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プロの読み手による書評ブログ

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

『プロフェッショナルパイロット』杉江弘(イカロス出版)

→紀伊國屋書店で購入 「「想定外」に対応できてこそプロフェッショナル」 飛行機に乗っていると、着陸がスムーズにいく場合とそうでない場合とがある。天候に左右されることもあるが、さしたる風も吹いていないのに「ドスン」と大きく弾んで着陸するときもあ…

『島秀雄の世界旅行 1936‐1937』島隆 監修 ・高橋団吉 文(技術評論社)

→紀伊國屋書店で購入 「東海道新幹線のルーツを辿る紙上旅行」 島秀雄といえば、十河信二とともに「新幹線の生みの親」として、鉄道好きでなくともその名が知られていよう。国鉄の技師長を務め、新幹線以外にも数々の名車や名機関車の開発に携わった技術者で…

『カレチ』池田邦彦(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「「リスク」だけでなく「キセキ」をも語ること」 本書は、昭和40年代後半を舞台に、当時の国鉄大阪車掌区に勤務する新米「カレチ(長距離列車に乗務する客扱専務車掌)」の日常を描いたマンガである。 鉄道ブームの昨今、それを題材に…

『ニセドイツ<1>』伸井太一(社会評論社)

→紀伊國屋書店で購入 「面白うて やがて悲しき ニセドイツ」 本書は、かつての東ドイツ(ドイツ民主共和国)社会について、工業製品の紹介を中心に、ユーモアたっぷりに記したものである。 ドイツといえば、カメラでいえばライカ、クルマでいえばBMWとい…

『他者の記号学―アメリカ大陸の征服』 トドロフ (法政大学出版局)

→紀伊國屋書店で購入 スペインのアメリカ征服を記号学の視点から分析した本である。著者のツヴェタン・トドロフはロラン・バルトの弟子で、文芸批評家として知られた人である。 なぜアステカやマヤの滅亡に記号学が関係あるのか、なぜ文芸批評家が首を突っこ…

『古代マヤ・アステカ不可思議大全』 芝崎みゆき (草思社)<br />『マヤ・アステカ遺跡へっぴり旅行』 芝崎みゆき (草思社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 ヘタウマのイラストと手書きの文字でつづられたメソアメリカ遺跡案内である。著者の芝崎みゆき氏は『古代エジプトうんちく図鑑』と『古代ギリシアがんちく図鑑』を出しているが、メソアメリカは一冊では書ききれな…

『マヤ文明 聖なる時間の書』 実松克義 (現代書林)

→紀伊國屋書店で購入 青木和夫氏は『古代メソアメリカ文明』で日本人が仏教という外来宗教から神仏習合の日本仏教をつくりだしたように、マヤ人も多神教的なフォーク・カトリシズムをつくりだしたと指摘しているが、現代マヤ人の精神世界とはどのようなもの…

『病院の世紀の理論』猪飼周平(有斐閣)

→紀伊國屋書店で購入 「現代社会が待望する医療史研究、ようやく現る!」 以前当ブログで取り上げたアーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』(2006年6月)について、「回復の物語(the restitution narrative)」が私たちにとって基本的な概念であるこ…

『Self-made Man : One Woman’s Year Disguised as a Man』Norah Vincent(Penguin Group USA)

→紀伊國屋書店で購入 「女性が覗いた男の世界」 僕が初めてボブ・ディランの『悲しきベイブ』の歌詞を知ったとき、心のなかがふっと軽くなったことを憶えている。 その歌詞というのは、君が正しくとも間違っていても、君を守り、いつでも強くて、呼べばいつ…

『古代メソアメリカ文明』 青山和夫 (講談社選書メチエ)

→紀伊國屋書店で購入 『マヤ文明の興亡』の訳者解説がよかったので、同じ青山和夫氏による本書を読んでみた。表題の「古代メソアメリカ文明」とはコロンブス到達以前に中米地域(メソアメリカ)に勃興した文明のことで日本の室町時代に相当する期間までを含…

