書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2005-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『五感”再生へ—感覚は警告する 』(岩波書店)

ここ数十年の間、世の中は明けても暮れても情報!情報!です。これが何を意味しているのか、私たちはもっとよく考える必要があるのではないか……。この本を読み始めてまず思いついたのはこのことでした。 現代ではきわめて多くの、かつリッチな情報接触を通じ…

『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上)(下)』(岩波現代文庫)

→『ご冗談でしょう、ファインマンさん』〈上〉を購入 →『ご冗談でしょう、ファインマンさん』〈下〉を購入 大学院生の頃、この本をくり返し読んだ。10回は読んだのではないか。私が当時読んだのは英語の原書だったけど、この大貫さんの訳はとても良く出来…

『BC級戦犯裁判』林博史著(岩波新書)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 日本の本格的な戦後は、戦犯裁判の結果を国際的に受け入れてからスタートしたと言っても過言で…

逆風野郎!—ダイソン成功物語(日経BP社;日経BP出版センター)

フィルタが全く要らない「サイクロン掃除機」を発明したダイソン氏の自伝である。 サイクロン掃除機の発明にいたるまでの数々の経験や、発明したサイクロン掃除機を実用化/商品化するまでの様々なできごとや苦労話が楽しげに書かれている。何かを作って世に…

『「死の棘」日記』(新潮社刊)

[劇評家の作業日誌](6) このところ島尾敏雄の『死の棘』に取り憑かれている。正確にいえば、わたしの思考にこの「棘」が突き刺さってきて、その周辺にいろいろなものが掻き集められてきてしまうのである。 『「死の棘」日記』が刊行されたのは今年の三月…

『訪ねてみよう 戦争を学ぶミュージアム/メモリアル 』(岩波ジュニア新書)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 序文で、高橋哲哉は1945年1月1日の日記を引用し、「日本国民は、今、初めて「戦争」を経験して…

『血の婚礼』(東北新社)

→紀伊國屋書店で購入 「ストイックな魂のうねり スポーツシートにGを感じるような 書評が始まらない(後編)」 ステップが始まる。天才ダンサー、ビセンテ・エスクデロが乗り移る。 指が鷹のように先が細くて鋭くなり、完璧を目指さなければいかん、と。私は…

『アフリカ「発見」−日本におけるアフリカ像の変遷』(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 本書は、世界歴史選書の1冊として出版された。しかし、このような優れた歴史書は、従来の日本…

『本当は聞こえていたベートーヴェンの耳』(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 地方のうらぶれたレッスンスタジオの本棚に並んでいたのを拾い読みしていたところ、やめられなくなってしまった。こっそり鞄に入れて持ち帰ってしまおうかとも考えたが、かろうじて踏みとどまった。自宅に帰ってネットで検索してみたが…

『イスラームの国家と王権』(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 現在アメリカ合衆国の主導の下に、アフガニスタンやイラクで「民主的」な国家づくりがおこなわ…

『アントニオ・ガデス』(新書館)

→紀伊國屋書店で購入 「ストイックな魂のうねり スポーツシートにGを感じるような 書評が始まらない(前編)」 ピレネを超えたらそこはアフリカ、とはナポレオンの言葉だったか。 確かに突然、車窓に広がる山肌の色が変る。 ピレネとは、フランスとスペインの…