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プロの読み手による書評ブログ

UMATフォーラム

『ドラキュラの遺言――ソフトウェアなど存在しない』フリードリヒ キットラー(産業図書)

→紀伊國屋書店で購入 ●「デジタル時代のエクリチュール」 ブラム・ストーカー作の小説『ドラキュラ』への言及から始まる評論集。数々の評論を一貫する問題設定は、メディア環境における「人間」や「知」のあり方だ。著者はキットラー。これまで、情報技術と…

『アートフル・サイエンス――啓蒙時代の娯楽と凋落する視覚教育』バーバラ・マリア・スタフォード(産業図書)

→紀伊國屋書店で購入 ●「蒙」を「啓く」/「網」を「開く」――エンライトメントとエンターテイメントのあいだ 18世紀の啓蒙主義時代に、文字でなく、視覚的なものが、人々の教育においてどのように用いられていたのかを問うこと。もし、本書に記されている内…

『ヴィジュアル・アナロジー つなぐ技術としての人間意識』バーバラ・マリア・スタフォード(産業図書)

→紀伊國屋書店で購入 ●「《観察/操作》としての一致」 「何かが他の何かに似ている…」とは、どれほど確実な認識方法なのか。美術史を専門とするバーバラ・マリア・スタフォードの『ヴィジュアル・アナロジー つなぐ技術としての人間意識』(2006年、産業図…

『S,M,L,XL』(未邦訳)レム・コールハース<br><font size="2">O.M.A, Rem Koolhaas and Bruce Mau, 1995, <I><br>S,M,L,XL</I>, Monacelli Press</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「サイズからコンセプトモデルへ:「ビッグネス」と「スモールネス」」 「巨大な」本 『S,M,L.XL』という本書のタイトルは、展示や住宅を「S」、ホールやオフィスビルを「M」、巨大公共建築を「L」、都市計画を「XL」というように、対…

『情報批判論──情報社会における批判理論は可能か』スコット・ラッシュ(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 今を記述すること。このことは常に困難を伴っている。今を記述しようとしても、記述しようとする今と記述という営みを行う今は必然的にタイムラグを含んでいる。その上に、その記述を読む今が積み重なることで、記述しようとした今は、…

『象徴の貧困2――感覚可能なものの構造転換(カタストロフィー)』(未邦訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 2005, <I><br>De la misère symbolique 2. La catastrophé du sensible</I>, Galilée</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「一般器官学と新たな政治エコノミーへ向けて」 「それは至るところで作動している、(・・・)至るところでそれは複数の機械である。それも、比喩的な意味ではなく。」(ドゥルーズ=ガタリ) 機械、というよりはむしろ器官と呼ぶのが…

『消費文化とポストモダニズム』マイク・フェザーストン(恒星社厚生閣)

→消費文化とポストモダニズム〈上〉を購入 →消費文化とポストモダニズム〈下〉を購入 「ポストモダニズムとは何か」という問いに解を与えようとする試みは、常に挫折する運命にあ るのだろうか。 これまでにも「ポストモダニズムとは何か?」を説明しようと…

『グローバル・カルチャー―ナショナリズム・グローバライゼーション』(未邦訳)マイク・フェエザーストン編<br><font size="2">Mike Featherstone, ed. 1990, <I>Global Culture: Nationalism, Globalization and Modernity</I>, Sage</font>

→紀伊國屋書店で購入 「グローバル・カルチャーの位置」 1955年、アメリカのイリノイ州に第一号の店舗を開いたマクドナルドが始めて日本にやってきたのは1971年のことであった。その後冷戦が幕を閉じ、新しい世界秩序が成り立っていく中で、マクドナルドはそ…

『無信仰と不信1 産業的民主主義の退廃』(未邦訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 2004, <I>Mécréance et discrédit 1.La décadence des démocraties industrielles</I>, Galilée</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「資本主義世界における文化の政治と「記憶媒体hypomnémata」の実践」 資本の流れはあらゆる境界を踏み越えていき、その運動を通して、地球上に存在するさまざまな現実的統一性や想像的な統一性を動揺させつづけていく。そこで生み出さ…

浅田彰×松浦寿輝「人文知の現在」~『表象』第01号、表象文化論学会、月曜社、2007年4月、pp.8-33

→紀伊國屋書店で購入 「<人文知の現在>に抗って ――知のアメリカ化、幼児化、情報化」 人文知をめぐる重層的な問題系のあいだを横断し、人文知の現在を批判すること。閉域化し衰弱しつつある知的空間のなかで、人文知の在り方をその根底から問うこと。浅田…

