書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-09-01から1ヶ月間の記事一覧

『昭和を騒がせた漢字たち』 円満字二郎 (吉川弘文館)

→紀伊國屋書店で購入 『人名用漢字の戦後史』の円満字二郎氏が昨年出した本である。『青い山脈』の「變文」騒動から幻の煙草「宙(おおぞら)」まで、漢字がからんだ事件をとりあげ、背景にある国民の文字意識を自由と平等の相克という視点から考察している…

『漢字は日本語である』 小駒勝美 (新潮新書)

→紀伊國屋書店で購入 昨年、新潮社から『新潮日本語漢字辞典』というユニークな漢和辞典が出た。普通の漢和辞典は漢籍を読むための辞典で、用例も漢籍からだが、この辞典は『日本語漢字辞典』を名乗ることからわかるように、日本語に使われる漢字を調べるた…

『G8サミット体制とはなにか』栗原 康(以文社 )

→紀伊國屋書店で購入 今年、7月7日から9日まで、北海道洞爺湖でG8サミット(主要国首脳会議)が開催された。1999年、シアトルのWTO会合が大規模な抗議行動によって中止に追い込まれて以降、2001年、イタリア・ジェノバ、2003年、フランス・エヴィアン、2005…

『「悪なき大地」への途上にて』ベアトリス・パラシオス(現代企画室〔発売〕)

→紀伊國屋書店で購入 ボリビア・ウカマウ集団の映画プロデューサー、ベアトリス・パラシオスが、1979年から2003年までに書き綴った18の文章をまとめた遺稿集である。ベアトリスは、2003年7月、病気治療でキューバに向かう飛行機で亡くなった。自身初の監督作…

『戦争の記憶-日本人とドイツ人』イアン・ブルマ(ちくま学芸文庫)

→紀伊國屋書店で購入 昨年の夏、本書とともにフランクフルト行きの飛行機に乗るつもりだった。都合でドイツ行きはかなわなかったが、本書を携えてドイツを旅行すれば、ドイツがより理解できるだけでなく、自国である日本のことを再考するいい機会になると思…

『アフリカ・レポート----壊れる国、生きる人々』松本仁一(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「アフリカはいつもここにある、それなのに」 この世界がアフリカを必要とし、アフリカのおかげでどんなに潑溂としたおもしろく楽しい場所になっているかは、ちょっと身のまわりを見わたしてみただけでわかると思う。われわれの日々の生…

『漢字を飼い慣らす』 犬飼隆 (人文書館)

→紀伊國屋書店で購入 日本語が漢字という難物とどのようにつきあってきたかをふりかえった本で、硬い言葉で言えば日本語表記史である。「漢字を飼い慣らす」とは言い得て妙だが、著者の発明ではなく、恩師の河野六郎氏が講義でよく使っていた言いまわしだそ…

『アーティスト症候群』大野左紀子(明治書院)

→紀伊國屋書店で購入 「アーティストをやめた人間によるアーティスト論のおもしろさ」 約20年にわたってアーティスト活動をして、5年前にアーティストを廃業した、元アーティストによる「アーティスト論」である。 カタカナ職業の現実を知りたいという人…

『日本浄土』藤原新也(東京書籍)

→紀伊國屋書店で購入 「日本の滅び行く風景を、しずかに切り取った」 『東京漂流』で衝撃を受けてから、藤原新也さんの著作を読み継いできました。私のように藤原さんの読書体験をもった共有できる人が多いことを嬉しく思います。(ちなみに拙著『顔面漂流記…

『甲骨文字に歴史をよむ』 落合淳思 (ちくま新書)

→紀伊國屋書店で購入 甲骨文字を手がかりに殷代の社会を読みといた本であり、同じ著者の『甲骨文字の読み方』につづく本である。 殷代を知るには甲骨文字の知識が不可欠だが、甲骨文字を学ぶのにも殷代の知識が必要である。『甲骨文字の読み方』には殷代の社…

