書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

キノベス!2006

第1位 『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/税込1,890円) 読み終えて、書店員としてこの本をどう伝えればいいのだろう、と思った。端正で、後書きにもあるとおり抑制の利いた文章。しかし語られる物語は、なんとも苛烈で、想いに満ちている。主人公の職業「介護人」…

第2位 『鴨川ホルモー』 万城目学

→紀伊國屋書店で購入 (産業編集センター/税込1,260円) ところは京都、京大生が2人。アルバイトの帰り道、ビラを受け取ったのが運の尽き。「一緒にENJOYしませんか?京大青竜会」 御気楽お遊びサークルと思いきや、祇園祭の夜、真の目的が明かされる……。…

第3位 『東京バンドワゴン』 小路幸也

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込1,890円) 堀田家家訓。曰く些事な事件をあなどるなかれ。曰く、文殊の知恵より家族の知恵。ワケあり古本屋一家の舞い込む事件は、ちょっと複雑。けれど、いろんな形のラブに満ちています。この家族がいるかぎり、世はな…

第4位 『図書館戦争』 有川浩

→紀伊國屋書店で購入 (メディアワークス/税込1,680円) 大好きな本を読むためならば、たとえ火の中水の中。体張って戦いますとも! 読書家のあなたなら、全編にあふれるこのアッツイ魂に共感できるハズ。図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)の体力…

第5位 『ミーナの行進』 小川洋子

→紀伊國屋書店で購入 (中央公論新社/税込1,680円) 子供から少女へ変わる頃の煌くような想い出の世界。芦屋のお屋敷、一風変わった家族、マッチ箱、ミュンヘンオリンピック、淡い初恋。時に切なく、限りなく優しい日々。まるでおとぎ話のようなこの心地よ…

第6位 『スモール・プラネット』 本城直季

→紀伊國屋書店で購入 (リトル・モア/税込2,625円) リアルな世界をウソっぽく写し出す写真家、本城直季氏。はじめてこの写真集を見た人は彼のことを「なんて精巧なジオラマを作る人なんだ!!!」と感動しショックを受けるだろう。しかし、そのショックは…

第7位 『陰日向に咲く』 劇団ひとり

→紀伊國屋書店で購入 (幻冬舎/税込1,470円) 劇団ひとり作家デビュー作にして傑作(?)。正に「ひとり」で「劇団」を名乗るだけあって、ひき出しのたくさんある人だった。身近にいる様々な人たちの生活をリアリティたっぷりに、ややネガティヴに描く連作…

第8位 『一瞬の風になれ 第1部』 佐藤多佳子

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,470円) 誰よりも速く走りたい、身体の反射にも似たシンプルな欲求と、仲間の為にバトンを繋ぐ、その責任と連帯感。彼らは(作者は)個人競技である陸上の中から何故、ヨンケイ=400mリレーを選んだのだろう。とにかく…

第9位 『配達あかずきん』 大崎梢

→紀伊國屋書店で購入 (東京創元社/税込1,575円) “本屋さんの仕事ってどんなこと?”って一度でも思った人におすすめです。書店員が読むと、杏子さんは“書店員の鏡”です。この本の中のちょっとした謎は、私には半分くらいしかわからない・・・(泣) 日常業…

第10位 『終末のフール』 伊坂幸太郎

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込1,470円) 小惑星があと3年で地球に衝突しようとしている時。親子の溝を埋めようとしたり、昔の仲間と集まったり。周辺住人との付き合い、目標や葛藤が入り混じる中、終わりが見えている人生でも迷いや希望を抱きながらの…

第11位 『ガール』 奥田英朗

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,470円) 奥田英朗という人はいったい何者なんだろう!? もしかして読心術でも使えるんじゃないか! と思う程、働く女性の気持ちがわかってる! 30代OL、たくましく仕事してる様でも、色々傷ついたり悩んだりしてるん…

第12位 『ゆれる』 西川美和

→紀伊國屋書店で購入 (ポプラ社/税込1,260円) 「今年の日本映画の傑作」(川本三郎)と評価の高い「ゆれる」小説版。オリジナル脚本も手がけた監督は、'74年生まれとは思えない、鋭い生活感と人生観が光る言葉遣いで、一瞬一瞬に息を呑む質感豊かな映像を…

第13位 『憲法九条を世界遺産に』 太田光・中沢新一

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込693円) 太田光と中沢新一の対談と聞くと過激な内容!? と思いきや、これが他の憲法論にはなかなか見られない真っすぐで真摯な思いが綴られた一冊です。偏らない中立な立場で評論家のような口調ではない一般の声を伝える…

第14位 『クマムシ?!』 鈴木忠

→紀伊國屋書店で購入 (岩波書店/税込1,365円) 全長1mm以下で、熊のプ-さんみたいにかわいくて、そのくせ8本足。数十年間乾燥させても、電子レンジでチンしても死なないという、謎の生き物、それがクマムシ(でも本当に本当にいるんです)。ごくごく…

第14位 『社会学入門』 見田宗介

→紀伊國屋書店で購入 (岩波書店/税込819円) あなたの錆びついた好奇心を刺激する! この手の本なのに興奮しながら、あっという間に読み終えました。好奇心旺盛な若かりし頃、見るもの聞くもののあれこれが自分を魅了し、この世界は面白いなあと思っていた…