『知のデジタル・シフト―誰が知を支配するのか?』石田英敬編(弘文堂)

→紀伊國屋書店で購入 デジタル化という問題について考えるとき、オプティミスティックな技術決定論に対する批判的な態度は、もはや一応の定見であるかのようにみえる。それらはむろんITアレルギーのような単純なものではなく、起きていることがら、起きつ…

『技術と時間3——映画の時間と難—存在の問い』(未邦訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 2001, <I>La technique et le temps 3. Le temps du cinema—et la question du mal-être</I>, Galilée</font>

→紀伊國屋書店で購入 「可能性の世界における「新しい批判」」 スティグレールによれば映画というメディアは、『技術と時間』シリーズの第二巻、『方向喪失』において分析された二つの要素から成り立っている。一つは正定立、すなわちある対象そのものへと到…

『技術と時間2——方向喪失』(未邦訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 1996, <I>La technique et le temps 2. La désorientation</I>, Galilée</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「スティグレールの記憶技術論——正定立、プログラム、時間的対象」 スティグレールは『技術と時間』シリーズの第一巻『エピメテウスの過ち』において、「人工補綴prothèse」としての技術の次元が人間の時間性や歴史性の根源的な条件を…

『アルジャジーラとメディアの壁』石田英敬・中山智香子・西谷修・港千尋(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 ●「映像の地政学 ――情報戦争、世界化、メディア」 極東の四人の研究者が、中東の砂漠の島を訪れる。グローバリゼーションが進行し、米欧の主導によって世界の一元化が進展しているなか、この島は、それとは異なったオルタナティヴな視角…

『表象の奈落――フィクションと思考の動体視力』蓮實重彦(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 ●「クリティークとフィクション――哲学の批評、文学の批評、批評の批評」 表象不可能性に触れずにいられない粗雑な思考――好奇心あふれた厚顔無恥――に決して屈しないこと。蓮實重彦は「批評」をその抵抗の身振りとして提示する。蓮實によ…

『記号の知/メディアの知――日常生活批判のためのレッスン』石田英敬(東京大学出版)

→紀伊國屋書店で購入 ●「セミオ・リテラシーへ向けて ――記号のテクノロジーと意味のエコロジー」 石田英敬は、「社会における記号の生活」を研究する学としての「一般記号学」の遺産を相続しながら――それは二〇世紀的な知の体系そのもののあり方を問う身振り…

蓮實重彦「思考と感性とをめぐる断片的な考察7:声と文字」~『InterCommunication(季刊インターコミュニケーション)』No.58、Autumn 2006

→『InterCommunication』No58・2006年autumn ●「無声映画と歴史 ――映画批評とメディア論」 本論「声と文字」は、蓮實重彦が、現在『InterCommunication』誌(NTT出版)に連載している「思考と感性とをめぐる断片的な考察」の第7回として書き上げたテクス…

『映画の世紀末』浅田彰(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 ●「映画との対話 ――映像の思惟学と記憶の政治学」 十九世紀と二一世紀のはざま――映画の世紀――を批判的に解読すること。本書において浅田彰が試みるのは、松浦寿輝、蓮實重彦、鵜飼哲、四方田犬彦とともに、映画をめぐる対話、ディスカッ…

『ゴダール革命』蓮實重彦(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 ●「映画的、ゴダール的 ――クリティークとクリエーション」 蓮實重彦がいうように、映画とは、いつ炸裂するともしれぬ「時限爆弾」である。映画には、撮られた時代や社会から遠く離れた地点で、時空を超えて不気味に作動し続ける時限装置…

『映画への不実なる誘い――国籍・演出・歴史』蓮實重彦(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 ●「映画の孤独な擁護 ――二〇世紀を批判的に肯定する試み」 蓮實重彦は問う。二〇世紀といかなる関係を維持すべきか、国際紛争と大量虐殺の世紀といかに接すべきか、と。二〇世紀が私たちのほとんどを作り上げ、私たちのほとんどが二〇世…

