書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

『NANA FM707』中島美嘉、宮崎あおい(TBS(レントラックジャパン))<br>『NANA 特別版』大谷健太郎(セディックインタ−ナショナル(東宝))

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 BGM1(NANA starring MIKA NAKASHIMA/GLAMOROUS SKY (2005)) BGM2(REIRA starring YUNA ITO/ENDLESS STORY (2005)) 「私は吹雪の中を走った コートの下に赤い色を隠して ・・・いらない・・・ 強がる自分にサヨ…

『ジョン・ボールの夢』 ウィリアム・モリス (晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 1381年の英国の農民蜂起を描いたウィリアム・モリスの歴史ロマンスである。 この蜂起は日本では「ワット・タイラーの乱」として知られているが、人頭税の増税に怒ったエセックスとケントの農民がロンドンに押し寄せ、監獄や役所を焼き討…

『世界のかなたの森』 ウィリアム・モリス(晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 ハイファンタジーの源流というべきウィリアム・モリスの後期ロマンスである。 主人公のウォルターは裕福な商人の息子だったが、結婚生活に行き詰まり、妻に裏切られる。故郷の町にいたたまれなくなった彼は父親の持ち船に同乗して、冒険…

『輝く平原の物語』 ウィリアム・モリス(晶文社)

→紀伊國屋書店で購入 ウィリアム・モリスはかつては非マルクス主義系社会主義者として、最近では近代デザインの創始者として著名だが、ファンタジーの祖という一面ももっている。 不思議な物語は太古の昔から語られてきたが、この世ならぬ異世界を宗教心とは…

『東南アジアの魚とる人びと』田和正孝(ナカニシヤ出版)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 近代になって、流動性の激しい海洋民や遊牧民の世界が侵されつづけている。行動範囲が狭まるだ…

『Hateship, Friendship, Courtship, Loveship, Marriage: Stories』Alice Munro(Alfred A, Knopf)

→紀伊國屋書店で購入 This collection of nine stories is on the whole a lesson in eloquence, in carefully balanced story telling, and has striking moments, scattered like diamonds, of dazzling brilliance. Munro tells stories of ordinary live…

『Natural Born Killers 特別版』オリバー・ストーン(ワーナーホームビデオ)

→紀伊國屋書店で購入 BGM(Nine Inch Nails/closer to god (1994)) 「you let me violate you you let me complicate you my whole existence is flawed help me get away from myself」 あの街には小さな公園があって、夜になるとあの木の下に女の子が見え…

『オランダ・ベルギ-絵画紀行ー昔日の巨匠たち』(フロマンタン)(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 私の友人が異種格闘技ワールドカップを考案した。「哲学者ワールドカップ」ではー彼はフランス人なのでーデカルト、ルソー、サルトル、ディドロの屈強なフォーバックを揃えた彼の母国は世界最強だが、コンビネーションの悪さから失点す…

『オーケストラ楽器別人間学』茂木大輔(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「楽器に潜む人間性」 我々の使う楽器には、それぞれの異なる性格が潜んでいる。その楽器と長く共に生きていれば、不思議と演奏家の性格は楽器の持つ性格に似てくる。 ピアノはメロディーと伴奏が同時に弾けるだけではなく、これさえあ…

『山古志のこどもたち』片桐恒平(小学館)

→紀伊國屋書店で購入 「中越地震復興応援写真集」 →紀伊國屋書店で購入 中越地震があった10月末、私たちは11月3日のイベントの準備におわれていた。 それは、いいお産の日のイベント。これから赤ちゃんを産む人、赤ちゃんを育てている真っ最中の人が集…

『情報のみかた』山田奨治(弘文堂)

→紀伊國屋書店で購入 学科名に「情報」という言葉を持つ、美大では数少ない学科にいると、あらぬ誤解を受けることが少なくありません。ちょっと前まで、受験生からは「パソコンで絵を描く学科」、「ゲームをデザインする学科」と思われていたり……。おそらく…

『貧困の民族誌-フィリピン・ダバオ市のサマの生活』青山和佳(東京大学出版会)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 かつての人文・社会科学系の研究者は、「読むこと」を中心に研究した。それが、メディアの発達…

『なにもかもなくしてみる 』太田 省吾(五柳書院)

→紀伊國屋書店で購入 「劇評家の作業日誌(13)」 今回は昨年から読み進めていた本書をとりあげよう。 太田省吾氏は、1960年代以降の現代演劇を代表する劇作家・演出家であり、77年に発表された出世作『小町風伝』以来、「沈黙劇」で知られる前衛的…

『Bestiary』Barber, Richard(TRN)(Boydell & Brewer)

→紀伊國屋書店で購入 「ベスティアリ」は13世紀に流行した動物譚のひとつ。イギリスで書かれた。著書の目的は自然科学の探求では毛頭ない。創造主が創りあげた自然の姿を通じて、原罪から逃れられない人間という存在を、神の体系内部へ誘うというもの。善性…

『いわいさんちへようこそ!』岩井俊雄(紀伊國屋書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「子どもと遊ぶこと」へのレッスン」 ちいさな女の子が、窓辺でほおづえをついている。すぐ前にはぼうぼうと延びたミニトマト。結わえられた手製のウエルカム・ボードが風に揺れると、そこが「いわいさんち」だ。 「いわいさん」とは…

POP工房『マグナムサッカー』(ファイドン)

→紀伊國屋書店で購入 地球はサッカーの惑星だ!ペレもマラドーナもアフリカの子どもたちも等しくボールを蹴っている。酔っぱらいのイングランド人もチュニジアのヒゲのオッサンも等しく応援に声をからす。ウェンブリーのピッチにもルワンダの大地にもサッカ…

