書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

長谷川一

『ゴヤ』堀田善衞(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「混乱と崩壊のなかで「見る」こと」 東日本大震災からひと月たった。この間ずっと堀田善衞『ゴヤ』を読んでいた。読みはじめたのは震災前の3月初め。寝酒ならぬ寝読みで…

『荷風と東京』川本三郎(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「街歩きと日常」 川本三郎の街歩きエッセイが好きだ。夜中に灯りをつけて読むのもいいが、旅先の各停車中で読むのもまたいい。じぶん自身の旅と、著者の語る街歩きとが重なりあって、愉しみが二乗される気分になる…

『けい子ちゃんのゆかた』庄野潤三(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「日常を描く、日常を考える」 2009年9月21日、庄野潤三は亡くなった。享年88。はかったかのようなタイミングで翌月刊行されたのが、『けい子ちゃんのゆかた』の文庫版(新潮文庫)である。 この作品は2004年に文芸誌に連載され、翌春に…

『高校生のためのメディア・リテラシー』林直哉(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「メディア使い」のススメ」 林直哉『高校生のためのメディア・リテラシー』(ちくまプリマー新書)は、コンパクトにまとまっていて読みやすく、そのうえ個性鮮やか。つまり、好著である。 著者は長野県内の高校の先生だ。いくつかの…

『メディア・リテラシー教育──学びと現代文化』デイヴィッド・バッキンガム、鈴木みどり監訳(世界思想社)

→紀伊國屋書店で購入 「「啓蒙」の引きうけ方」 メディアリテラシー。直訳すれば「メディアの読み書き能力」である。台湾では「媒体素養」というそうだ。こちらのほうが直感的にわかりやすいかもしれない。 このカタカナ言葉はここ数年、日本でもかなりひろ…

『自白の心理学』浜田寿美男(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「うその自白」と推定無罪」 周防正行が脚本を書き監督した映画『それでもボクはやってない』が公開中だ。ひとりの青年が巻き込まれた痴漢冤罪事件の顛末をとおして、日本の裁判制度のありようを問う作品である。その主張はなかなか明…

『国家の品格』藤原正彦(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「新書の「品格」について」 藤原正彦『国家の品格』(新潮新書)は、昨秋の刊行以来、各書店で売上ベスト1を記録しつづけている大ベストセラーである。「大好評100万部突破」と版元はイケイケだ。ぼくのまわりでも、何人ものひとたち…

『いわいさんちへようこそ!』岩井俊雄(紀伊國屋書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「子どもと遊ぶこと」へのレッスン」 ちいさな女の子が、窓辺でほおづえをついている。すぐ前にはぼうぼうと延びたミニトマト。結わえられた手製のウエルカム・ボードが風に揺れると、そこが「いわいさんち」だ。 「いわいさん」とは…

『なぜ人は書くのか』茂呂雄二(東京大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 新しいテクノロジーが登場し、そのテクノロジーが身体化される。その過程でぼくたちは、それまで知らなかったある感覚を経験していくようになる。 キーボード・タイピングはその典型例だ。ある程度習熟してそれなりの速度で打鍵できるよ…

『サンタクロースの大旅行』葛野浩昭(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「サンタは昔、ブタの橇に乗っていた!」 クリスマスという社会現象には以前から多大の関心がある。だから、この季節になると血が騒いで仕方がない。前世はトナカイだったのではないかとおもうほどだ。じじつ、昨年はさる研究会でトナカ…

『知的生産の技術』梅棹忠夫(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「技術」と「思想」」 ここしばらく日本語ワープロ、いわゆるワープロ専用機について調べていた。ワープロ専用機は世紀転換期を境に相次いでメーカーが生産を止めてしまい、いまではほぼパソコンに吸収された格好になっている。第一号…

『生き方の人類学──実践とは何か?』田辺繁治(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「ぼくたちは「知」を生きている」 全部で260ページほど。なんてことない、ごくごくありふれた背格好の新書本だ。だが、「実践」にかんする文献の森で迷子になりかけていたぼくにとっては、この本との出会いは、一葉の地図を手にいれた…

『複製技術時代の芸術』ヴァルター・ベンヤミン(晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 「メディアは「遊び」である」 迷ったとき、行き詰まったとき、見通しが利かなくなったとき。そんなとき、幾度も読んだ本をまた開いてみたくなる。ぼくにとって、それはしばしばベンヤミンの著作だ。先日も「複製技術時代の芸術作品」を…