『甲骨文字の読み方』 落合淳思 (講談社現代新書)

→紀伊國屋書店で購入 ケータイ絵文字の影響だろうと思うが、最近、文字に対する関心が高まっているらしく、『ヒエログリフを書こう!』とか『マヤ文字を書いてみよう読んでみよう』、『パソコンで楽しむ愛と友情のトンパ文字』といった、およそ実用になりそう…

『シュメル―人類最古の文明へ』 小林登志子 (中公新書)<br />『よくわかる!古代文字の世界』 飯島紀 (国際語学社)<br />

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 世界最初の文字は古代メソポタミアで生まれた。文字を生みだしたのはシュメル人だが、どんな系統の言語を話すどんな民族かはわかっていない。現在にいたるまで中近東の一大勢力となっているセム語系の民族や、イン…

『レトリックのすすめ』野内良三(大修館書店)

→紀伊國屋書店で購入 「レトリック的読書の勧め」 国際バカロレア(International Baccalaureate)という世界共通の大学入学資格試験がある。その日本語学科を私は担当しているが、重要な筆記試験の一つにコメンタリーというものがある。問題文はこうなって…

『文字はこうして生まれた』 シュマント=ベッセラ (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 文字の起源論として、現在、最も有力なトークン仮説を、提唱者であるシュマント=ベッセラ自身が一般向けに語った本である。トークン仮説はフィッシャーの『文字の歴史』や菊池徹夫編『文字の考古学』などに言及されているが、本格的な…

女子垂涎の、新書館 “フォア・レディース” シリーズ!

新書館 “フォア・レディース” シリーズをご存知ですか? その名の通り、「レディーのための」、素敵な本たち。 文学性と芸術性を兼ね備えていて(つまり、可愛いくって、ためになる!)、’60年代~’80年代初頭まで続いた人気シリーズでした。 当店にも当時、…

『Stuff White People Like : The Definitive Guide to the Unique Taste of Millions』Christian Lander(Random House)

→紀伊國屋書店で購入 「白人の好みってのはどうなっているのだろう」 日常に少し疲れを感じ、寝転びながら気楽に読める本が欲しくなった。そんなときに買ってみたのがこの『Stuff White People Like』だった。ニューヨーク・タイムズのノンフィクション部門…

『最高学府はバカだらけ』石渡嶺司(光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「アホ大学、バカ学生の真相」 私の学校はパリにあるインターナショナル・スクールだが、毎年十数名の日本人高校生が卒業していく。その8~9割が日本の大学に進む。大した数ではないが、やはり進路指導には気を使う。特に最近、大学の変…

『阪急電車』有川 浩(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 「やられた〜 週末の午後を一気に読ませる 池上線でも大井町線でもなく」 ロンドンでは季節によらず、行くたび毎にロールスロイスをよく見かける。人がよく見かけると感じるのは、車の総数の何%以上がロールスロイスだからだという報告…

『琴剣(ことつるぎ)のちゃんこ道場』琴剣淳弥(べースボール・マガジン社)

→紀伊國屋書店で購入 スポーツファンは多かれど、根っからの相撲ファンは少数派だろう。年齢層も比較的高いに違いない。その昔に若貴時代といわれた、若乃花・貴乃花兄弟が活躍していた時代はともかく、このところの角界の勢いは今ひとつだ。テレビのワイド…

宇野亜喜良グッズ入荷!

