2013-06-01から1ヶ月間の記事一覧
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ほどけゆく個人のゆくえ」 本書は、作家の平野啓一郎が、2009年の小説『ドーン』の作中で描いた概念「分人主義」について、スピンオフ的に別の著作にまとめあげたものである。 『ドーン』は近未来の社会を描いた小説であり、…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「記憶をめぐる情報戦」 本作は、作者の父親のシベリア抑留についての語りに基づいて構成されたマンガ作品である。50万人とも言われる日本人が抑留され、多数の死者を出したこのできごとについては、おそらくその重大さと比べる…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 『エッフェル塔』はバルトが1964年に発表した本文100ページに満たないエッセイである。日本では1979年に審美文庫から本文より長い解説というかバルト論が付されて(それでも薄い本だった)宗左近・諸田和治訳で出た後、1991年に…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 読むと全身の力が抜けて、ほどよく笑えて、すっと眠りに入れる。そんな本を私は「睡眠導入本」と名付けて密かにコレクションしています。前回「睡眠導入本」として紹介したのは、『生きていてもいいかしら日記』(北大路公子著…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「人間漱石を知ることのできる一冊」 調べたことはないが、書いた作品数に比べて、書かれた評論やエッセイ等が非常に多いのが、夏目漱石の一つの特色ではないだろうか。研究書は無数に出版されているし、エッセイ等も弟子達のみ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「このマンガが「あえて」か「素」かに、出版業界の浮沈が掛かる」 本作は、長期的な不況に見舞われている出版業界の様子について、マンガの制作過程を中心に、マンガで描き出した、いうなれば「自己言及的」な作品である。 そ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 文化大革命末期の1974年、バルトはテル・ケル派の論客らと中国に招待され、三週間にわたって各地を観光して歩いた。 テル・ケル派とは1960年にフィリップ・ソレルスが創刊した前衛文学誌『テル・ケル』に拠った作家、思想家のグ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「『星の王子さま』を四ヶ国語で読む」 誰もが知っているのに、実は読めていない。そんな「名著」を挙げればキリがないが、今年は『星の王子さま』をやっと読んだ。後で気づいたことに、原書が作者のアメリカ亡命中にニューヨー…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 ロラン・バルトが亡くなって10年後に出た初の本格的な伝記である。 力作といっていいと思うが、「作家の死」を提唱した文学理論家に普通の伝記を書いてしまったために(伝記素がどうのこうのと能書を書いているが、結局は物語風…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「アメリカのユーモアリト、デビッド・セダリスの新刊」 ニューヨークで暮らしているといろいろ考えさせられるというか、気になることがでてくる。 そのひとつが健康保険の高さ。ニューヨークに住むアメリカ人は(ここに住んで…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「抽出したエキスを具体的な光景に構成する」 片岡義男の小説が話題になることがまわりで増えている。わたしは最近読むようになったにわか読者だが、前回はエッセイ集『ことばを生きる』を取り上げたので、今回はかねてから宿題…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「おとなにも読めるラノベ?」 ラノベとは何か? ライトノベルの略称だ、くらいはわかる。でも、実際に手に取ったことはないし、手に取る気もないし、どうせ中高生の「こども」が読むくだらん小説だろうと高をくくって、そのく…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 英国のラウトリッジ社から比較文学を勉強する学生向けに出ている「シリーズ現代思想ガイドブック」の一冊である(邦訳は青土社から)。ガイドブックだけに随所に用語解説のコラムをはさみ、各章の末尾に要約を載せている。 同シ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「謎解き[銀河鉄道]」 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」はややこしい作品だ。読む本によって印象が変わる。というか、内容が変わる。 学生時代、「銀河鉄道の夜」でレジュメを書くことになり、参考のため『「銀河鉄道の夜」とは何…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「歴史的には、海洋法は、近代主権国家成立のはるか以前における、海を媒介した海運・商事関係に関する慣習法からの影響を強く受けている」。「条約の締約国と非締約国との間では慣習法が適用される。