2007-01-01から1年間の記事一覧
→紀伊國屋書店で購入 リュシアン・ルバテの『ふたつの旗』と『残骸』は、フランス文学史から抹殺された対独協力(コラボ)作家の作品を翻訳した「1945:もうひとつのフランス」というシリーズから刊行されたが、本書は同シリーズの別巻としてまとめられた本…
→紀伊國屋書店で購入 第二次大戦勃発前後の二年間のフランスを極右の立場から描いた年代記である。執筆したのは極右雑誌「ジュ・スィ・パルトゥ」の編集幹部であり、二十世紀文学の至宝というべき『ふたつの旗』を書いたリュシアン・ルバテである。 フランス…
→『ふたつの旗〈上〉』を購入 →『ふたつの旗〈下〉』を購入 『ふたつの旗』という作品もリュシアン・ルバテという作家も日本ではほとんど知られていないが、これはフランス最高の教養人によって書かれた至高の恋愛小説である。 知られていないのには理由があ…
→紀伊國屋書店で購入 「まばたきで綴られた精神の自由」 表題のごとく、重く狭苦しい潜水服と化した自分の身体に閉じ込められたまま、一言も発することができない著者は、左目のまばたきだけで言葉を綴りつづけた。意識は鮮明なまま、まったく身動きできない…
→紀伊國屋書店で購入 「高学歴ワーキングプアはまだ眠っている」 高学歴ワーキングプアとは、博士などの高学歴をもちながらも、大学職員になれず、フリーターなどの非正規雇用で生活費を稼ぐ者たちのことを指す。貯金はなく、将来の展望も描けないから、結婚…
→紀伊國屋書店で購入 「揺るぎのない螺旋の軸」 あるとき、著者は日々たまってゆくばかりの「書くべき便り」を対処するための妙案を思いつく。《THE ONE & ONLY MAIL ON 》。アルファベットのゴム印でそう記し、日付を捺した葉書で、一日に唯一の便りを書く…
→紀伊國屋書店で購入 ロラン・バルトもバフチンもいろいろ そうだなあ、詩人の平出隆さんとか写真家でキュレーターの港千尋さんあたり、色について書くとこうなるかな、というエッセー。お二人は偶然多摩美の同僚ということだが、「感性」ばかりか相当な「知…
→紀伊國屋書店で購入 氷点下の世界、人と自然の接するところ 写真を写真展で見るのと、写真集で見るのとは別の体験である。これは絵画展と画集のちがいとは異なる。ホンモノと複製品という線引きが出来る絵画とちがって、写真の場合はどちらも複製品である。…
→紀伊國屋書店で購入 「一服の清涼剤。高校生らしさとは?」 「高校生」、「女子高校生」、「男子高校生」という言葉に何を思い浮かべるだろうか。爽やかさ、若さ、無謀、夢、希望……人により種々のイメージが浮かんでくるだろう。だが実際に「女子高校生」と…
→紀伊國屋書店で購入 「秒針に追われる強烈な生活それでもジェリー・ルイスは人が来ればいつも間抜けな顔をする」 水曜早朝、キューバのC首相の御子息と都内のホテルで朝食を取りながら会談。本人、側近、大使、そして私の4人。キューバの難しさ、科学立国…
→紀伊國屋書店で購入 主に聞き取り調査に基づく、4社の大企業で働く人々の職業経歴と職業能力についての重厚な報告である。 第1章と第2章は、それぞれコマツと島津製作所において「一品生産」に従事する、職人的性格の強い労働者を取り上げている。個々の…
→紀伊國屋書店で購入 「大江と長嶋」 さすが「文学界の長島茂雄」と言われるだけのことはある。今年になって二回ほど大江健三郎氏の講演を聴く機会があった。5月は勤務先の大学で「知識人となるために」という、どちらかというと学生を対象にしたテーマ。今…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](33) 2007年8月をもって新国立劇場「演劇部門」の芸術監督の任期を終えた栗山民也氏が初めての著書を刊行した。題名もずばり『演出家の仕事』。7年にわたる彼の激務の一端を知るに格好の書だ。わたしも昨年、同名の…
→紀伊國屋書店で購入 「貧乏階級のマリアの爽快な闘争記録---でも、勝てるのか?」 気がつくと、格差社会の本ばかり読んでいる。今回も、前回で紹介した『若者の労働と生活世界』、『新しい階級社会 新しい階級闘争』に続いて格差モノだ。 プレカリアート…
→紀伊國屋書店で購入 「「説明モデル」から「物語」へ」 前回(2007年10月)の当ブログで、A.クラインマンの「説明モデル(explanatory model)」概念をご紹介しました。この概念を一歩進めて「物語」という言葉を導入したのが、バイロン・グッドです。 私…
