書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

キノベス!2009

第1位『ヘヴン』川上未映子

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/1,470円) 読んだ後しばらくたっても、登場人物たちの言葉が胸にうずまいている。人の数だけ「世界」はあって、しかし生きてゆく「世界」はただひとつだということ。それが圧倒的に悲しい。初の長編作にして、生きる悲しみと…

第2位『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/1,779円) とても静謐な世界。伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡の物語。彼を縦糸とするならば、彼を囲む人々が横糸となり、静かで美しい物語を織り上げてゆきます。どうぞゆっくり、物語の世界…

第3位『星守る犬』村上たかし

→紀伊國屋書店で購入 (双葉社/800円) 10分ちょっとで読み終え、数時間の余韻が残り、幾日も思い出され、何度も読み返してしまう。犬と人との淡々と流れる物語。「幸せ」とは言いきれないラストながら、その幸せの枠組みを考えさせてくれる。単純に「泣…

第4位『八朔の雪』髙田郁

→紀伊國屋書店で購入 (角川春樹事務所/579円) ぴりから鰹田麩にとろとろ茶碗蒸し。読んでる先から生唾がぁ・・。時代小説に求める三要素のひとつ、読み手の想像が膨らんでいく「料理」を軸に主人公澪を取り巻くあったかい人々と、悪辣な妨害にも立ち向か…

第4位『プリンセス・トヨトミ』万城目学

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/1,649円) 無限の想像を掻き立てる緻密でありえへん話。大阪人の団結力なめるなよ! 文句あるんやったら大阪全部止めるからな! とばかりに守られる秘密。でも、「ホンマは言いたいねん!大阪城の下には実はなぁ・・・」「いや…

第6位『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/1,785円) 歴史は科学だと思いますか?の問いが新鮮です。日本人はなぜ戦争を選択したのか?栄光学園の中高生たちとロジカルに追究していきます。彼らの勉強ぶりと、どんな発言でも受け止めて応える加藤先生の「匠の技」…

第7位『宵山万華鏡』森見登美彦

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/1,365円) 夏の妖しさと華やかさに目がくらむ。ひとりの男を騙すため、今壮大な「偽祇園祭」がはじまる。やがて、つくりものが現実に溶け出し、夏の不思議も混ざり合い、新たな物語がはじまる。“超金魚?”“宵山様?”そして繰…

第8位『神去なあなあ日常』三浦しをん

→紀伊國屋書店で購入 (徳間書店/1,575円) 「あぁ、神去村で林業に従事したら、こんな楽しい生活が送れたのかなぁ。俺も行きてぇ~」なんて妄想してしまう傑作。タイトルからまったりした内容なのかなと思いきや、笑いありトキメキありダイナミックなアク…

第9位『単純な脳、複雑な「私」』池谷裕二

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/1,785円) 二枚の異性の写真を交互に見せられた時、人は少しでも長く見せられた方を「好みのタイプ」に選ぶ確率が高い。これは脳が長く接したものほど「好き」と感じるから。そこに私達が「カッコいい」等の様々な理由を…

第10位『元素生活』寄藤文平

→紀伊國屋書店で購入 (化学同人/1,365円) 高校時代に読んでいたら、あれほど化学を毛嫌いせずに済んだだろうという1冊。111種もある元素全ての特徴を擬人化して紹介するというアホらしくも勉強になる教養書。駅などでもよく見かける寄藤さんのイラス…

第11位『神様のカルテ』夏川草介

→紀伊國屋書店で購入 (小学館/1,260円) ある病院の1人の医師を通して忙しく生活していると忘れがちな、でもきっと「ずっと忘れてはいけないもの」が見えてくる。読んだ後、胸が熱くなりました!! 本当に、自信を持ってオススメする一冊です。何年ぶりだ…

第12位『ねたあとに』長嶋有

→紀伊國屋書店で購入 (朝日新聞出版/1,785円) みんなもおいでよ! コモローの待つ山荘に。虫に驚き、お風呂にまごつき、コモロー家族が作ったなんだかなってゲームを、ゆるゆるとガチンコ勝負!! 絶対行きたい! でもあんまり人が来ちゃうのも困るから教…

第13位『半島へ、ふたたび』蓮池薫

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/1,470円) 旅の一番いい点は、以前よりこの世を肯定的に見られるようにしてくれること、と著者は言う。奪われた24年の拉致の中にも、少しでも肯定はあったのだろうか? 蓮池さんのソウル紀行「半島へ、ふたたび」を読んで、…

第14位『学問』山田詠美

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/1,575円) 海辺の町で成長していく四人の少年少女たち。方言のかわいらしさや大好きな故郷への思い、かけがえのない幼なじみへの気持ち・・・ その日々はきらきらと輝きに彩られているけれど、やがていつかは訪れる死の影も静か…

第15位『獣の奏者 〈3〉探求編・〈4〉完結編』上橋菜穂子

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 (講談社/各1,680円) 〈1〉〈2〉で終わったはずの物語、確かにここまでだと児童書としても充分でした。でもこの〈3〉〈4〉で完結したことで完全に大人のものにもなりました。何て深く何という衝撃を与えてく…

