書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『双子座ピアニストは二重人格?』(音楽之友社)

→紀伊國屋書店で購入 いつもながら、青柳の文章を読むとスカッとする。状況に応じた単語の選択と表現のセンスが秀逸なのだ。言わんとすることの雰囲気がストレートに感じられる。文章のリズム感も絶妙だ。この本にはこうした爽快さが満載されている上に、多…

『チェーホフ』(岩波新書)

[劇評家の作業日誌](5) チェーホフの魅力とは何だろうか? 日本人の読者に幅広く親しまれ、現在でも多くの上演が行なわれているチェーホフとはいったい何者か。昨年が没後百年に当たり、チェーホフ関連の書籍が数多く出版されたが、なかでも暮れも押し迫…

『南洋日系栽培会社の時代』(日本経済評論社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 著者柴田善雅の膨大なデータを駆使した実証的研究には、ほんとうに頭が下がる。本書は、『占領…

『中村屋のボース−インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 本書の著者中島岳志は、「私の二〇代は、この本を書くためにあった」と「あとがき」の冒頭に書…

『Good Luck』(ポプラ社)

→紀伊國屋書店で購入 「だめだこりゃ ・・・なんてね(後編)」 自慢ではないが、この手のベストセラーをリアルタイムで読んだことがない。 ところが「Good Luck」に至ると、発行からちょうど1年、先月には同著者の「Letters to Me」が発売され、この「Good…

『海域イスラーム社会の歴史−ミンダナオ・エスノヒストリー』(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 5月27日の朝刊第一面に、「ミンダナオ島に日本兵」の記事が掲載されて以来、しばらくマスコミ…

『完全禁煙マニュアル』(PHP研究所)

→紀伊國屋書店で購入 見てわかるとおり、これは音楽の本ではない。タバコをやめたい、と思っている人へのガイドブックだ。タバコはもはや“個人の嗜好”として片づけられる問題ではない世の中である。 このマニュアルはインターネットを通じてサポートする「禁…

『だめだこりゃ』(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「だめだこりゃ ・・・なんてね(前編) NG集で一番笑わせてくれた 堤真一」 実はマズイことになってしまいました。 ある本の書評のつもりで書き始めていたんですけど(それも見え見えですけど)ところがいつも内容のウラを取る私として…

『三島由紀夫が死んだ日』中条省平(実業之日本社)

→三島由紀夫が死んだ日 →続・三島由紀夫が死んだ日 [劇評家の作業日誌](4) 三島由紀夫が割腹自殺して35年になる。また今年は生誕80年に当たり、もし彼が存命なら、どんな老大家になっていただろうかと思うと、その早すぎる自死が惜しまれる。 だがそんな…

『思考のフロンティア 教育』(岩波書店)

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?w-nips=9978335420 →紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 「教育」とい…

『永遠の夏休み』(ポプラ社)

→紀伊國屋書店で購入 「なぜフーコーなのか 脈絡のない話 東京物語から」 私の大学時代の専攻は有機材料工学と言って物理でも化学でもなく、今で言う interdisciplinary = 学際領域の走りでした。他専攻の授業を取る自由度もあ り、私も生物系の専攻に行って…