書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『ブ活はじめます―すべての女に捧げる「気持ちいい!」ブス活動のススメ』安彦麻理絵(宝島社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「女性たちがすべてをさらけ出す・・・それがブ活(ブス活動)」 「実はどんな女の中にも「ブス」はいる。 世の中の、あらゆる女が、自分の中に「ブスを飼っている」のだ。」(P16) 衝撃的だが、でもどことなく納得のいく指…

『エンニオ・モリコーネ、自身を語る』エンニオ・モリコーネ、アントニオ・モンダ/中山エツコ訳(河出書房新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ロングショットとクローズアップ」 本書は2009年9月から、約10か月間、計15回にわたって行われたエンニオ・モリコーネとアントニオ・モンダの対話記録である。映画音楽にとどまらず、現代音楽(本文中では「絶対音楽」)の高…

『エプロンおじさん 日本初の料理研究家 牧野哲大の味 』高原たま 編著(国書刊行会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 男性料理研究家のさきがけ、NHK「きょうの料理」には1962年から出演する最古参の先生である牧野哲大さん。学生時代にテレビで牧野氏を知り、その後、氏を訪れては、料理のもてなしを受けつつ、その話に耳をかたむけてきた著者が…

『反逆する華族 「消えた歴史」を掘り起こす』浅見雅男(平凡社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「”赤化華族”とは何だったのか」 著者は、すでに戦前の華族について何冊も本を書いており、私もその一冊はかつてある新聞で取り上げたことがあるが、本書(浅見雅男著『反逆する華族―「消えた昭和史」を掘り起こす』平凡社新書…

『n次創作観光―アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性』岡本健(NPO法人北海道冒険芸術出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「新しいリアリティ、新しい観光の可能性」 かつて、アメリカのダニエル・ブーアスティンは『幻影(イメジ)の時代』において、現代社会を批判的に捉えた「疑似イベント論」を展開した。その要点は、いうなればマスメディアが作…

『さとり世代―盗んだバイクで走りださない若者たち―』原田曜平(角川書店)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「何事にも、そこそこに入れ込んで、そこそこに満足する若者たち」 さとり世代とは、今日の若者たちの特徴をうまく言い表したフレーズだと思う。もちろん「若者たち」といってもその内実は多様だし、ひと括りにすることに慎重な…

『第九夜』駱英(思潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「近づきすぎないのが肝心」 こういうわけのわからないエネルギーに満ちた詩に出会うのは久しぶりなので、何だかお礼に差し上げるものもなくて、おたおたしてしまう気分である。原文は中国語だが、その勢いを見事に日本語に移し…

『戦争記憶の政治学-韓国軍によるベトナム人戦時虐殺問題と和解への道』伊藤正子(平凡社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 本書を読んで、韓国は日本の植民地支配や従軍慰安婦問題など、日本にとっての負の歴史を持ち出して批難・攻撃する資格はない、などと考える人は、これからのグローバル化した協調社会のなかで生きていくことを、自分自身で難し…

『Sの継承』堂場 瞬一(中央公論新社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「IT社会のクーデター」 戦後日本における、もどきをふくめて革命らしきものをひろうと、まず1950年代の火炎瓶闘争や山村工作隊(農民オルグ)を遂行した日本共産党の武闘革命路線。この革命路線は1955年の六全協(日…

『日本の起源』東島誠・與那覇潤(太田出版)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「変わらない、変われない日本」のための歴史的思考力」 日本史は、「わたしたちの歴史」だから、かえってややこしい。巷に「歴史好き」はけっこういても、「日本人」であることに誇りが持てる「歴史」だから好き、という人が…

『文字の食卓』正木香子(本の雑誌社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「絶対文字感」 「文字の食卓」は、Webサイトで連載されていたときから、たびたび立ち寄っては読むのを楽しみにしていた。文字に対する感覚がちょっと変わっていて、こんな面白い人がいるんだなあ、といつも感嘆しながら味わっ…

『On the Noodle Road : From Beijing to Rome, with Love and Pasta』Jen Lin-Liu(Riverhead Books)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「麺の発祥地を求めて旅したシルクロード」 麺(パスタ)は13世紀にマルコ・ポーロが中国からイタリアに持ち帰ったもののひとつと言われているが、それは本当なのか。それとも、ヨーロッパではそれ以前にすでにパスタを食べて…

『歴史をかえた誤訳』鳥飼玖美子(新潮文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「一語の誤訳が世界を変える!」 「もしたった一語の日本語を英訳する仕方が違っていたら、広島と長崎に原爆が投下されることはなかったかもしれない」 歴史に「〜たら」や「〜れば」は禁句だと言われるが、この一文の持つ重み…

『 食魔―岡本かの子食文学傑作選』岡本かの子 大久保 喬樹・編(講談社文芸文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 いのちの糧を超えて 菊萵苣と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようである。その蔬菜が姉娘のお千代の手で水洗いされ笊で水を切って部屋のまん中の台俎板の上に置かれた。 […] 妹娘の…

『オーケストラは未来をつくる マイケル・ティルソン・トーマスとサンフランシスコ交響楽団の挑戦』潮博恵(アルテスパブリッシング)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「MTTとサンフランシスコ響の挑戦」 マイケル・ティルソン・トーマス(しばしばMTTと略称される)は、レナード・バーンスタイン亡きあと、アメリカのクラシック音楽界を担ってきた鬼才のひとりだが、本書(潮博恵『オーケストラ…

