書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

石井政之

『友がみな我よりえらく見える日は』上原隆(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 「学歴を捨て、故郷を捨て、月給生活を捨て、有名であることを捨て、妻子を捨てて・・・」 名作である。何度読んでもじんとくる。少なくとも私にとってはそういう本だ。 早朝、そういえばこの書籍の著者の上原隆さんはどうしているのだ…

『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』磯崎哲也(日本実業出版社)

→紀伊國屋書店で購入 「気合いのはいった失業者に一番必要な書籍」 本書を読んで、起業するときに必要な知識・常識がやっと分かった!! 著者の磯崎哲也氏は、公認会計士であり、日本のベンチャー起業家を財政面で支えてきたプロ。ビジネスやファンナンスを…

『手招くフリーク 文化と表現の障害学』倉本智明 編集(生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「アルビノの「美」は本当に発見できたのか。」 障害者を巡る言説について障害学の立場からアプローチした論文・批評集である。ここでいう障害学とは、障害者をめぐる社会現象を、障害者という当事者の立場から研究しようという学問的な…

『仕事がない! 求職中36人の叫び』増田明利(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 「失業したときこそ、失業ノンフィクションを読もう!」 先日、失業した。45歳の中年。妻1人、子ども2人(2歳児とゼロ歳児)。こういうときこそ、失業ノンフィクションを読むときだ。 本書のタイトルは「仕事がない!」。ストレー…

『3.11 絆のメッセージ』被災地復興支援プロジェクト(東京書籍)

→紀伊國屋書店で購入 「被災地から遠い「私」と「あなた」が、被災地とつながるために」 東日本大震災から3ヶ月。震災と原発の書籍が書店の店頭に並んでいる。震災と原発というテーマは、311前には「売れない」とされて、出版店数が少なかった。天災は忘…

『大地動乱の時代』石橋克彦(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「次は、東海と関東の大震災に備えるしかない」 福島原発の放射能漏れが続いている中、冷静に事態を捉えるために、いま読むに値する一冊である。震災と原発事故が重なると、未曾有の災害になる。地震大国日本で原発は危険である、と警鐘…

『勤めないという生き方』森健(メディアファクトリー)

→紀伊國屋書店で購入 「「どうしてもしたいこと」と「とりあえず生活を支えること」の間」 地方都市における町おこしについて調べているうちに本書を知った。私が興味をもったのは、島根県の離島、隠岐島の海士町でベンチャー起業を創業した、(株)巡の環の代…

『考えすぎない生き方』 深澤真紀(中経出版)

→紀伊國屋書店で購入 「震災後の不安だらけ世界で、歯車として淡々と生きる」 3月11日の震災から、いつものようにものを考えることができない、書くことができなくなってしまった。3月から新しい土地(豊橋市)、新しい現場(転職しました)になったため、公…

『必生 闘う仏教』佐々井秀嶺(集英社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「インドから帰国した荒法師がみた日本」 佐々井秀嶺は、日本の総人口よりも多い約1億5千万人のインド仏教徒から上人様と呼ばれる、インド仏教運動のリーダー。故ラジブ・ガンディー首相からインド名、アーリア・ナーガールジュナを贈ら…

『街場のメディア論』内田樹(光文社)

→紀伊國屋書店で購入 「まだ見ぬ読者に届けたい言葉はあるのか?と問う」 「教育=贈与論」が内田氏の思考の軸である。これを、「メディア=社会教育=贈与論」という枠組みで語ったのが本書である。 内田氏が勤務先の神戸女学院で語った講義記録のテープ起…

『社会貢献でメシを食う』竹井善昭(ダイヤモンド社)

→紀伊國屋書店で購入 「社会貢献でメシを食うための具体的な方法がわかる」 このブログの更新頻度が下がっているのは二児の父親となり、生活時間と、仕事時間のコントロールがまだうまくいっていないため。二児の育児をしているのは妻。それを手助けしている…

『ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院』水月昭道(光文社)

→紀伊國屋書店で購入 「知識人たちを絶望させる日本社会」 大学教員という希望する職につけない。その絶望的な状況のなかで、いま博士号を取得した知識人たちが何を考えているのかを活写している。 「高学歴ワーキングプア」という言葉をつくった著者は、自…

『デフレの正体 経済は「人口の波」で動く』藻谷浩介(角川書店)

→紀伊國屋書店で購入 「急激な人口減少が、経済を動かしていく」 少子化と高齢化が進行する日本。この二つの現象をひとくくりにして「少子高齢化」と言われる。決まり文句になっているが、これはまったく別の現象を、ひとまとめにしている。意味が曖昧になっ…

『奪われた性欲』今一生(毎日コミュニケーションズ)

→紀伊國屋書店で購入 「性欲減退男子よ、どこへ行く?」 近年、マッチョな文体で社会起業を語ることに専念しているフリーライター、今一生の最新作である。 今一生のマッチョ信仰は強固でシンプル。尊敬する人は漫画家の本宮ひろし。サラリーマン金太郎のよ…

『怒らないこと』アルボムッレ・スマテサーラ(サンガ)

→紀伊國屋書店で購入 「怒らないという生きるスキル」 ブロガーの小飼弾さんの著書『働かざるもの、飢えるべからず』小飼弾(サンガ)のなかで、弾さんと対談していた仏教者、アルボムッレ・スマテサーラの語りである。 弾さんのベーシックインカム論を補強す…