宇野亜喜良さんデザイン「AQUIRAX」より、グッズが入荷いたしました! 宇野さんの、詩情あふれる華麗なイラストが施された品々・・・ぜひ手元に置いて愛でたい逸品です。 左より、扇子(3,000円)・カップ&ソーサー(5,250円)・プレート(3,150円)・ブロ…

『磯崎新の「都庁」 戦後日本最大のコンペ』平松剛(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 磯崎新の「大風呂敷」を包む平松剛の「大風呂敷」 本扉に描かれた○と×と△と□と|と。左手人差し指を掲げてウインクしたロボットの顔のようなこの図柄はなんだ? ページをめくってなかほど第8章「遡行」の小見出しに「○×△□ どうして? プ…

『ジャーナリズム崩壊』上杉隆(幻冬舎)

→紀伊國屋書店で購入 「大手メディアの「ジャーナリズムごっこ」を暴露した軽薄な文体で書かれた硬派ノンフィクション」 最近ではテレビの報道番組(バラエティ番組かな?)にも出演されるようになったジャーナリスト上杉隆さんの最新刊。実は、私、上杉さん…

『Giorgio Morandi 1890-1964: Nothing Is More Abstract Than Reality』Renato Miracco(Skira)

→紀伊國屋書店で購入 「具象なのに抽象」 (また抽象です。) 16日からニューヨーク・メトロポリタン美術館でジョルジョ・モランディ展がはじまった(12月14日まで)。モランディがすごいのか、特別展がすごいのかよくわからないが、作品を一同に集め…

『遠きにありてつくるもの』細川周平(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「かつてない方法で移民文化を考察する」 細川周平には『サンバの国に演歌は流れる』と『シネマ屋、ブラジルを行く』というブラジル移民の文化を考察した二冊の著書がある。『サンバの国に演歌は流れる』は移民にとっての歌を、『シネマ…

『わたしの戦後出版史』松本昌次(トランスビュー)

→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](40) この本の著者・松本昌次氏は、わたしにとってあまりに身近な方なので、書評の対象とすることに当初ためらいをおぼえた。だがここで語られている出版史や編集者の生き方は、わたし個人の事情や抑制をはるかに超…

本間健彦 「新宿プレイマップ」

あの時代の新宿は燃えていた。1960年代の新宿である。都市の歴史にも青春時代があるとすれば、あの頃の新宿はまさに青春期だったのだろう。 当時の新宿地図 (クリックすると拡大) 「新宿プレイマップ」34号 (1972年4月号)より 当時、新宿は<若者の街>…

『戦後日本と戦争死者慰霊-シズメとフルイのダイナミズム』西村明(有志舎)

→紀伊國屋書店で購入 現実に起こっている問題が複雑になればなるほど、基礎研究者の役割は大きくなる。著者の西村明は、「本書は、戦争死者という概念を採用し、戦死者と戦災死者をともに視野に含めることによって、靖国問題に終始しがちな慰霊をめぐる問題…

新宿関連推薦本

[選者]本間健彦 金沢望郷歌 五木寛之 文藝春秋(1992-04) ISBN: 9784167100278 407円 (税込) ※品切れ フォークソングの世界 三橋一夫 音楽之友社(1971) ※品切れ 昭和ジャズ喫茶伝説 平岡正明 平凡社(2005) ISBN: 9784582832723 1,890円 (税込) 日計…

『Hell&#8217;s Angel: The Life and Times of Sonny Barger and the Hell&#8217;s Angels Motorcycle Club』Ralph “Sonny” Barger(HarperCollins Children&#8217;s Books)

→紀伊國屋書店で購入 「ヘルズ・エンジェルズたちの軌跡」 僕はこれまでにアメリカ大陸を三度車で横断した。どの横断も約一週間で達成したので、早い方だと思う。この三度の横断が旅行や遊びではなく、すべて引っ越しだったので時間的に余裕がなかったのだ。…

『南方熊楠日記2(1897‐1904)』南方熊楠(八坂書房)

→紀伊國屋書店で購入 毎日、とても長い距離を歩いた。お金がなかったせいだ。キュー植物園からアールズ・コートまで、或いはノッチンガムヒルから大英博物館、翌日はバタシーからブルームズベリーへと。ほとんどの場合、深夜遅く、へべれけに酔いながら。わ…