ただし、国際社会全般に広…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「学生運動、挫折、それでも文学に生きる」 団塊の世代が学生運動を回顧するのはつねにある種のためらいや痛みが伴うものだ。本書(『早稲田1968―団塊の世代に生まれて』廣済堂新書、2013年)の著者、作家の三田誠広氏があ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 中公版『哲学の歴史』の第12巻である。このシリーズは通史だが各巻とも単独の本として読むことができるし、ゆるい論集なので興味のある章だけ読むのでもかまわないだろう。 20世紀の三冊目でフランス語圏の哲学をあつかう。副題…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 演奏家をめざしつつも、メンタルの問題に悩んでいる人への福音となる本かも知れない。とは言うものの、この本に書かれていることを忠実に守りさえすれば、今抱えている問題への解決が提供されるノウハウ本ではないことは、あら…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「アメリカのインターステートを走る旅行記」 これまで、アメリカ大陸を3度横断したので、いまでもアメリカ全土のロードマップをみるとその時のことが思い出される。もの凄いヒートウェイブのなかをニューメキシコ州のアルバカ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書は、「大戦の勃発を機に顕在化したイギリスにおけるジェンダー問題を、プロパガンダ、制服、モラル・コントロールをキーワードに読み解いていく」。 大戦という非常事態は、女性にとってプラスにはたらいたのか、マイナスに…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「三越ブランディングをつくった久留米武士」 タイトルに惹かれて本書(『<三越>をつくったサムライ 日比翁助』現代書館、2013年)を手にとったが、「三越ブランディング」を創り上げるのに尽力した久留米武士、日比翁助(1860…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「身体への現代的不安を問う」 少し前に「ちょいワル」や「カレ専」(枯れた男性専門)、「グレ専」(ロマンスグレー専門)という言葉が登場したように、男性の老いに関して肯定的に描く風潮が見られるようになった。だが、こと…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 私はあまりダイビングに興味がありません。 あれは、なんていうか、きらきらした人がやるものですよね。まず「南の島に行く」ということ自体が無理です。南の島でなにすればいいんですか。パラソルの下でブルーハワイ飲んで、昼…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 俺はまだ本気出してないだけ。 世の中にこれほど胸をえぐるフレーズがあるでしょうか。誰もが一度は思ったことがあるはずです。「私は本気さえ出せば…」と。そして大抵の場合は、本気を出さずに、一生を終えるのです。漫画「俺…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 南極条約は、1959年に作成され、61年に発効した。その後、人の住まない宇宙や深海底などにかんする条約(67年宇宙条約、82年国連海洋法条約など)に影響を与えたという点で、ひじょうに重要な意味をもつだけでなく、平和という…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「手首をつかむ」 本書巻頭の「おとな」は、四〇〇字詰め原稿用紙にして4枚足らずのごく短い作品である。この書評欄にまるごと引用するのも可能なほどの掌編。でも、実にパンチが効いている。これを立ち読みした人は、思わず本…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「民主主義による愛国心の合理化は可能か」 本書(清水幾太郎著『愛国心』ちくま学芸文庫、2013年)は、1950年に出版された岩波新書の文庫化である。復刊の経緯は知らない。著者の清水幾太郎(1907-88)は、当時「岩波文化人」とし…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「女性就職残酷物語、ニューヨーク流」 ニューヨークで日系の経済雑誌の記者をやっていた頃、記事を書くために日本の企業に働く数多くのアメリカ人にインタビューをしたことがあった。アメリカ人社員たちは、自分の言葉が記事に…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 シンガポールのことを、「明るい北朝鮮」と言った人がいる。本書を読めば、その意味がわかる。1965年の独立以来、リー・クアンユーの指導の下、人民行動党が一党独裁を続け、その独裁を批判すれば、国内治安維持法で無期限に収…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「神話や伝説に覆い隠された大オペラ作曲家の実像」 今年は、ワーグナーとヴェルディの生誕200年に当たっており、世界中のオペラ劇場がこの二人の偉大な作曲家の作品を上演中である(注1)。いや、生誕200年でなくとも、ワーグナ…