書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

朱野帰子

『サンリオデイズ 〈いちご新聞篇〉 - sweet design memories 『いちご新聞』から生まれたキャラクターのヒミツがいっぱい』竹村真奈(ビー・エヌ・エヌ新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 70~80's生まれ女子の皆さん。心の準備はいいですか? まず表紙を見てください。雲の泡風呂で遊ぶキキとララ。ふたりの髪の色が今と違いますね。キキは茶色、ララは黄色です。このふたり、79年まではこの色だったのです。…

『微生物ハンター、深海を行く』高井 研(イースト・プレス)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 この本で一番好きなシーン。それは、前のめりに持論を語る若き研究者に、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の理事が言う、この台詞です。 「僕はキミの目がとても気に入っている。僕のような年寄りになると目を見ればだいたい…

『重版出来!』松田奈緒子(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 1巻も面白かったのです。本を「売る」人々の熱い仕事ぶりが真摯に描かれていて、だからこそ重版がかかるシーンはとても感動的で、主人公もかわいくて、「面白いから読みなよ!」と人に勧めたりもしました。 しかし、2巻に、こ…

『僕は問題ありません』宮崎夏次系(講談社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 またもや衝動買いです。 地元の書店をうろうろしていた私は、新刊の棚にこの漫画があるのを見て、そのままレジへ向かってしまいました。『僕は問題ありません』といういかにも問題がありそうなタイトルも気になりますし、表紙に…

『機械仕掛けの愛』業田良家(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 人間に愛を捧ぐロボット。こういう設定に私すごく弱いんです。 今でも忘れられないのは『火の鳥』(手塚治虫著)の復活編です。子供たちを愛し愛されたロボット、ロビタ。その愛ゆえに起きてしまった事件と、彼にくだされた理不…

『小学館の図鑑neoの科学絵本 宇宙探検えほん』宇宙航空研究開発機構(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 私は最近「編集者伝いに本を買う」行為に凝っています。「自分の好みに合う」と思った本の編集者さんを見つけ、その編集者さんが手がけた本を買っていくのです。面白い本にヒットする確率が高くなります。興味のない分野の本に…

『講談社現代新書 野心のすすめ』林 真理子(講談社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 『野心のすすめ』というタイトルを見た瞬間、何年も前からぐつぐつ煮えていた正体のわからない衝動にやっと名前がついたような気がしました。この本が売れているということは、私以外にもそういう人がたくさんいたということで…

『ぼくは「しんかい6500」のパイロット』吉梅剛(こぶし書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 著者に取材させていただいたのはちょうど2年前。吉梅さんは日本が誇る有人潜水調査船「しんかい6500」の潜航長を務めておられました。短編映像「有人潜水調査線_しんかいの系譜」でインタビューに答えていらっしゃったお姿…

『並盛サラリ-マン』木下晋也(竹書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 読むと全身の力が抜けて、ほどよく笑えて、すっと眠りに入れる。そんな本を私は「睡眠導入本」と名付けて密かにコレクションしています。前回「睡眠導入本」として紹介したのは、『生きていてもいいかしら日記』(北大路公子著…

『会いに行ける海のフシギな生きもの』吉野雄輔/武田正倫(幻冬舎)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 私はあまりダイビングに興味がありません。 あれは、なんていうか、きらきらした人がやるものですよね。まず「南の島に行く」ということ自体が無理です。南の島でなにすればいいんですか。パラソルの下でブルーハワイ飲んで、昼…

『俺はもっと本気出してないだけ』青野春秋(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 俺はまだ本気出してないだけ。 世の中にこれほど胸をえぐるフレーズがあるでしょうか。誰もが一度は思ったことがあるはずです。「私は本気さえ出せば…」と。そして大抵の場合は、本気を出さずに、一生を終えるのです。漫画「俺…

『PLANETS vol.8』PLANETS編集部(第二次惑星開発委員会 )

→紀伊國屋書店で購入 何ヶ月か前のことです。私は雑誌「ダ・ヴィンチ」に、NHK大河ドラマ「平清盛」の評論が掲載されているのを目にしました。「平清盛」の熱心な視聴者だったこともあって、興味を抱いた私は、読みはじめるやいなや、抑制された、柔らか…

『本にだって雄と雌があります』小田雅久仁(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 古い衣装箪笥が入り口のナルニア国、あかがね色の書物の中にあるという果てしない物語、高速道路脇の階段を降りた先に待ち受ける1Q84年…。ファンタジー、それは普段暮らしている世界のすぐそこにありそうでいて、同時に私たちには想…

『生きていてもいいかしら日記』北大路公子(PHP研究所)

→紀伊國屋書店で購入 皆さんは寝る前にどんな本を読みますか。私は結構悩みます。東野圭吾のミステリーでは面白すぎて目がさえてしまうし、かといって怪談実話に手を伸ばそうものなら天井の染みが気になってつい電気をつけてしまいそう。読むと全身の力が抜…

『あたらしいみかんのむきかた』岡田好弘 神谷圭介(小学館 )

→紀伊國屋書店で購入 もうすぐお正月ですね。強制的に集められた親戚同士、旧交を深め合わなければならない微妙な季節です。義理の家族への対応にも頭が痛いですね。共通の話題もないし禁句も多い。「孫はまだかしら」とか「お義母さまの味付けって濃いです…

『テラフォ-マ-ズ』貴家悠 橘賢一(集英社)

