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プロの読み手による書評ブログ

2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

明日より「ぶんぱく'11」開催

昨年春の「ワールド文学カップ」から一年。 ピクウィック・クラブの世界文学フェアが帰ってきた! テーマは「文学博覧会2011」略して「ぶんぱく'11」。 今回採り上げる古今東西の文学作品には、一作ずつすべてに「キーワード」がついており、その「キーワー…

書物復権によせて

書物復権によせて 持谷寿夫[みすず書房] ■〈書物復権〉共同復刊 新しいかたちへ 〈書物復権〉共同復刊事業、15年目を迎えました。15年前と同様、書物を取り巻く状況の不透明さは変わりませんが、今までこの事業で復刊できた600点を超える品切れの書物が、…

〔2011復刊書目〕 哲学・思想・言語・宗教

『ヘーゲル精神現象学の生成と構造(上)(下)』イポリット/市倉宏祐訳(岩波書店) →紀伊國屋書店で購入 上巻:初版1972・最終版1995年◆A5判◆498頁◆税込4515円(本体4300円) ISBN4-00-002024-2 →紀伊國屋書店で購入 下巻:初版1973・最終版1995年◆A5判◆500…

『最新調査 日本の“珍々”踏切』伊藤博康(東邦出版)

→紀伊國屋書店で購入 「踏切のそばで電車を眺めていた幼い日々(=昭和時代)を思い出す一冊」 本書は、日本全国の中から選りすぐりの面白い踏切について、著者が自ら撮影した数々の写真とともに紹介したものである。2005年に出された前作『日本の“珍々”踏切…

『妄想少女オタク系』紺條夏生(双葉社)

→紀伊國屋書店で購入 「女子も男子も楽しめるマンガ~少女文化のゆくえを考えるヒント」 面白いマンガである。しいてジャンル分けをするのならば、少女マンガというカテゴリーに位置づくのだろうが、およそそうした既存のカテゴリーを大きくはみ出した作品で…

〔2011復刊書目〕 社会

『健康という幻想 医学の生物学的変化』ルネ・デュボス/田多井吉之介訳(紀伊國屋書店) →紀伊國屋書店で購入 初版1977・最終版1990年◆四六判◆222頁◆税込2415円(本体2300円) ISBN978-4-314-00173-1 生命をもつものの宿命として、病気から完全に解放されると…

〔2011復刊書目〕 歴史・民俗

『日本古代官僚制の研究』早川庄八(岩波書店) →紀伊國屋書店で購入 初版1986・最終版1991年◆A5判◆486頁◆税込7455円(本体7100円) ISBN4-00-001657-1 古代の公文書を駆使した緻密な実証的研究によって古代官僚制の実相に迫る。古代の国家と天皇を論じる際に…

〔2011復刊書目〕 文学・芸術

『ビート・ジェネレーション』諏訪 優(紀伊國屋書店) →紀伊國屋書店で購入 初版1965・最終版1994年◆四六判◆212頁◆税込1995円(本体1900円) ISBN978-4-314-01081-8 1950年代半ばのアメリカに「詩をたずさえて登場した」ムーブメントを、同時代的に日本に紹介…

〔2011復刊書目〕 法律・経済・政治

『古典派経済学と近代経済学』根岸 隆(岩波書店) →紀伊國屋書店で購入 初版1981・最終版1981年◆A5判◆200頁◆税込4095円(本体3900円) ISBN4-00-000775-0 近代経済学の理論的な枠組みを誕生にさかのぼって再検討、新古典派理論の自己批判を通してケインズ経済…

〔2011復刊書目〕 自然科学・医学

『誤差論』カール・F.ガウス/飛田武幸、石川耕春訳(紀伊國屋書店) →紀伊國屋書店で購入 初版1981・最終版1981年◆A5判◆192頁◆税込3675円(本体3500円) ISBN978-4-314-01082-5 確率論、天文学、測地学などの分野で先導的役割を果たしてきた、ガウス誤差論を…

〔2011復刊書目〕 オンデマンド書目

【オンデマンドとは】 *書籍の内容をデジタル・データで保存し、注文をいただいた時点で印刷・製本するシステムです。内容はオリジナル本と変わりはありませんが、装丁、外見などが異なります。 *ご注文の際には、以下の点にご注意ください。 1) 注文によ…

読者からのメッセージ

■毎年入学する大学生が読むべき必読書は、出版部数が少なくとも常に購入できるようにしておいて下さるようお願いします。(63歳・男) ■毎年楽しみにしています。好きで、図書館で愛読して、だけど手元で買うにはお金がなかった、そんな大学時代の愛読書がい…

NetLibrary

*書物復権参加8社は、品切の学術書の電子書籍化にも取り組んでいます。今回初めての試みとして、紀伊國屋書店が日本代理店を務める図書館契約型電子書籍配信サービス「NetLibrary」にも以下のコンテンツを提供いたします。現在は個人向けの販売はできません…

『事故の鉄道史』佐々木冨泰・網谷りょういち(日本経済評論社)

→紀伊國屋書店で購入 「技術の進歩に関して、歴史観が揺さぶれる一冊」 技術決定論という考え方がある。いわば軽工業から重工業へ、そしてまた重厚長大型から軽薄短小型の産業へというように、技術の進歩を当然の前提と見なし、それに伴って人間社会も変化し…

『ナショナル・アイデンティティの国際比較』田辺俊介(慶應義塾大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 「ナショナル・アイデンティティの実証的研究!」 2011年3月11日に発生した未曽有の震災以降、「日本という国の力を信じている」「いまこそ国が一つになる時だ」といったメッセージを多く目にするようになった。 その一方で、こんなメッ…