→紀伊國屋書店で購入 シンプル・イズ・ベストを「発犬」させる一冊 ただ目に付いた本をてんでんばらばらに取り上げるのなら何もぼくがやることもない当書評空間なので、マニエリスムや、かつて「専門」ということになっていた英文学畑、技術史、文化史と何冊…
→紀伊國屋書店で購入 「映画化も予定されているブッシュ政権との戦いのメモワール」 2006年7月、元アメリカ外交官だったジェセフ・ウィルソンは『ニューヨーク・タイムズ』紙にブッシュ政権がイラク戦争に対する情報操作をおこなっているという記事を寄…
→紀伊國屋書店で購入 「アンダークラスの怒りを鎮めることは可能か」 講演の仕事のために移動中の博多行きの新幹線で本書を読んでいた。その日に、佐世保で乱射事件が発生、翌日「犯人が自殺」という朝日の号外を読みながら浜松に戻った。 本書の後半では、…
→紀伊國屋書店で購入 「蛍を追う」 折々に気がかりになる作品というものがある。わたしの場合、織田作之助の「蛍」がそれで、数年に一回は読み直す。20頁にも満たないその短編を最初に読んだのは、随分と昔のことで、昭和22年に中央公論社から出た織田作之助…
→紀伊國屋書店で購入 タイモン・スクリーチにこんな芸があったのか 「その筋」のお偉方に「青い目の人間に江戸の何がわかる」などと言われながら、『江戸の身体(からだ)を開く』で新美術史学の新しい「黄金時代オランダ絵画」観とのアナロジーによる江戸「…
→紀伊國屋書店で購入 今日はある講義の年内最終日。人が少なかった。昨年は「あいのりスペシャルと時間がバッティングしたのでしかたがないな」と自分を慰めたのだが、今年はそんなめぼしい番組もない。単に人気がないだけである。さみしい。さみしいときに…
→紀伊國屋書店で購入 夢の美術館から戻ってきた感じ その世界のバイブルとなった『奇想の系譜 又兵衛‐国芳』の著者辻惟雄氏を中心とした日本美術史研究の新風・新人脈で、江戸260年の長大な展望を試みた。『奇想の系譜』は1970年刊(初出)。当時、マニエリ…
→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 NHKハイビジョンで、ペ・ヨンジュン主演の「太王四神記」がはじまった。物語の舞台は紀元前…
→紀伊國屋書店で購入 都心で山登りなんてまさかと思う。 著者の中村みつをさんは子供のころから野山に遊び、中学で東京・奥多摩の川苔山、高校で谷川岳、そしてヒマラヤ、アルプス、パタゴニアにも脚を伸ばすホンモノの登山家だ。なのに都心で「山」と付く地…
→紀伊國屋書店で購入 「マルコ・ポーロのワンダー・トラベル」 1271年、17歳のマルコ・ポーロは父親と叔父と共にイタリアのヴェニスから東方を目指す旅にでた。その旅の様子を描いた書物『東方見聞録』はマルコ・ポーロが口述し、ピサ出身の文筆家ルス…
→紀伊國屋書店で購入 「ひとりの書き手の誕生を祝う」 赤木智弘という若い書き手の単行本デビュー作である。デビュー前からネットで彼の紡ぎ出す言葉を何度か読んできた。podcastingラジオでその肉声も聞いた。彼が初めて商業雑誌『論座』に寄稿した『「丸山…
→紀伊國屋書店で購入 そっくりピクチャレスクと呼べば良い 今年2007年夏、芸大美術館で広重の《名所江戸百景》展を見た。しばらく洋ものアートの展覧会ばかりだったのでえらく新鮮に感じたが、同時に久方ぶりに、18世紀末から19世紀劈頭にかけて洋の東西がTh…
→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,575円) 叫びそうになった。しかし、喉の奥で詰まった。涙が浮かんだ。でも、流れ落ちはしなかった。そんな驚愕とやるせなさ。青空の下、誰のために駆け抜け、何のためにペダルに力を込めるのか。犠牲という存在に、そ…
→紀伊國屋書店で購入 (角川書店/税込1,575円) この本を読むにあたっての注意事項。 1.電車内で読む場合は細心の注意を払ってください。 2.読中、鏡を見て笑い皺が増えていても本にあたらないでください。 3.読後、「ビバご都合主義!」と叫ぶのは心の…
→紀伊國屋書店で購入 (中央公論新社/税込1,785円) ちっぽけなちっぽけなネズミ3匹。その3匹が安住の地を求めてさまざまな困難を乗り越えてゆく物語。その塵のような生命を通して、視点はぐーっと広がり果てのない宇宙へと移っていきます。ふと見上げた空…