書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

紅野謙介

『巨大バッタの奇蹟』室井 尚(アートン)

→紀伊國屋書店で購入 「昆虫が世界を救う?」 教授会がめずらしく早く終わったとき、同僚で現代中国文学が専門の山口守さんが「せっかく本もってきたのに読む間がなかったよ〜」とぼやきながら、妙に赤と銀のカバーのめだつ本を見せてくれた。バルーンでバッ…

『戦後批評のメタヒストリー』佐藤 泉(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「戦後」観を再審に付す」 いよいよ憲法改定が政治のスケジュールにのぼってくるようだ。憲法を守るか、改めるか、いずれにしても戦後60年の歴史をどうとらえるかが焦眉の課題だといえる。しかし、戦後とひとくちに言っても単純ではな…

『妖精と妖怪のあいだ 評伝・平林たい子』群ようこ(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 別れた夫から「妖怪」といわれた女性作家がいる。平林たい子である。小説『妖怪をみた』を書いたのは小堀甚二。戦前、プロレタリア文学の代表的な雑誌『文芸戦線』同人のひとりである。平林たい子は林芙美子の同時代人。小堀と同様に、…