書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

伊藤智樹

『日々コウジ中』柴本礼(主婦の友社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「高次脳機能障害について知りたい人のために」 今年度から私は、富山県高次脳機能障害支援センターからの依頼を受けて、ピア・サポート事業にアドバイザーの役割で関わっています。具体的には、高次脳機能障害をもつ人のご家族…

『反コミュニケーション』奥村隆(弘文堂)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「よい」コミュニケーションをイメージする功罪」 「私はコミュニケーションが嫌いだ。できれば人と会いたくない。ひとりでいたい。電話もメールもしたくない・・・・」。こんな意外な(あるいは、図星を突いた)言葉で、この…

『ドイツと日本「介護」の力と危機――介護保険制度改革とその挑戦――』斎藤義彦(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ドイツを「鏡」に日本の介護保険制度を考える」 2000年に導入された日本の介護保険は、ドイツの例を参考にしたと言われています。もともとドイツは、1880年代に、帝政ドイツの宰相ビスマルクの主導によって、世界に先駆けて三…

『「若者」とは誰か――アイデンティティの30年』浅野智彦(河出書房新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「若者」をだけで語らないために」 いつもよく耳にしてきた「最近の若者は・・」という言葉。あまりに素朴なものは「そりゃ年寄りの愚痴ってもんでしょ」などと退けることができても、もう少し洗練された議論であればどうでし…

『年金制度の正しい考え方――福祉国家は持続可能か』盛山和夫(中央公論社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「年金制度をきちんと考えるために」 年金制度について、最近、指導する学生の中に関心を寄せる者が出てきています。また、先日、私が所属する富山大学人文学部の1年生を対象とした授業で、特別企画として、日本年金機構スタッ…

『エッチのまわりにあるもの――保健室の社会学』すぎむらなおみ(解放出版社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「無条件の承認でもなく、まったくの否定でもなく」 この本の著者であるすぎむらなおみさんは、高等学校に勤務する養護教諭(いわゆる「保健室の先生」)です。定時制高校に赴任し、なかなか心を開いてくれなかった生徒たちと文…

『発達障害 ヘンな子と言われ続けて――いじめられてきた私のサバイバルな日々――』高橋今日子(明石書店)

→紀伊國屋書店で購入 「発達障害当事者の語り手になるということ」 21世紀に入ったころから「発達障害」という言葉が人口に膾炙するようになってきています。教育を専門とする人や実際に経験した人などを除けば、内容的にはまだなじみの薄い言葉かもしれませ…

『医療におけるナラティブとエビデンス:対立から調和へ』斎藤清二(遠見書房)

→紀伊國屋書店で購入 「医療者と患者の新しい関係に向けて」 以前の当ブログで(2008年04月30日)、近年、医師の経験と勘による判断よりもむしろ疫学的根拠(エビデンス(evidence):詳しくはさきほどの2008年04月30日のブログをご覧ください)を重視する医…

『ギャンブル依存との向きあい方:一人ひとりにあわせた支援で平穏な暮らしを取り戻す』認定NPO法人ワンデーポート編(中村努・高澤和彦・稲村厚)(明石書店)

→紀伊國屋書店で購入 「支援の場を<ずらす>こと」 大学院の修士課程に入って研究をスタートさせようとしたころ、私はアルコール依存の人たちによるセルフヘルプ・グループ(自助グループ)に参加し始めました。そこでは、参加者たちが自分の体験を開示し語…

『医療的ケアって大変なことなの?』下川和洋編(ぶどう社)

→紀伊國屋書店で購入 「生きるための医療的な行為をめぐる1990年代の動き」 この本のタイトルは「医療的ケアって大変なことなの?」という問いかけになっています。この問いかけ自体が、この本全体の主張を示しているのですが、それはまた現在の社会の姿を映…

『困っているひと』大野更紗(ポプラ社)

→紀伊國屋書店で購入 「ユーモアあふれるエッセーから社会を垣間見る」 今回は、いま話題の難病体験記を取り上げてみたいと思います。著者の大野更紗さんは1984年生まれ。上智大学フランス語学科に進学後、ビルマ(ミャンマー)難民との出会いから、民主化運…

『きよしこ』重松 清(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「吃音のことをまったく知らない人が吃音の悩みに安心して接近できる素材」 この本の著者である重松清さんは、著名な小説家にして著作多数。その作品を読んだことがある方も多いのではないかと思います。私は、吃音(きつおん=どもるこ…

『小児がんを生きる――親が子どもの病いを生きる経験の軌跡―― 』鷹田佳典(ゆみる出版)

→紀伊國屋書店で購入 「病いの語りへの実直な応答」 今回は、最近出版された、小児がんをもつ子供の親に関する研究をご紹介します。この本は、著者の鷹田さんが、2009年度に提出した博士論文(法政大学大学院)を、内容的にわかりやすい筋道になるようまとめ…

『摂食障害の語り――<回復>の臨床社会学――』中村英代(新曜社)

の臨床社会学――" title="摂食障害の語り――の臨床社会学――" src="http://bookweb.kinokuniya.co.jp/imgdata/4788512513.jpg" border="0" /> →紀伊國屋書店で購入 「<人々による>回復の物語を際立たせる:社会学のナラティヴ・アプローチにできることのひと…

『老い衰えゆくことの発見』天田城介(角川学芸出版)

→紀伊國屋書店で購入 「「どっちつかず」であることの生き難さ」 今回は、当ブログで以前(2010年9月)ご紹介した天田城介さんの最新刊をご紹介します。 この本は、天田さんの著作『の社会学』を、多くの人が読めるように書き直す意図で作られたものです。…