『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』藤原新也(東京書籍)

→紀伊國屋書店で購入 「都会に追い詰められない、静かな語り」 浜松から東京に行く用事があった。私は、新幹線なのかなでiPhoneをいじり、ツイッターでつぶやきを仮想空間に発信していた。静岡県内の風景は美しい青空だった。小田原駅から空がガスに覆われて…

『バブル女は「死ねばいい」 婚活、アラフォー(笑)』杉浦由美子(光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「出産と仕事にゆれるアラフォー女と団塊ジュニア女の生きる道」 団塊ジュニア世代の著者が、1960年代に産まれたバブル世代の女性を批評している。30代の女性から見た、10歳ほどの上の世代の女性を評論している。 まずバブル女…

『物乞う仏陀』石井光太(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「恐るべき才能をもったノンフィクション作家の誕生」 石井光太。いまもっとも勢いのあるノンフィクション作家だろう。 本書は、石井光太のデビュー作である。 アジアの身体障害者、乞食を取材。取材したエリアは、カンボジア、ラオス、…

『世界一の障害者ライフサポーター』木村志義(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「障害者に無縁の人間が起業した、障害者就職支援会社」 ユニバーサルデザインについて調べていると障害者雇用の問題につきあたる。 「日本初の障害者専門の就職支援会社」の創業社長、木村志義氏による、起業ノンフィクションだ。木村…

『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学 集中講義』ティナ・シーリング(阪急コミュニケーションズ)

→紀伊國屋書店で購入 「中年になっても価値ある起業のススメ本」 プロモーションが成功してかなり売れているようだ。ネットでも書評がずいぶんでている。それでも僕はこの本について紹介したい。 ひとりの人間が会社を起こして軌道に乗せるとはどういうこと…

『人を助けて仕事を創る』山本繁(ティー・オーエンタテインメント)

→紀伊國屋書店で購入 「使える社会起業の指南書」 NPO法人NEWVERY代表、山本繁さんの著作第二弾。いまもっとも注目すべき社会起業家の一人である。その彼が多忙な業務の合間をぬって書き上げた。 若い起業家は、経験主義になりがちであり、自分の体験イコー…

『自由をつくる 自在に生きる』森博嗣(集英社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「自由とは人間だけが生み出す人工的なイメージである」 天才、森博嗣による「自由論」である。 森は自由に生きてきた人である。いまも自由だろう。だから、凡人である私たちはその生き方を特別視してその自由な姿勢を、天然のものであ…

『リハビリの夜』熊谷晋一郎(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「意識と身体のままならなさが、敗北の官能を呼び込む」 脳性麻痺とは何か。さまざまな本が書かれてきた。当事者、家族、専門家・・・。マイノリティのなかのマイノリティといえる脳性マヒ者たちは語られつくされている。そう思っていた…

『小説家という職業』森博嗣(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 「小説家になりたいなら小説を読むな!!」 小説家という職業 天才作家、森博嗣の執筆のノウハウがすべて公開されている。おもしろい。読むべし。(と書いたものの、僕は森博嗣の小説作品をまともに読んだことはないのだ。エッセイのほ…

『障害者の経済学』中島隆信(東洋経済新報社)

→紀伊國屋書店で購入 「「障害者ビジネス」に参入するときの必読書」 タイトルの通り、障害者を取り巻く経済についてまとめられている。ストレートな内容である。しかし、このような直球の書籍はこれまでなかった。 障害者について論じられた書籍というと4つ…

『生命保険のカラクリ』岩瀬大輔(文芸春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「自動車と家は買わないが、保障は買いたい、という若者に読んでほしい」 生命保険に加入しているすべての人にとっての必読書である。 著者は、日本初のインターネット生命保険「ライフネット生命」の副社長。わずか創業2年でぐいぐい業…

『葬式は、要らない』島田裕巳(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 「高額な葬式代を出したくない人のための実用書」 生命保険に加入した。妻子がいる身としては、当然のこととして受け入れた。生命保険のビジネスモデルとはどういうものなのかと真剣に考え始めたのは加入してからだ。 保険の営業マンは…

『事件現場清掃人が行く』高江洲敦(飛鳥新社)

→紀伊國屋書店で購入 「孤独死と自殺の現場処理をするという仕事がある。」 ご縁があって、孤独死現場となった部屋の特殊清掃をすることを生業とする社長と立て続けに出会った。1人は女性。1人は男性の社長である。 おもしろそうな仕事だと思い、現場を見…

『働かざるもの、飢えるべからず』小飼弾(サンガ)

→紀伊國屋書店で購入 「ベーシックインカムという、貧困をなくす処方箋についての優れた入門書」 小飼弾さんは天才か?愚者か? 本書を読みながら、僕は首をかしげていた。どちらにしても小飼氏への賞賛になるわけだが。 本書はベーシックインカムについての…

『「私」を生きるための言葉』泉谷閑示(研究社)

→紀伊國屋書店で購入 「ゼロ人称集団という世間からの解放の書」 ユニークフェイス当事者と話をしていると避けがたい苦悩として、他者からどう思われているのか、という「とらわれ」がある。気にすることはない、といくら言っても効果はない。その人は、他者…