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プロの読み手による書評ブログ

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『世界を動かす海賊』竹田いさみ(ちくま新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 映画のタイトルにもなるように、「海賊」ということばからロマンと冒険をイメージする人がいるかもしれない。だが、その被害に遭うと考えると、そのようなイメージは吹き飛んでしまう。海賊の被害は国益に影響し、わたしたちの…

『宇沢弘文のメッセージ』大塚信一(集英社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「編集者のみた宇沢弘文」 著者は岩波書店の元社長で、長い間、同社の著作物の編集に携わってきたが、とくに経済学者の中では世界的な数理経済学者だった宇沢弘文(1928-2014)と懇意にしてきたひとである。宇沢氏の主要著作は…

『「歴史認識」とは何か-対立の構図を超えて』大沼保昭著、聞き手江川紹子(中公新書)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 たまに電話取材が入る。自信がないので、参考文献をあげて、それを「読んでからあらためてお電話ください」と言う。たいていは、あらためて電話はかかってこない。かかってきたときは、丁寧に対応することにしている。自信がな…

『心理学で文学を読む 困難を乗り越える力を育む』山岸明子(新曜社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「心理学と文学の協同」 本書(山岸明子著『心理学で文学を読む―困難を乗り越える力を育む』新曜社、2015年)のまえがきは、心理学と文学の協同を示唆する興味深い文章から始まっている。 「優れた文学作品は人間性や人間の心理…

『和解は可能か-日本政府の歴史認識を問う』内田雅敏(岩波書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 著者、内田雅敏は「まえがき」の最後で、本書の目的をつぎのように語っている。「このブックレットでは、これまでの政府の歴史認識にかかわる公的な見解を紹介し、その中身をあらためて確認しながら、アジア諸国との和解はどう…

『未完に終わった国際協力-マラヤ共産党と兄弟党』原不二夫(風響社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 歴史が書けないことには、いろいろな理由がある。マラヤ共産党の歴史については、1960年の非常事態終了までの研究がほとんどで、その後1989年12月に和平協定が締結されるまで30年間近く続いた武装闘争については、ほとんど語ら…