『在宅ケア「小規模多機能」―認知症やひとり暮らしを支える』土本亜理子(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「24時間・365日の安心」の理想と現実」 以前の書評(2010年9月21日 注1)で「小規模多機能サービス拠点論」についてふれたことがありますが、今回は、そのようにして導入された小規模多機能(注1)が現在どのような情況にあるのか…

『病院の世紀の理論』猪飼周平(有斐閣)

→紀伊國屋書店で購入 「現代社会が待望する医療史研究、ようやく現る!」 以前当ブログで取り上げたアーサー・フランク『傷ついた物語の語り手』(2006年6月)について、「回復の物語(the restitution narrative)」が私たちにとって基本的な概念であるこ…

『考える力が身につく社会学入門』浅野智彦編(中経出版)

→紀伊國屋書店で購入 「パワーアップした社会学入門テキスト」 今回は、以前の当ブログ(2005年11月 )で取り上げた『図解 社会学のことが面白いほどわかる本』のリニューアル版とでも呼ぶべき本をご紹介します。 前作『図解~』について、「あまり根気のな…

『<当事者>をめぐる社会学――調査での出会いを通して――』宮内洋・好井裕明編著(北大路書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「当事者」を語ることの意味」 「この苦しみは体験した者でなければわからない」。これは、私が研究の過程で知り合ったある難病を持つ方が、専門職を前に体験談を語った中で出てきた言葉です。一瞬、「あなたたちは『非当事者』であり…

『自立と支援の社会学――阪神大震災とボランティア――』佐藤恵(東信堂)

→紀伊國屋書店で購入 「現場に学び、の核心に迫る」 今回は、いつも研究会でご一緒させていただいている先輩の佐藤恵さんの本を紹介します。 この本で取り上げられているのは、阪神大震災以後のプロセスにおいて、とりわけ障害者や高齢者といった(いわゆる…

『障害受容再考――「障害受容」から「障害との自由」へ――』田島明子(三輪書店)

→紀伊國屋書店で購入 自分自身がぼんやりと感じた違和感に徹底してこだわりなさい、と社会学ではしばしば教えられます。というのも、そうした違和感は、日々の生活の中では流されてそのままにされがちですが、実は非常に重要なテーマにつながることが少なく…

『老い衰えゆく自己の/と自由』天田城介(ハーベスト社)

→紀伊國屋書店で購入 「根源的な生き難さへの問い」 さまざまな研究やドキュメンタリーなどで「素晴らしい介護の実践」や「これからの社会の切り札となる介護」が紹介される時、何か違和感を覚えることはないでしょうか。それは、確かにそれが素晴らしいもの…

『性同一性障害のエスノグラフィ――性現象の社会学――』鶴田 幸恵(ハーベスト社)

→紀伊國屋書店で購入 「医療化とカテゴリー、アイデンティティ」 自らの性別について何らかの違和感を覚え、「男/女」の間を越境して、自分にあった性の状態を求める人がいます。このような人たちのことは、かつては「異性装趣味」とか、あるいは「変態」と…

『ALS――不動の身体と息する機械』立岩真也(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「<負け戦>を語ること――ALSをめぐる社会批判の視座」 今回はALSを社会学的に考えるうえでは基本書となる一冊を取り上げます。著者である立岩真也さんは、1960年生まれの社会学者で、現在は立命館大学大学院(先端総合学術研究科…

『看護とケア――心揺り動かされる仕事とは――』三井さよ(角川学芸出版)

→紀伊國屋書店で購入 「患者の生き方と<ぶつかりあう>専門職」 著者の三井さよさんは、看護職を中心に対人援助に関わる人たちへの調査研究を行っている社会学者です。私と問題関心の持ち方が近く、大学院生時代から研究会仲間としてお付き合いさせていただ…

『逝かない身体――ALS的日常を生きる』川口有美子(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「エスノグラフィーに触発される気づき――ALSのコミュニケーション論――」 私は2007年から、ALSの患者会である日本ALS協会の方々とも縁あってお付き合いをさせていただいています。今回はその一人である川口有美子さんの本をご紹介しま…

『質的データの2次分析――イギリスの格差拡大プロセスの分析視角――』武田尚子(ハーベスト社)

→紀伊國屋書店で購入 「2次分析を通してみえる魅力的な世界」 社会学の(おそらく他の学問分野でも)質的研究においては、自分自身でデータを<もぎとってくる>ことの大切さが、しばしば言われます。実際、苦労してフィールドノーツを書き溜めたり、インタ…

『生存学 Vol.1』立命館大学生存学研究センター編(生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「研究者でもあり支援者でもある、ということ」 この本は、文部科学省によって国際的にも先端的で優れた成果が期待できるものとして採択された「グローバルCOEプログラム」(創成拠点:立命館大学)の成果報告として刊行されたもので…

『よくわかる国際社会学』樽本英樹(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋書店で購入 「「もうあと少し…」の知的好奇心に応える入門書」 世界地図や地球儀をみると、世界中の陸地が国境と線で区切られ、必ずどこかの「国」に属するようになっています。また、それぞれの領域に住んでいる人は「~人」という国民としてとら…

『「ひきこもり」への社会学的アプローチ――メディア・当事者・支援活動――』荻野達史・川北稔・工藤宏司・高山龍太郎(編著)(ミネルヴァ書房)

→紀伊國屋書店で購入 「社会問題を無条件に「解決すべきもの」ととらえるのではなく、かといって支援に無関心でもいられない」 近年「ひきこもり」という言葉を頻繁に耳にするようになってきました。例えば、数年前にニート支援を卒業論文のテーマにした学生…