『水の旅 日本再発見』富山和子(中公文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 先人の暮らしと水とのかかわり合いの跡を各地に訪ねたルポルタージュ。皇居のお堀の水はどこからやってくるのか。伊勢神宮の式年遷宮と森林伐採の関係、ことに興味深いのは、日本列島の山々を覆う森林が、祖先たちによっていか…

『国民語の形成と国家建設-内戦期ラオスの言語ナショナリズム』矢野順子(風響社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ラオス人民民主共和国、通称ラオスは、東南アジアに位置する共和制国家。国土面積は236,800平方㎞。内陸国であり、北に中華人民共和国、西にミャンマー、東にベトナム、南にカンボジア、タイと国境を接する。首都はヴィエンチ…

『国語教科書の闇』川島幸希(新潮社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「もう『羅生門』にはうんざりですか?」 教科書の闇! 国語教科書ビジネスに多少なりとかかわりのある筆者としては、ついドキドキしてしまうタイトルである。闇、暗部、腐敗、狂気、毒婦、猟奇的殺人……つい想像がふくらんでし…

『ロスト・トレイン』中村弦(新潮文庫)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「幻の廃線跡を走る汽車」 中村弦の『ロスト・トレイン』を読み終えた時、宮崎駿の引退が悔やまれた。まだ「風立ちぬ」は観ていないが、宮崎は種々の作品で、人と自然との関わり方について、問題を提起してきた。『ロスト・トレ…

『微生物ハンター、深海を行く』高井 研(イースト・プレス)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 この本で一番好きなシーン。それは、前のめりに持論を語る若き研究者に、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の理事が言う、この台詞です。 「僕はキミの目がとても気に入っている。僕のような年寄りになると目を見ればだいたい…

『ギャンブラー・モーツァルト』ギュンター・バウアー(春秋社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 古今の偉人たちの人生は、とかく神格化されてしまい勝ちだ。自らに課した課題のために他のあらゆることを犠牲にし、天から与えられた使命に没頭する姿が描写され、人並みはずれた集中力について語られる。こうして一旦誰もが納…

『重版出来!』松田奈緒子(小学館)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 1巻も面白かったのです。本を「売る」人々の熱い仕事ぶりが真摯に描かれていて、だからこそ重版がかかるシーンはとても感動的で、主人公もかわいくて、「面白いから読みなよ!」と人に勧めたりもしました。 しかし、2巻に、こ…

『戦争のるつぼ-第一次世界大戦とアメリカニズム』中野耕太郎(人文書院)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「国籍の異なる12名のヨーロッパ人歴史家たちが何度も討議を重ね、その上で共同執筆されたヨーロッパ史の教科書」である『ヨーロッパの歴史』(ドルーシュ編、東京書籍、1998年)では、第一次世界大戦後のヨーロッパに訪れた新…

『経済人類学』『栗本慎一郎の全世界史』『栗本慎一郎最終講義』栗本慎一郎

→紀伊國屋ウェブストアで購入 →紀伊國屋ウェブストアで購入 →紀伊國屋ウェブストアで購入 2013年の前半、経済人類学者・栗本慎一郎氏の新刊が立て続けに三冊上梓された。栗本氏のデビュー作で復刊となる『経済人類学』、「最後の一冊」で「遺書」という『栗…

『ポピュリズムを考える―民主主義への再入門』吉田 徹(NHKブックス)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「ポピュリズムは民主主義の鏡」 ポピュリズムは、アメリカの人民党やアルゼンチンのペロニズムなどのような農村社会から工業社会に移転するときに農民や労働者にあらわれる不利益と不平等の不満を震源地にしてでてくる過度期の…

『Captain Outrageous』Joe R. Lansdale(Vintage Books)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「おとぼけ二人組の痛快アクション小説」 アメリカの北東部の大学生たちは、三月の学期の途中に二週間ほどあるスプリング・ブレーク(春休み)には、気の合った仲間たちとフロリダに遊びに行くのが一種の伝統となっている。 大…

『酒運び―情報と文化を結ぶ交流の酒』ほろよいブックス編集部・編(社会評論社)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「酒が織りなす物語」 わたしはふだん自分からはめったに飲酒をしない。というより、酒を飲みたいと思ったことがほとんどない。体質的に飲酒ができないという部分が大きいが、食事中も水かお茶があればよく、楽しいことがあって…

『シャルル・ドゴール 民主主義の中のリーダーシップへの苦闘』渡邊啓貴(慶應義塾大学出版会)

→紀伊國屋ウェブストアで購入 「フランスの「偉大さ」を演出した権力者の生涯」 シャルル・ドゴール(1890-1970)のバランスのとれた評伝(渡邊啓貴著『シャルル・ドゴール』慶應義塾大学出版会、2013年)が出版された。ドゴールは、「救国の英雄」や政党政治を…

エルマーのぼうけん/ルース・スタイルス・ガネット

エルマーのぼうけん ルース・スタイルス・ガネット ⇒紀伊國屋書店ウェブストア 2013/4/13 1:52:38 人間科学部人間科学科 3年生・男性 あなたが過去に贈られた本で、印象に残っているものは何ですか?書名と著者をご記入ください。 エルマーのぼうけん/ルー…

おやつがほーい どっさりほい/梅田俊作・梅田佳子

おやつがほーい どっさりほい 梅田俊作・梅田佳子 ⇒紀伊國屋書店ウェブストア 2013/4/18 0:22:40 人間科学部人間科学科 3年生・女性 あなたが過去に贈られた本で、印象に残っているものは何ですか?書名と著者をご記入ください。 おやつがほーい どっさりほ…