『裁縫女子』ワタナベ・コウ(リトルモア)

→紀伊國屋書店で購入 細かい手順を大胆に省略し、初心者でも手早く簡単にできる「クイック・ソーイング」をあみだし、裁縫教室やテレビ番組で講師をつとめてきた著者。イラストレーターでもある彼女が、これまで教室で出会った生徒たちとのエピソードをつづ…

『都市 風景 図鑑』中平卓馬(月曜社)

→紀伊國屋書店で購入 「中平卓馬の写真をめぐって(その1)」 4センチほどの厚みのある大部な本には、中平卓馬が1964年から1982年に雑誌に発表した写真が、掲載ページの複写というかたちで収められている。2年前にこのスタイルで、森山大道の『にっぽん劇…

『Juliet』Anne Fortier(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 昨年、そして一昨年と2年続けてイタリアに旅行に出かけた。この2年で訪れた街にはフィレンツェ、ローマ、ミラノ、ヴェニスなどがあった。 フィレンツェに滞在した時は、バスに乗って近くの街シエナに行った。とても暑い日でカンポ広場…

『王国』よしもと ばなな(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「癒しと回復の物語」 今回の大震災の被災者にお見舞いを申し上げますと共に、犠牲者のご冥福を心からお祈りします。ここフランスでも、様々な方が義援金募集活動をしていて、緊急時にこそ人々の暖かい心がよく分ります。原発の状況も予…

『文学のレッスン』丸谷才一(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「文学の組み換えのために」 1980年代頃から、日本の文芸批評では「近代文学の終わり」が公然と指摘されるようになった。日本社会の大衆化・メディア化が進むなかで、明治以来の文学世界――本書の言い方を借りれば「安下宿に住んでいる文…

『昭和大相撲騒動記ー天龍・出羽ヶ嶽・双葉山の昭和7年』大山眞人(平凡社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「相撲はただ伝統的ではない」 震災と原発の問題で忘れられているが、ほんの少し前まで、大相撲の八百長問題がメディアを賑わせていた(ここ数日処分決定に関する報道がされているようだが)。そこでは大相撲が、スポーツなのか、それと…

『二つの星 横井玉子と佐藤志津 女子美術大学建学への道』山崎光夫(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 私立女子美術学校(現・女子美術大学)の創立者・横井玉子は嘉永7年(1854年)、江戸築地鉄砲州にある肥後藩細川若狭守邸内で、肥後藩の支藩新田藩家老の原尹胤(まさたね)の次女として生まれた。維新に際して熊本へ帰還し、そこで横…

『<当事者>をめぐる社会学――調査での出会いを通して――』宮内洋・好井裕明編著(北大路書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「当事者」を語ることの意味」 「この苦しみは体験した者でなければわからない」。これは、私が研究の過程で知り合ったある難病を持つ方が、専門職を前に体験談を語った中で出てきた言葉です。一瞬、「あなたたちは『非当事者』であり…

『日本帝国をめぐる人口移動の国際社会学』蘭信三編著(不二出版)

→紀伊國屋書店で購入 時代は確実に変わってきている、まずそう思った。「二〇世紀前半に主として日本帝国の形成と崩壊に伴って生じた人口移動の様々な動きを理解することは、一筋縄ではいかない企てである」。それを可能にしたのは、編著者である蘭信三の実…

『徳川夢声のくらがり二十年』徳川 夢声(清流出版)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 「失われたものの数え方」 3月11日の震災当夜遅く、やっと動き出した地下鉄車内でたまたま取り出した本が、高田理恵子さんの新著『失われたものを数えて』(河出ブックス)だった。タイトルに…

『老いの才覚』曽野綾子(ベスト新書295)

→紀伊國屋書店で購入 今、評判の本だ。書評を通じて本好き諸氏の興味を刺激し、購入をうながすことなどまったく必要ないと思われるが、自分自身が「親の介護」という現実にどっぷりはまってみての感想を述べてみたいと思う。 私は年齢的に50代後半に突入した…

『大塚女子アパートメント物語 オールドミスの館にようこそ』川口明子(教育資料出版会)

→紀伊國屋書店で購入 同潤会によって建設された女性専用アパート、大塚女子アパートメントの軌跡をつづる本書。 その設立は1930年。地上五階、地下一階、中庭を抱いたコの字型の建物には148の居室があった。地下には食堂と共同浴場、一階には応接室とミシ…

『小説家』勝目梓(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「なぜ、彼は小説家になれなかったのか」 こういうときこそ、本を読みたい。 本書はエンタテイメント作家として知られる勝目梓が、いわば素顔に戻って書いた自伝である。今さらなぜ自伝なのか、その必然性が読み進めるほどに明らかにな…

『災害ユートピア─なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』レベッカ・ソルニット(高月園子訳)(亜紀書房)

→紀伊國屋書店で購入 「私たちの社会の希望のために」 3月11日以降、メディアを中心とした周囲の環境があまりにも騒々しいため、なかなか落ち着いて読書できない。それでも、気分を落ち着かせることが大事なのだと自分に言い聞かせて、テレビやネットを見る…

『A Day Late and a Dollar Short』Terry McMillan(Viking )

→紀伊國屋書店で購入 「中産階級に属するアメリカ黒人家庭の物語」 アメリカの人気作家テリー・マクミランの作品。彼女は『How Stella Got Her Groove Back』や『Waiting to Exhale』など、黒人の中産階級の家庭を舞台にした作品を多く発表している。この作…