書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2006-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『A History of Reading』 Steven Roger Fischer (Reaktion Books)

→紀伊國屋書店で購入 フィッシャーの言語史三部作の最終巻で、「読むこと」の歴史をあつかい、出版史、印刷史、図書館史、教育史など多岐な話題にわたるが、著者の企図は『文字の歴史』以上に大胆で野心的だ。 これまで文字言語は音声言語の不完全なコピーと…

『ワイルド7(セブン)』望月三起也<br>『ケネディ騎士団(ナイツ)』望月三起也

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 BGM(Christina Aguilera/Back To Basics(2006)) 「真夜中のハードロック 夜明けのバラード そして再びハードなリフで 画びょうを握ってでも起きてろ」 とにかく強烈に忙しい。破綻の一都六県、▲▼寸前、尋常で…

『文字の歴史』 ロジャー・フィッシャー (研究社)

→紀伊國屋書店で購入 フィッシャーの言語史三部作の二冊目で、文字の歴史をあつかっている。邦訳で470ページとぶ厚いが、日本語で読める文字関係の本の中ではもっとも充実した内容だと思う。 本書は一般読者向けに書かれているが、単なる概説書ではない。す…

『ことばの歴史』 ロジャー・フィッシャー (研究社)

→紀伊國屋書店で購入 著者のロジャー・フィッシャーは言語学者で、イースター島のロンゴロンゴ文字やファイストスの円盤文字などの未解読文字に関する論文を書いているそうである。謎の文字に興味をもつ言語学者はあまり多くない。 本書は話し言葉の歴史を一…

『インドネシア イスラームの覚醒』倉沢愛子(洋泉社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 2003年春、学生を連れて神戸を歩いていた。モスク(イスラーム寺院)の前に来たので、ダメもと…

『ゲド戦記』アーシュラ・K・ル・グウィン(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 話題のゲド戦記。映画化するまえにどうしてもおすすめしたかったのだが時は遅し。話題の書になってしまった。と思うのも、映画から知って辿り着くよりは最初からこの世界観に触れてほしいから。 ゲド戦記はやはり「影との戦い」をクリア…

『文字の考古学』Ⅰ&Ⅱ 菊池徹夫編 (同成社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 恐龍に関する本はだいたい恐龍学者が書いている。星に関する本は天文学者だ。しかし、文字に関する本は考古学者か言語学者、あるいはジャーナリストが書いている。なぜ文字学者が書かないのかというと、個々の文字…

『図説 アジア文字入門』 東京外大AA研編 (河出書房)

→紀伊國屋書店で購入 「ふくろうの本」シリーズから出た文字図鑑で、漢字、アラビア文字、インド文字などアジアの多彩な文字が一望でき、ため息が出てくる。 編纂は東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所で、同研究所が2001年から進めている「アジア…

『図説 文字の起源と歴史』 アンドルー・ロビンソン (創元社)

→紀伊國屋書店で購入 カラー図版を中心にした文字の啓蒙書である。邦題はいかめしいが、原題は Story of Writing である。著者のアンドルー・ロビンソンはタイムズ紙の教育特集版の文芸担当記者で、線文字Bを解読したヴェントリスの伝記も上梓している。 類…

『笑いと治癒力――生への意欲』ノ-マン・カズンズ/松田銑訳(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「圧倒的な生への意志と探究心、そして物語の陥穽」 前回のこのブログで取り上げたアーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』で、「探求の物語」の一例として引用されていた本から1冊を選んでみたいと思います。(「探求の物語(the …

『人類最高の発明アルファベット 』 ジョン・マン (晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 ラテン・アルファベットの誕生物語である。原題は「アルファ・ベータ 26文字はいかにして西洋世界を形成したか」だが、邦訳は前書にある「人類最高の発明」という言葉を題名に選んでいる。 古代の文字をあつかった本は、解読する過程に…

『昭和史 戦後篇 1945-1989』半藤一利(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 『昭和史』の戦後編が刊行された。五六〇頁を超す堂々たる大著だ。前著が刊行されたのが2年前だから、わずか数年で1000頁以上の書物が生み出されたことになる。 昭和という元号は1926年から1989年までの64年間を指す。こ…

『The Fourth Hand』John Irving(Ballantine Publishing Group)

→紀伊國屋書店で購入 Patrick Wallingford, a handsome, vapid, lecherous television reporter is missing his left hand due to its having been bitten off by a circus lion in India. The Fourth Hand, a witty, breezy, entertaining novel, is noneth…

『本当に「中国は一つ」なのか-アメリカの中国・台湾政策の転換』ジョン・J・タシク・ジュニア編著、小谷まさ代・近藤明理訳(草思社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 1996年3月、NHKBS1でフィリピンのニュースを見ていたら、マニラに日本の軍用船が50年以上ぶり…

『思想なんかいらない生活』勢古浩爾(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 私が通った中学や高校の図書室の壁には、世界の名著と銘打った推薦図書のリストが貼ってあり、その中には思想に関するものもたくさん含まれていた。これは読まねばと手にとってみたけれど、字を追うばかりで内容が全く頭に入ってこなく…

『犬はどこだ』米澤 穂信(東京創元社)

→紀伊國屋書店で購入 私語というのは難しいものである。 自分が学生の頃のことを鑑みると、あんまり偉そうなことは言えない。なので、大学で講義をするようになってからしばらくの間は、私語があっても放っておいた。 しかし、これが意外に評判が悪かったの…

今日から私もスクラッパー~アメリカ発祥の手作りアルバムに挑戦!

●年8回刊「BETTER HOMES AND GARDENS:SCRAPBOOKS ETC.」(アメリカ) ●臨時増刊「SIMPLE SCRAPBOOKS」(アメリカ) ●隔月刊「PAPER WORKS」(アメリカ) スクラッパーが増えているらしい。 「おう、新車買うんだって? 古い方のスクラップは俺にまかせてくれ…

洋書ビギナーにはCD付き「リーダー」がオススメ!

●「Penguin Readers(Audio Pack)」(Pearson Longman) ●「Info Trail Series(Audio Pack)」(Pearson Longman) ●「Shared Reading Mice Series(Audio Pack)」(Pearson Longman) 「洋書かあ…英語できないしなあ」とあきらめていませんか? そんな洋…

『脱植民地化とナショナリズム-英領北ボルネオにおける民族形成』山本博之(東京大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 まずタイトルを見て、なぜグローバル化時代にナショナリズムをとりあげなければならないのか、…