POP工房「本町店大プッシュの作家の一人! 黒川博行特集!」

→紀伊國屋書店で購入 ●絶好調★黒川博行の浪速節!「我が家では父娘で楽しんでいます。」(25才・女性)●くろかわひろゆき [黒川・博行] (1)男性作家。大阪在住。 (2)彼の大阪弁の巧みさは芥川龍之介の日本語のそれに値する。テンポよく展開する物語は、…

POP工房『戻り川心中』(連城三紀彦、光文社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 読み終えた時、ため息が出ました。 ぜひ読んでください。これが名作です。 花を中心とした、恋情とミステリーの短編集…と、ひと言でまとめてしまうには、あまりにも美しく、あまりにも文学的。 「色街には、通夜の燈がございます。」 私…

POP工房『俺が近所の公園でリフティングしていたら』(矢田容生、小学館)

→紀伊國屋書店で購入 当店が本書を読んで感想を小学館に送り、返ってきた返事がこちらです。 --------------- Subject:Re:●●さん ありがとうございます。 Date:Mon.20 Feb 2006 ●●さま 楽しんで頂けたのなら幸いです。 私も「電車男より泣ける!」には興ざ…

新宿南店仕入だより~3月(『80対20の法則を覆すロングテールの法則』ほか)

→紀伊國屋書店で購入 【登場する新刊】 ●『80対20の法則を覆すロングテールの法則』(菅谷義博、東洋経済新報社) ●『セイヴィングキャピタリズム』(R.G.ラジャン&L.ジンガレス、慶應義塾大学出版会) ●『持続可能な発展の経済学』(H.E.デイリー、みすず…

『ファンタジー万華鏡』 井辻朱美(研究社)

→紀伊國屋書店で購入 ファンタジーの紹介と翻訳で著名な著者によるファンタジー論である。 前著の『ファンタジーの魔法空間』は『ナルニア国ものがたり』や 『ゲド戦記』、『クローディアの秘密』のような古典的な作品が中心だったが、今回の本は『ハウルの…

『乱世を生きる……市場原理は嘘かもしれない』橋本治(集英社新書)<br>『『脳』整理法』茂木健一郎 (ちくま新書)

→「乱世を生きる……市場原理は嘘かもしれない」紀伊國屋書店で購入 →「『脳』整理法」紀伊國屋書店で購入 今年も入学試験シーズンが終わりましたが、一般大と違って美大には実技試験という独特の試験があります。これは何種類かのモチーフを用意して鉛筆デッ…

『東アジア共同体-強大化する中国と日本の戦略』小原雅博(日本経済新聞社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 東アジア共同体が、現実味を帯びて議論されるようになった。その最大の障壁は、日中歴史問題だ…

『エキスパートナースとの対話――ベナー看護論・ナラティブス・看護倫理――』パトリシア・ベナー(早野真佐子訳)(照林社)

→紀伊國屋書店で購入 「物語の共同体としての看護師集団」 私は現在、東京で定期的に行なわれている「セルフヘルプ・グループとナラティヴ研究会」で、いわゆる世話人の役割をしています。研究会といっても数人のこじんまりしたものなのですが、自分の研究上…

『ヘブライズム法思想の源流』鈴木 佳秀(創文社)

→紀伊國屋書店で購入 「旧約聖書の謎解き」 旧約聖書の『申命記』でモーセが語る重要な言葉がある。「イスラエルよ、聞け。われわれの神ヤハウェは唯一なるヤハウェである。あなたはあなたの心を尽くし、精神を尽くして、力を尽くして、あなたの神ヤハウェを…

『菩提樹はさざめく』三宅幸夫(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 クラシック音楽には「歌曲」というジャンルがある。シューベルトの《冬の旅》という連作歌曲のタイトルは、ご存じの方も多いだろう。たとえ《冬の旅》は「?」でも、《菩提樹》となると「!」だろうか。《菩提樹》は、実は《冬の旅》に…

『FINAL FANTASY IXアルティマニア』Studio BentStuff(スクウェア・エニックス)

→紀伊國屋書店で購入 出る。ついにあれが。オフィシャルアナウンスから1年以上、体感的にはもう3年は待たされている気がする、あれだ。 FF12。 媒体がROMからCD、DVDに遷移して以降、発売日の前々日から店頭に並ぶ必要はなくなった。今でも開店前から蓙を敷…

『戦後60年を問い直す』『世界』編集部編(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 本書は、1945年12月に創刊された雑誌『世界』が、ともに歩んだ戦後60年を、「改めて「戦後」の…

『Italy and Its Invaders』Arnaldi, Girolamo /translated by Shugaar, Antony (Harvard University Press)

→紀伊國屋書店で購入 ルキノ・ヴィスコンティの映画「山猫」は、ガリバルディ上陸時期の元スペイン国王派シチリア貴族の斜陽を描いている。バート・ランカスター演じる男爵と、成り上がり者の娘を演じるクラウディア・カルディナーレが踊るダンスのシークエ…

POP工房『君に書かずにはいられない ひとりの女性に届いた400通の恋文』(中丸美繪,白水社)

→紀伊國屋書店で購入 僕はあらゆる表現形式の中で、手紙という手法が一等好きだ。手紙というのは、フィクションとノンフィクションのせめぎ合い、相手のことを慮ればこその全身全霊の文章表現! という醍醐味がなんとも魅力的なのだけれど、当然、他人様のこ…