書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

本田由紀

『フランス ジュネスの反乱―主張し行動する若者たち』山本三春(大月書店)

→紀伊國屋書店で購入 2005年秋、ジエドとブーナという2人の若者が工事現場に仲間と入り込んだだけで警官隊に執拗に追跡され、立入禁止の変電施設に逃げ込んで、黒焦げになって感電死した。それをきっかけに、「絶望した少年」たちの暴動がフランス各地で勃…

『キャリアラダーとは何か-アメリカにおける地域と企業の戦略転換-』J・フィッツジェラルド著、筒井美紀・阿部真大・居郷至伸訳(勁草書房)

→紀伊國屋書店で購入 独特な本である。何が独特かと言うと、まずもって訳者たちの姿勢がである。翻訳書には珍しく、訳者のひとりによる長い(20頁もある)まえがきがついている。それだけでなく、翻訳部分のあとに、他のふたりの訳者もそれぞれ「論点提起」…

『連帯と承認-グローバル化と個人化のなかの福祉国家』武川正吾(東京大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 「この国において「連帯と承認」はいかにして可能か?」 いかなる論理の飛躍も修辞によるごまかしもない、平明で硬質な文章を読むことは、まさにひとつの快楽である。 私はここのところいっそう、日本という社会の成り立ちの様々な面で…

『キャリアの社会学』辻勝次編著(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋書店で購入 主に聞き取り調査に基づく、4社の大企業で働く人々の職業経歴と職業能力についての重厚な報告である。 第1章と第2章は、それぞれコマツと島津製作所において「一品生産」に従事する、職人的性格の強い労働者を取り上げている。個々の…

『ネオリベラリズムの精神分析-なぜ伝統や文化が求められるのか』樫村愛子(光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「寄る辺のなさ」を埋め合わせるものは何か いま、人々は日々を生きる中で、「寄る辺のなさ」の感覚を強めている。この「寄る辺のなさ」(=流動化・不安定化=「プレカリテ」)の根には、生活を成り立たせる物質的基盤(雇用や収入)が…