第16位 『チーム・バチスタの栄光』 海堂尊

→紀伊國屋書店で購入 (宝島社/税込1,680円) 医療過誤か殺人か、外来責任者田口と厚生労働省の役人が患者の死の謎を追う。著者は現役医師であるだけにその現場の描写は実にリアルで、またコミカルな展開もはずさない。『イン・ザ・プール』『空中ブランコ…

第17位 『永遠の0(ゼロ)』 百田尚樹

→紀伊國屋書店で購入 (太田出版/税込1,680円) この本が学校課題図書になれば、日本の未来は少しだけ変わるかもしれない…。かつて日本が戦った戦争。多くの若者がその命を散らした。彼らはどのような思いを秘めて戦地へと向かったのか。60年後の我々は彼ら…

第18位 『赤い指』 東野圭吾

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,575円) もしも自分の子供が殺人を犯してしたら・・・!? 息子の犯罪を隠蔽するため、罪を重ねていく父親と真相を追う名刑事。少年犯罪、老人介護、親子関係など、現代の問題点を考えさせられる「家族」の物語です。人…

第19位 『ぼくのメジャースプーン』 辻村深月

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,019円) せつない。この一言につきる。不思議な言葉の力をもつ少年の復讐劇。思い返すだけで、胸がつまりそうになる。読んでからずっと平積みしたままだ。一冊でも減ってると、とてもうれしい。このせつなさをもっとた…

第20位 『宇宙授業』 中川人司

→紀伊國屋書店で購入 (サンクチュアリ出版/税込1,470円) 100光年先にある星を望遠鏡で見ると、それは100年前のその星の姿を見ていることになる。なるほど、で終わってしまう光速の話も、今読んでいる本が目から30センチ離れているとすると、自分…

第20位 『まほろ駅前多田便利軒』 三浦しをん

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/税込1,680円) 多田と行天の不思議な関係。こんな便利屋さんがあったらおもしろい。とても不思議であたたかい。いろいろな人間模様があり、それに関わる多田便利軒が人々に幸福を運んでいるように思う。 (髙市 忍・松山店)…

第22位 『中原の虹 第1巻』 浅田次郎

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,680円) 『蒼穹の昂』から10年、あの作品を超える続編は有り得ない。と思って読み始めたのは浅田次郎が紡ぎだすその壮大な世界観に打ちひしがれる5分前だった。あの『蒼穹の昂』をもってしてもこの作品の大いなる序…

第23位 『きみの友だち』 重松清

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,680円) あなたのいちばん大切なものは何ですか? 「いなくなっても一生忘れない友だちが、一人、いればいい」恵美ちゃんのこの言葉がとても印象に残りました。嬉しいこと、つらいこと。流れる季節の真ん中であなたと出…

第23位 『凍』 沢木耕太郎

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,680円) 自分の手足の指を切断してまで・・・。最愛の妻を氷壁に宙吊りにしてまで・・・。孤高のクライマーの単なる征服欲なのか? それとも究極の夫婦愛なのか? 山野井夫妻にしかありえない登山の物語!!! 沢木流ノ…

第23位 『沖で待つ』 絲山秋子

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/税込1,000円) 絲山秋子の描く世界はいつもあたたかく少しさびしい。そして、綴る文章はいつもいろんな世界を軽やかに飛び越え行き来する変幻自在の魔法みたいだ。芥川賞受賞作の本作は、読み終えるのがもったいなくて何度…

第26位 『きいろいゾウ』 西加奈子

→紀伊國屋書店で購入 (小学館/税込1,575円) 運命の夫婦、ムコとツマこの響きだけで素敵! と思うのは私だけでしょうか? 平凡な小さな小さな幸せでいいのです。普通のことがふとしたきっかけでとても大切なことに見えてしまう。「どうして結婚したの?」…

第27位 『銃とチョコレート』 乙一

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込2,100円) とうとう乙一が・・・ミステリーランドに! 本好きにはたまらない装丁と豪華な執筆陣。乙一約3年ぶりの新刊。いやがおうにも期待がふくらみます。内容は明朗快活な冒険活劇! で終わるわけもなく、ラストはさ…

第28位 『臨死!!江古田ちゃん 第1巻』 瀧波ユカリ

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込550円) 作家も認める「電車で読むと恥ずかしい本」。幸福で可愛い女の子には読んで欲しくない。女をあきらめ、又は、女を武器にして生きてやる! と人生開き直った働く女性に是非オススメの一冊! 行きつけの犬が欲しい…

第29位 『カラスヤサトシ』 カラスヤサトシ

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込590円) 超自意識過剰で内向的で仮面ライダーのガシャポンをこよなく愛する漫画家の日常? そんなもん知るかい! と思いきや、共感できるエピソードに付箋を貼っていったら本の上が付箋びっしりで箒みたいになってしまい…

第30位 『難儀でござる』 岩井三四二

→紀伊國屋書店で購入 (光文社/税込1,680円) 収入、家族・・・大事なものは時代が変われど変わらない。主君のため、国のためと建て前は一丁前だが、本音は収入のため、家族のため奮闘する戦国時代のサラリーマン奮戦記。「戦国武将に学ぶ~」なんてうさん…