『テクネシスを具体化する―エクリチュールの彼岸の技術』(未邦訳)マーク・ハンセン<br><font size="2">Mark Hansen, 2000, <I>Embodying Technesis: Technology beyond Writing</I>, The Univesity of Michigan Press</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「技術の哲学」 いかにして技術=テクノロジーを考えていくことができるか? 本書は、この問いの底知れぬ深遠さを教えてくれる。この探求のためにハンセンが対象とするのが、具体的な技術の事例ではなく、20世紀の哲学者たちの技術をめ…

『「声」の資本主義―電話・ラジオ・蓄音機の社会史』吉見俊哉(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 ●「近代日本のざわめきの歴史」 本書『「声」の資本主義―電話・ラジオ・蓄音機の社会史』(1995)は、19世紀後半から20世紀初頭にかけての聴覚メディアの形成史をたどっている。著者・吉見俊哉は、社会や感覚の変容を技術変化の関数とし…

『いかにしてわれわれはポストヒューマンになったか』(未邦訳)キャサリン・ヘイルズ<br><font size="2">Hayles, Katherine N, 1999, <I>How We Became Posthuman: Virtual Bodies in Cybernetics, Literature, and Informatics</I>, Chicago: The University of Chicago Press.</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「情報学的人間像=ポストヒューマンへの警鐘:物質性の軽視」 本書は、「情報」というキーワードをもとに、K.ヘイルズが現代社会の人間像を考察した論考である。ヘイルズによると、現代社会においては、物質やエネルギーではなく情報…

『象徴の貧困――1.ハイパーインダストリアル時代』ベルナール・スティグレール[著]ガブリエル・メランベルジェ+メランベルジェ眞紀[訳](新評論)

→紀伊國屋書店で購入 ●「精神のテクノロジー、精神のポリティックス」 ≪本書で論じられる主題は、明らかに、時代の雰囲気のなかにある≫。その雰囲気の徴として、次の四つの点が挙げられよう。まず、ハイデガーが定義した近代――普遍数学と技術による自然支配…

『錯乱のニューヨーク』レム・コールハース[著]鈴木圭介[訳](ちくま学芸文庫)

→紀伊國屋書店で購入 ●「マンハッタンはどこまで完璧でありえるか」 「委員会が提案したマンハッタン・グリッド―――分割される土地は誰のものでもなく、そこに描き出される人々の群れは架空のものであり、そこに建てられる建物は幻影であり、その中で行われる…

『テレビのエコーグラフィー――デリダ〈哲学〉を語る』ジャック・デリダ+ベルナール・スティグレール(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 ●「技術論と憑在論 ――イメージ、アーカイヴ、テレテクノロジー」 ジャック・デリダとベルナール・スティグレールは、現代世界の諸問題(自由主義経済、文化資本主義、ナショナリズム、グローバリゼーションなど)を、映像メディアやテレ…

『偶然からの哲学』(未邦訳・未英訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 2004, <I> Philosopher par accident </I>, Galiée</font>

→紀伊國屋書店で購入 ●「<技術の問い>と<哲学の問い>」 ベルナール・スティグレールの哲学の投企は、主体と客体、人間と環境、存在と時間の関係を先立って定立する(前‐定立)、人工器官、補綴、代補、すなわち技術へと向けられる。スティグレールは、そ…

『変われる国・日本へ−−イノベート・ニッポン』坂村健(アスキー)

→紀伊國屋書店で購入 わが国の「イノベーション担当大臣」は誰か。即答できる人はどれくらいいるだろう(答えはこちら)。実は現在、内閣府を中心に二〇二五年までを視野に入れたイノベーション創造のための長期的戦略指針「イノベーション25」なるものが…

『再帰的近代化――近現代における政治、伝統、美的原理』ウルリッヒ ベック,アンソニー ギデンズ,スコット ラッシュ(而立書房)

→紀伊國屋書店で購入 ●「再帰性理論をめぐる対話」 「近代とはいかなる時代か」という問いは、社会学徒ならば避けては通れない問題である。『再帰的近代化』は、ウルリッヒ=ベック、アンソニー=ギデンズ、スコット=ラッシュの三者が、この問いにたいして…

『グラモフォン・フィルム・タイプライター』フリードリヒ・キットラー(筑摩書房)

→bookWebで購入(ちくま学芸文庫) →bookWebで購入(ちくま学芸文庫) ●「メディア論的啓蒙の書」 本書は、フリードリヒ・キットラーの第四番目の書籍であり、『書き込みのシステム 1800/1900』(未邦訳)と並ぶ主著の一つである。最近では情報工学への言及…