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プロの読み手による書評ブログ

平沢剛

『不純なる教養』白石嘉治(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 『不純なる教養』は、フランス文学者の白石嘉治によって書かれた大学と思想をめぐるテクストをまとめた書物である。大学あるいは大学という運動、そしてその無償化を中心に、フランスの大学ストライキ、札幌・トリノの大学サミット、洞…

『原子力都市』矢部史郎(以文社)

→紀伊國屋書店で購入 『原子力都市』は、運動=理論家である矢部史郎が、日本中の都市をめぐる過程で生み出された特異な人文地理学的都市論をまとめた書である。分析の対象となっているのは、柏崎、(旧)上九一色村、呉、京都、むつ、川口、硫黄島、広島、…

『ジャ・ジャンクー 「映画」「時代」「中国」を語る』ジャ・ジャンクー著、丸川哲史、佐藤賢訳 (以文社)

→紀伊國屋書店で購入 『ジャ・ジャンクー 「映画」「時代」「中国」を語る』は、2009年に中国で刊行された同タイトルの全訳である。1996年に『小山の帰郷』でデビューしたジャ・ジャンクーは、『一瞬の夢』(98)で世界、そして日本でも広く知られていること…

『1968年グラフィティ』毎日新聞社編(毎日新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 『1968年グラフィティ』は、「毎日ムックーシリーズ20世紀の記憶」の『1968ーグラフィティ・バリケードの中の青春』の新装版である。1998年に刊行が始まった同シリーズは、写真、テクスト、チラシ、ポスターなどの同時代の資料から、現…

『コロノス芸術叢書 アートポリティクス』コロノス芸術叢書編集委員会(論創社)

→紀伊國屋書店で購入 「われわれの世界はいまもまた危機的な状態にある。そうしたなかで芸術家も批評家も研究者もその大多数は現実を見つめることから撤退し、現実を解明しようとする活動を忌避している。彼ら・彼女たちが現実になんら応答することのない作…

『JOHNNY TOO BAD 内田裕也』モブノリオ、内田裕也(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 『JOHNNY TOO BAD 内田裕也』は、モブノリオの書き下ろし小説「ゲットー・ミュージック」と内田が1986年に「平凡パンチ」で行った連載対談「内田裕也のロックン・トーク」を一冊に収めた特異な書物である。装丁は二冊が一枚の表紙でとめ…

『シナリオ別冊 作家を育てた日活ロマンポルノーシナリオ選集』(シナリオ作家協会)

『シナリオ別冊』の「作家を育てた日活ロマンポルノーシナリオ選集」は、日活ロマンポルノの優れたシナリオ10本が、脚本家、関係者の対談、解説などによって紹介されている。神代辰巳『一条さゆり 濡れた欲情』(71、監督・神代辰巳)、中野顕彰『牝猫たちの…

『「芸術」の予言!! 60年代ラディカル・カルチュアの軌跡』(フィルムアート社)

→紀伊國屋書店で購入 『「芸術」の予言!! 60年代ラディカル・カルチュアの軌跡』は、1968年10月から1972年12月に刊行された全13号の『季刊フィルム』と1973年7月から1974年6月に隔月刊となった全9号の『芸術倶楽部』に掲載されたテクストの選集の第一弾で…

『プレカリアートの詩---記号資本主義の精神病理学』フランコ・ベラルディ(ビフォ)、櫻田和也訳(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 ここ数年、ポスト・ネグリともいうべきイタリアの思想家たちの紹介が開始されている。パオロ・ヴィルノ、マウリツィオ・ラッツァラート、そして今回紹介するビフォは、ともにアウトノミア運動でネグリと戦列をともにし、いまもそれぞれ…

『フードジョッキー その理論と実践』行友太郎・東琢磨(ひろしま女性学研究所)

→紀伊國屋書店で購入 「フードジョッキーとは、食物を騎手が馬を乗りこなすように使用する人のこと。一般的に、フードジョッキーは食物の選択を行い、料理方法を決定し、料理を実行することで、表現活動や空間演出を行う。Food JockeyがDisc Jockeyと対比し…

消え行く少女 前編・後編 白土三平(小学館クリエイティブ)

→紀伊國屋書店で購入(前編) →紀伊國屋書店で購入(後編) 白土三平が、1959年に発表した『消え行く少女』の貸本単行本完全復刻版である。1999年に『白土三平初期異色作選』(青林工芸舎)に収録され、それが最初の復刻であったが、限定品ということもあり…

テレビの青春 今野勉(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 演出家、脚本家の今野勉が、1959年のラジオ東京(現TBS)入社から1970年にテレビマンユニオンを設立するまでに到った詳細が綴られている。TBS発行の『新・情報調査』に1999年から2007年まで、9年に渡って連載されたテクストがまとめられ…

『チョムスキーの「アナキズム論」』ノーム・チョムスキー、木下ちがや訳(明石書店)

→紀伊國屋書店で購入 北米の言語学者ノーム・チョムスキーが、言語学ではなく、広く政治、社会を論じ始めた1969年から2004年までの論考やインタビューから、アナキズムに言及したものを集め、時系列に編纂した発言集である。日本においても、ここ二、三年で…

『資本主義後の世界のために』デヴィッド・グレーバー、高祖岩三郎(以文社)

→紀伊國屋書店で購入 昨年の金融危機と呼ばれる未曾有の事態を受け、誰もが饒舌にそれを語り、「活発」な議論がなされている。数年前まで礼賛されていたはずの新自由主義経済への批判は所与のものとなり、経済、政治をはじめとする様々な学者、ジャーナリス…

新しいアナキズムの系譜学 高祖岩三郎(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 NYの活動家/批評家が、現在、世界で展開されているグローバル・ジャスティス・ムーブメントと呼ばれるラディカルな反資本主義、反権威主義運動を「新しいアナキズム」と名辞し、実践的、理論的にそれらをまとめあげた渾身の一冊である。…

『G8サミット体制とはなにか』栗原 康(以文社 )

→紀伊國屋書店で購入 今年、7月7日から9日まで、北海道洞爺湖でG8サミット(主要国首脳会議)が開催された。1999年、シアトルのWTO会合が大規模な抗議行動によって中止に追い込まれて以降、2001年、イタリア・ジェノバ、2003年、フランス・エヴィアン、2005…

『「悪なき大地」への途上にて』ベアトリス・パラシオス(現代企画室〔発売〕)

→紀伊國屋書店で購入 ボリビア・ウカマウ集団の映画プロデューサー、ベアトリス・パラシオスが、1979年から2003年までに書き綴った18の文章をまとめた遺稿集である。ベアトリスは、2003年7月、病気治療でキューバに向かう飛行機で亡くなった。自身初の監督作…