書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『文学全集を立ちあげる』 丸谷才一、鹿島茂、三浦雅士 (文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 文学全集は長らく出版社のドル箱だった。最初の文学全集は大正15年(昭和元年)に改造社が出した『現代日本文学全集』だったが、36万部という大成功をおさめた。以後、文学全集は出版社を潤しつづけたが、高度経済成長時代が終わると急…

『猿飛佐助からハイデガーへ』 木田元 (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 木田元という名前はメルロ=ポンティの翻訳で知った。訳文は哲学書の翻訳とは思えないくらい読みやすく、含蓄があった。『眼と精神』は何度も読みかえしたが、内容もさることながら、訳文の魅力が大いにあずかっていたと思う。 フランス…

『スータンを縫いながら-日本占領期を生きたフィリピン女性の回想』ペラジア・V・ソリヴェン(段々社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 これまで「フィリピンはスペインの植民地になったことから、カトリックの強い影響を受けた」と…

『<狐>が選んだ入門書』 山村修 (ちくま新書)

→紀伊國屋書店で購入 丸谷才一はすぐれた入門書は「偉い学者の書いた薄い本」、読む価値がないのは「偉くない学者の書いた厚い本」だと書いた。これは至言であるが、「偉い学者の書いた薄い本」の例としてあげられているのは荻生徂徠の『経子史要覧』とコー…

『花のほかには松ばかり』 山村修 (檜書店)

→紀伊國屋書店で購入 匿名書評家<狐>こと山村修は大の能楽ファンで、晩年は謡を習っていたそうである。本書は「謡曲を読む愉しみ」とある通り謡曲論集で、表題の「花のほかには松ばかり」は『道成寺』の詞章からとっている。 本書は二部にわかれる。 第一…

『外国生まれの童謡の謎』合田道人(祥伝社)

→紀伊國屋書店で購入 音楽関係の本には一般の人にとってチンプンカンプンなものもたくさんあるが、この本は日本人なら誰でも「ほうほう、そうだったのか」と気楽に読める。 まず本の題名を見たとき、童謡に謎なんてあるのだろうか?と半信半疑でパラパラとペ…

『書評家<狐>の読書遺産』 山村修 (文春新書)

→紀伊國屋書店で購入 「匿名書評家<狐>」として知られる山村修の遺著である。 本好きの人の間ではよく知られたことだが、念のために説明しておくと、山村は大学図書館に司書として勤務するかたわら、1982年から2003年までの21年間、「日刊ゲンダイ」に毎週…

『ぼくの血となり肉となった五〇〇冊 そして血にも肉にもならなかった一〇〇冊』 立花隆 (文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 立花隆は週刊文春に五週間に一度「私の読書日記」を執筆し、五年おきに「読書日記」をまとめた本を出版している。最初が『ぼくはこんな本を読んできた』、次が『ぼくが読んだ面白い本・ダメな本』で、今回の本は三冊目にあたる。 いずれ…

『こちら禁煙外来』高橋裕子(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「38のちょっといい話」 「タバコをやめられないのは病気」というのが厚生労働省の見解となり、皮膚に貼って禁煙中のニコチン切れによる渇望症状を緩和するニコチンパッチのような禁煙補助薬の処方に保険が適用されるようになった。タバ…

『エコノミメーシス』ジャック・デリダ(未來社)

→紀伊國屋書店で購入 「デリダの曲芸」 これはデリダが「ミメーシス」をテーマにした著作に寄稿した論文の翻訳だ。ほかの共著者たちとしては、サラ・コフマン、ラクー=ラバルト、ナンシーなどがいる。すでにミメーシスをめぐる著書もあるラクー=ラバルトの…

『唐十郎の劇世界』扇田昭彦(右文書院)

→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](23) 劇評家の「資質」とは何か。 誤解をおそれずに言えば、それは苛烈な劇の現場に立ち会いたいという欲望の強さではないだろうか。今、もっとも刺激的で時代を凝縮した現場に出会いたい。そのためには、独自の嗅…

『ねじまき小学生』まついなつき(株式会社カンゼン)

→紀伊國屋書店で購入 2月も末になってきて この春小学校へ入学するお子さんがいる家はだいぶそわそわしてくるハズ。 我が家も次男くんが入学予定。 生まれて6年たつのだから次は小学校なのだが、今更ながら驚いたりしている。 えぇ、あなた、もう、ガッコ…

『自白の心理学』浜田寿美男(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「うその自白」と推定無罪」 周防正行が脚本を書き監督した映画『それでもボクはやってない』が公開中だ。ひとりの青年が巻き込まれた痴漢冤罪事件の顛末をとおして、日本の裁判制度のありようを問う作品である。その主張はなかなか明…

『マゼラン-世界分割を体現した航海者』合田昌史(京都大学学術出版会)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 16世紀にヨーロッパ世界の耳目を集めたマルク諸島(モルッカ諸島、香料諸島)の中心であるテル…

『ウィニコット用語辞典』ジャン・エイブラム(誠信書房)

→紀伊國屋書店で購入 「ウィニコット入門に最適」 「子供は一人ではいない」という有名な(ほとんど自明な)言葉から、幼児の二者関係を重視した精神分析を展開したウィニコットの重要な概念を、著書や論文から詳しく説明した「辞典」。辞典というよりも読む…

『ピアノの巨匠たちとともに(増補版)』フランツ・モア 中村菊子訳(音楽之友社)

→紀伊國屋書店で購入 「人間と信仰」 モアはドイツ人だ。祖国の敗戦をきっかけにアメリカに渡り、ニューヨークのスタインウェイ社に入社、その後多くのピアニストに信頼される調律師となった。スタインウェイ社のピアノを使って世界的に活躍するトップアーテ…

『孤高のピアニスト梶原完』久保田慶一(ショパン)

→紀伊國屋書店で購入 「日本初のヴィルトゥオーゾ」 現在では、世界で活躍する東洋人の音楽家は珍しくない。もはや世界は東洋人の活躍なしに存在しない。1950年代に渡欧し、ただちにヨーロッパ各地で本格的な演奏活動ができた日本人は珍しい。本書は、昭…

『塵劫記』勝見英一郎・校注(寛永11年・小型4巻本)<br>~江戸初期和算選書<第1巻>に収録~(研成社)

→寛永11年・小型4巻本 (「江戸初期和算選書」に収録) を購入 →寛永4年初版 を購入 江戸時代の数学書として有名なこの本を、最近手に取る機会があった。私の目的は、「もしもこの世に数式がなかったら、どれほど不便なことであろう」という議論を展開するた…