第16位『日本人の知らない日本語』蛇蔵 海野凪子

→紀伊國屋書店で購入 (メディアファクトリー/924円) 日本語学校の先生と生徒のやりとりを見ながら「日本語って何だろう?」を知ることができます。日本人なのに初めて知ることや外国人の日本語の使い方が載っていて、学びながらも笑って読んでしまう一冊…

第17位『ダブル・ジョーカー』柳広司

→紀伊國屋書店で購入 (角川書店/1,575円) たぶん私は結城中佐に魅了されている。陸軍内に設立されたスパイ養成学校“D機関”。主たる結城中佐は(私の勝手な想像では)渋い美中年で恐ろしいほど頭はキレる。魔王・スパイマスターの側面しか知ることは出来…

第18位『きのうの神さま』西川美和

→紀伊國屋書店で購入 (ポプラ社/1,470円) 「ゆれる」の西川美和監督が僻村の医療の現実を見つめた、新たな傑作「ディア・ドクター」・・・ 本書は、映画という時間軸では語りきれなかった取材の成果や思いをすくいあげてみたという短編小説集。この人ならで…

第19位『世紀の発見』磯崎憲一郎

→紀伊國屋書店で購入 (河出書房新社/1,470円) 先日「終の住処」が芥川賞を受賞した磯崎憲一郎ですが、僕にとっては「終の住処」よりもこっちです。冒頭の、主人公の少年の前に、大きな機関車が音も無くやって来るシーンだけでも読んでみてください。日常…

第20位『読んでいない本について堂々と語る方法』ピエール・バイヤール

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/1,995円) 読まないことこそ真の知性!? 「読んでいない本が沢山あるのに、また買ってしまった・・・!」と日々“つんどく”に精を出す読書家諸子(毎度ありがとうございます)を救済する、禁断の書! 本書を読んで読むのをやめ…

第21位『植物図鑑』有川浩

→紀伊國屋書店で購入 (角川書店/1,575円) “料理万能”― それも楽しくて美味しい“道草”料理を作ってくれる“躾のできたよい子”でイケメンな彼が落ちていたら絶対に拾っちゃうでしょう! 読み終わった後は、“本物”の植物図鑑を片手に美味しそうな“道草”を求め…

第22位『1Q84 〈book1〉・〈book2〉』村上春樹

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 (新潮社/各1,890円) 「説明しなくてはわからないということは、説明してもわからないということ。」 先入観なしでまず読んでみてください。 〔梅田本店第五課・福田直也〕 →紀伊國屋書店で購入

第23位『つみきのいえ』加藤久仁生【絵】 平田研也【文】

→紀伊國屋書店で購入 (白泉社/1,470円) 海の高さが高くなるごとにつみきのように重ねた家にすむおじいさん。おばあさんとの思い出を取りもどすため、沈んだ部分にもぐります。あたたかい色調に愛がつまったストーリーです。フランス・アヌシー国際アニメ…

第24位『夜想曲集』カズオ・イシグロ

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/1,680円) ひとりきりの静かな夜、お気に入りのソファに座り、薄暗い灯の下、ゆったりとしたジャズをBGMに読むなら、この本しかないでしょう!! 登場人物に感情移入し、現実逃避できること請け合いです。 〔浦和パルコ…

第25位『動的平衡』福岡伸一

→紀伊國屋書店で購入 (木楽舎/1,600円) 「生命」とは何だろうか、「生きる」というのは一体どのようなことなのだろうか。人間に限らず、地球上の全生物は何万という細胞から成り立っており、細胞は決して単独で存在することはできない。何故か。細胞は相…

第26位『図書館 愛書家の楽園』アルベルト・マングェル

→紀伊國屋書店で購入 (白水社/3,570円) ホルヘ・ルイス・ボルヘスの友人でもあるマングェルが描いた、図書館にまつわるあらゆる事柄を収めた本。失われた伝説のアレクサンドリア図書館やボルヘスが勤めた図書館、ラブレーの掲げた実在しない書物やジュー…

第26位『日本語が亡びるとき』水村美苗

→紀伊國屋書店で購入 (筑摩書房/1,890円) インターネットの圧倒的な英語の世紀のなかで日本語が存続することは可能か。<普遍語>と<国語>の位相に思いをめぐらした著者の挑発的な提言はネットで賛否両論の反響をよんだ。それにしても青い空のアイオワ…

第28位『ハーモニー』伊藤計劃

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/1,680円) 心と身体を変容させていく未来の人々を描いたこのSF小説を刊行して間もなく、作者の伊藤計劃は若くして病に倒れた。彼はもうこの世にない。しかし、遺されたこの小説は、彼が追い求めた問いの答えを、永久に探…

第29位『恋文の技術』森見登美彦

→紀伊國屋書店で購入 (ポプラ社/1,575円) この本を読めば、いかなる美女をも手紙一本で籠絡できる技術が身につけられる! …という保証はまったくできません。ある一人の男子大学院生が始めたのは、名づけて「文通武者修行」。“成就した恋ほど語るに値しな…

第30位 『差別と日本人』』野中広務 辛淑玉

→紀伊國屋書店で購入 (角川書店/税込760円) 一方は直球で相手を見据え、他方は善も悪も腹の中に押し込めてジロリと相手を見やる。そのようなイメージの二人が「在日とは」「部落とは」又、「なぜ差別は生まれるのか・・・そして今も続くのか」を語る。対談ご…