『マヤ文明の興亡』 エリック・S・トンプソン (新評論)

→紀伊國屋書店で購入 本書は1975年に亡くなるまでマヤ学の最高権威として君臨したエリック・S・トンプソンの主著であり、「20世紀最大のマヤ文明のベストセラー」ということである。初版は1954年、第二版が1966年だが、邦訳が出たのは最近で2008年に日本の…

『英国メイドの日常』村上リコ(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 小学校中・高学年のとき、「演劇」と称するごっこ遊びが流行っていて、それはたいてい、シンデレラをはじめとするお姫様もののおとぎ話や、『小公女』や『嵐が丘』や、それを下敷きにしたような少女マンガや昼メロドラマがまぜこぜにな…

『病気の日本近代史-幕末から平成まで』秦郁彦(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 軍事史を専門とする著者、秦郁彦の研究には、専門書はもちろんのこと、工具類にもたいへんお世話になった。軍事史を研究していて気になるのは戦場での病気であるが、多くの人文・社会科学系の研究者は、専門知識がないのでまともに扱っ…

『マヤ文字解読辞典』 コウ&ストーン (創元社)<br />『【図説】マヤ文字事典』 ロンゲーナ (創元社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 マイケル・コウの『マヤ文字解読』は解読にあたった第一人者が書いた歴史として臨場感にあふれ、読み物としても第一級だったが、主眼は解読にいたる紆余曲折にあり、マヤ文字そのものについてはあまりふれられては…

『マヤ文字解読』 マイケル,コウ (創元社)

→紀伊國屋書店で購入 『古代マヤ文明』の著者でマヤ学の泰斗であるマイケル・コウがあらわしたマヤ文字解読史である。 古代文字の解読史は面白いに決まっているが、マヤ文字は面白さが倍加する。ヒエログリフと楔形文字は19世紀、線文字Bは20世紀前半に解読…

『<small>哲学の歴史 01</small> 哲学誕生』 内田勝利編 (中央公論新社)

→紀伊國屋書店で購入 中央公論社は創業120周年を記念して2008年から『哲学の歴史』全13巻を刊行した。近年にない大規模なシリーズで2008年度の毎日出版文化賞特別賞を受賞しているが、新書に近い手軽さで読めることがわかったのでこれから一年かけて紹介して…

『Short Stories in Japanese (New Penguin Parallel Text)』(Penguin Books)

→紀伊國屋書店で購入 「タテとヨコの出会い」 ペンギン・ブックスから、「日本語の短編小説」アンソロジーが出た。左側の頁に英訳、右側の頁に原文を配した対訳だ。本を開いて驚くのは…日本語がタテ書き!今まで見たことのない洋書のすがたにワクワクする。 …

『Area 51 : An Uncensored History of America’s Top Secret Military Base』 Annie Jacobsen(Little Brown & Co )

→紀伊國屋書店で購入 「エリア51で働いた人々からの証言」 もしあなたがレポーターで、ある夕食時親戚の小父さん(夫の小父の妻の姉妹の夫)が「凄い話があるんだ」と言ってきたらどうするか。 そしてその小父さんがロッキード社のレーダー・マンといわれた…

『最後の戦犯死刑囚-西村琢磨中将とある教誨師の記録』中田整一(平凡社新書)

→紀伊國屋書店で購入 1951年6月、赤道直下の現パプアニューギニアのマヌス島で、元近衛師団長の西村琢磨中将は、最後の戦犯死刑囚として絞首刑にされた。身に覚えのない罪状にもかかわらず、「一人でも多くの部下を救うべく」オーストラリアによるBC級戦犯…

『sketches』荒木時彦(書肆山田)

→紀伊國屋書店で購入 「情緒不安定と詩」 このところ、ちょっとした詩のブームのようだ。一部の詩集は書店のいわゆる「陽の当たる場所」におかれるようになった。今まで何とも思わなかったものが、何かのきっかけで急にひりひりと感じられるということはたし…

