書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

菊池重雄

『ベンジャミン・ブリテン』デイヴィッド・マシューズ/中村ひろ子訳(春秋社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ブリテンと無垢の世界」 2013年が、英国の作曲家、ベンジャミン・ブリテンの記念の年(生誕100周年)であったことは記憶に新しい。それを記念して、彼がかつて契約していた Decca レーベルを所有するUniversal は自作自演を中…

『ボブ・ディランという男』デイヴィッド・ドールトン/菅野ヘッケル訳(シンコーミュージック・エンタテイメント)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「アメリカの地にボブ・ディランのうたが聴こえる」 聴き手がボブ・ディランをどのように受けとめているかを知る最良の方法は愛聴盤を列挙してもらうことである。いや、この方法は前提に無理がある。ダウンロードやストリーミン…

『エンニオ・モリコーネ、自身を語る』エンニオ・モリコーネ、アントニオ・モンダ/中山エツコ訳(河出書房新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ロングショットとクローズアップ」 本書は2009年9月から、約10か月間、計15回にわたって行われたエンニオ・モリコーネとアントニオ・モンダの対話記録である。映画音楽にとどまらず、現代音楽(本文中では「絶対音楽」)の高…

『クレイジー・ライク・アメリカ―心の病はいかに輸出されたか』イーサン・ウォッターズ/阿部宏美訳(紀伊國屋書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「アメリカ型精神疾患の蔓延と克服の可能性」 われわれはいわゆる精神疾患もしくは精神疾患のようにみえる状態にどのように向かい合っているだろうか。ここで問うているのは、自分や周囲の者がそれらに罹患した場合のことではな…

『レマルク―最も読まれ、最も攻撃された作家』足立 邦夫(中央公論新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「あのレマルクと二つの大戦」 書店の棚からレマルクの小説の多くが消えて久しい。このような時代にレマルクの評伝を手に取ろうとするのはどのような人たちなのだろうか。唯一、版を重ねている、彼の代表作『西部戦線異状なし』…

『スウィング・ジャパン―日系米兵ジミー・アラキと占領の記憶』秋尾沙戸子(新潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 いったい何人の日本人がジミー・アラキ(James T. Araki) の名前を知っているだろうか。日本の戦後期にスウィング・ジャズやビ・バップを広めたジャズ奏者として? それともノーベル文学賞候補にもなった井上靖の欧米における…