→紀伊國屋書店で購入 「テラフォーミング」という言葉をご存知でしょうか。惑星地球化計画、つまり他の惑星を人類の住みやすいように改造する計画のことです。最有力候補地は地球と環境が似ている火星。人類が火星に住むなんて、今は想像すらできませんが、…

『指名ナンバーワン嬢が明かすテレフォンセックス裏物語』菊池美佳子(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 テレフォンセックスと聞いて何をイメージしますか? 私が思い出すのは「セックス・アンド・ザ・シティ」のワンシーン。ニューヨーク在住の独身女性キャリーが元彼とセクシーな言葉の応酬で楽しむ場面です。正直思いました。電話でセック…

『孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生』 前野 ウルド 浩太郎(東海大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 バッタ。バッタに興味ありませんか? あまりない。ほとんどない。まったくない。むしろ苦手だ。見るのも嫌だ…。そんなあなたにとって、この本は、ぱらりと開いたその日からバッタが、いやバッタ博士が頭から離れなくなってしまう悪魔の…

『ぼくらの昭和オカルト大百科―70年代オカルトブーム再考』初見健一(大空出版)

→紀伊國屋書店で購入 ノストラダムスの大予言。ネッシー。ツチノコ。ユリ・ゲラー。スプーン曲げ。UFO。あなたの知らない世界。心霊写真。コックリさん。口裂け女。これら実にいかがわしいトピックが日本全土を座巻した時代がありました。 70年代です。…

『海月姫外伝BARAKURA ― 薔薇のある暮らし』東村アキコ(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 久しぶりに近所の書店をうろついていたらピカリと光る漫画が。それが『海月姫外伝BARAKURA ― 薔薇のある暮らし』でした。言わずと知れた人気漫画家・東村アキコさんの最新刊です。私はデビュー作の表紙を東村アキコさんに描いて…

『ぼくが宇宙人をさがす理由』鳴沢真也(旬報社)

→紀伊國屋書店で購入 あなたは宇宙人の電波を受信したことがありますか。衛星放送に偶然別の惑星の番組が映ったとか、ラジオから聞き覚えのない言語が流れてきたとか、もしそんなことが起きたら。速やかに「地球外知的生命の発見後の活動に関する諸原則につ…

『はるまき日記―偏愛的育児エッセイ』瀧波ユカリ(文藝春秋 )

→紀伊國屋書店で購入 「母親になっても女を捨てたくない」と言ってる女性、いますよね。「子供を生んでもきちんとメイク」「羞恥心だけは捨てたくない」実際に死守している人もいます。すごいと思います。でも大概の女性は努力を放棄してしまうようです。な…

『THE BOOKS -365人の本屋さんがどうしても届けたい「この一冊」』ミシマ社(編)(ミシマ社)

→紀伊國屋書店で購入 本が売れない時代だといわれます。出版業界は縮小の一途だそうです。人々が本を読まなくなったからでしょうか。みんな忙しいですからね。本を読む暇なんて刑務所にでも入らなければ捻出できない。そんな人もいるでしょう。それとも本が…

『この世界の片隅に 〈前編〉』こうの史代(双葉社)

→紀伊國屋書店で購入 こうの史代(以下敬称略)を知っていますか? ご存知ないのなら、この機会に、ぜひ知っていただきたいと思います。 こうの史代は、広島で被爆したある女性とその家族を描いた『夕凪の街 桜の国』で2004年度文化庁メディア芸術祭大賞を受…

『星のかけらを採りにいく―宇宙塵と小惑星探査』矢野 創(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 この本は、宇宙塵(うちゅうじん)を集めることに心血を注ぐ、ある研究者によって書かれました。名前は矢野創。彼が何者であるかは、冒頭の一節を読めばすぐにわかります。 二〇一〇年六月一四日。私は南オーストラリアのウーメラ砂漠の…

『はじめてエブリデイ―トリペと〈3〉』コンドウアキ(主婦と生活社 )

→紀伊國屋書店で購入 書店の、決して目立つ場所ではないけれど、かといって隅の方でもない、そんな場所に一冊は置いてある。自分には関係ないけれど、なぜか読んでみたくなる。そんなジャンルの本ってありますよね。私にとってのそれは「育児エッセイ漫画」…

『モ-レツ!イタリア家族』ヤマザキマリ(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 映画『テルマエ・ロマエ』が絶賛公開中です。古代ローマの技師が、現代日本の風呂にヒントを得て、古代ローマの浴場建設にセンセーショナルを巻き起こしていくという、奇想天外のストーリー。本当に面白いですよね。同名の原作漫画はマ…

『書店ガール』碧野圭(PHP研究所)

→紀伊國屋書店で購入 「書店でアルバイトしよう」と、本気で考えたのは、前の会社を辞めた時でした。すぐさま知人に止められました。「自分の本の売れ行きをリアルタイムで見られる職場なんかやめとけ」というのです。冷静に考えればそのとおり。作家に面と…

『チョコレートTV』水野宗徳(徳間書店 )

→紀伊國屋書店で購入 大学時代の先輩がひとり、テレビ局に就職しています。夕方のニュース番組に配属された彼は「何がつらいって、被害者の家のチャイムを押すのがつらい」と言っていました。それはそうでしょう。被害者にとっては迷惑以外の何ものでもあり…

『山賊ダイアリ- ― リアル猟師奮闘記』岡本健太郎(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 とある平日の午後、私は紀伊國屋書店新宿南店の漫画フロアをフラフラと歩いていました。たまには大型書店もいいものです。棚が広いので置いてある漫画の数が半端ではありません。普段目にしないマイナーな漫画に出会えます。掘り出し物…