすが、彼らの子供たちは素直には育ってくれない。
そして、パティとリチャードの間にはやり残したものがあるという感情が残っている。それは、愛か欲情か。ふたりの関係はどこかに出口を見いださなければならないものとなっていく。
パティとウォルターは、ワシントンDCに引越しをし、ウォルターはウエスト・ヴァージニアの山の自然を破壊する石炭業界の計画に関わっていく。
「フリーダム」は人々が手にある自由とどう関わっていくかをテーマとした作品だ。そして、その「自由」が人々になにをもたらしていくかを描いた作品といってもいいだろう。
「自由」のなかで人々は何を選び取り、その選択が愛や幸福、家族、そして愛する人々との関係、ひいては自分や他人の人生をどう変えていくかを著者は時には残酷な視線を持って観察してく。
「Freedom」はアメリカが最も価値を置く「自由」をテーマにしている優れたアメリカン・フィクションだった。