『ピアノと仲良くなれるテクニック講座』パスカル・ドゥヴァイヨン(村田理夏子訳、音楽之友社)

→紀伊國屋書店で購入 ピアノの演奏テクニック関連の本は数多い。書き下ろしの解説書や海外の書籍の訳本、そして本書のように音楽月刊誌における連載がまとめられた体裁のものも少なくない。いずれにせよこうした本の読者たちは向上心旺盛で「何かを得よう」…

『ミドリさんとカラクリ屋敷』鈴木遥(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 食道楽、あるいは着道楽と呼べる人になら、いまもお目にかかることはあるだろうが、普請道楽といったらどうか。家を建てたい人のための本は書店にたくさん並んでいるし、自慢のお宅拝見、といったテレビ番組もよくあるけれど、そうした…

『住まいの手帖』植田実(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「私の家の姿は私が覚えている」 解体前の友人の家の掃除を手伝った。もの作りの好きな三世代が暮らした一軒家で、そこかしこに手作りの気配がある。「必要なものはすべて運び出したから、欲しいものがあったらどうぞ」と言うので、なに…

『博士漂流時代―「余った博士」はどうなるか?』榎木英介(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

→紀伊國屋書店で購入 「博士課程と科学技術振興」 1950年代以降、科学技術振興政策によって大量に生まれた「博士」は、不安定な任期付きの職で研究を続ける若手研究者として「ポストドクター」(ポスドク)と呼ばれ、大きな問題を起こしている。増えすぎ…

ジンピクフェア ~後半戦~ 第2週経過。作家紹介完結!

こんにちは。ピクウィック・クラブです。 当ブログをご覧の皆様は既に御存知のことでしょう、ピクウィッククラブは現在、紀伊國屋書店新宿本店5階人文書売場の定期フェア〝今こそ! 人文書宣言〟において『小説と思考の繋留――〝気づき〟の先を想像する』とい…

『A Blind Man Can See How Much I Love You』Amy Bloom(Vintage Books)

→紀伊國屋書店で購入 「エイミー・ブルームの短編集」 僕はアメリカ作家のアンソロジーを読むことが多い。ホートン・ミフリンから毎年出版される『ザ・ベスト・アメリカン・ショートストーリーズ』の編集者であるカトリナ・ケニソンに会って話を聞いたころか…

『寝ながら学べる構造主義』内田樹(文春新書)

寝ながら学べる構造主義 内田樹 法学部・男性 →紀伊國屋書店で購入 1.この本との出会いはいつですか? 1年生の冬に、当時入っていたストリートダンスサークルの理系の友人に勧められて出会いました。 2.どんな内容の本ですか? 一見とっつきにくい構造主…

『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎(新潮文庫)

オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎 法学部・女性 →紀伊國屋書店で購入 1.この本との出会いはいつですか? 大学1年のとき 2.どんな内容の本ですか? 伊藤と変な島のカカシの話。伊坂さんのデビュー作です。 3.この本のどういうところが好きですか?(抽象的に…

『シーシュポスの神話』カミュ(新潮文庫)

シーシュポスの神話 カミュ 法学部・男性 →紀伊國屋書店で購入 1.この本との出会いはいつですか? 本との出会いは大学1年の時 2.どんな内容の本ですか? ギリシア神話に寓して不条理に関して論じた哲学的エッセイ。 3.この本のどういうところが好きですか…

『一九八四年』ジョージ・オウェル(ハヤカワ文庫)

一九八四年 ジョージ・オウェル 法学部・男性 →紀伊國屋書店で購入 1.この本との出会いはいつですか? 去年の今ごろ 2.どんな内容の本ですか? 地方(現在のオセアニアとは異なります)で、体制に疑問を抱く主人公が体制の真相を突き止めようとするが… 3.こ…