書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

『哲学史講義』上中下 ヘーゲル (河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 哲学史をまとめて読んでいるうちに哲学が発展していくというストーリーに異和感をもつようになり、発展臭さがあまりない堀川本や熊野本や年表形式で発展ストーリーと無縁な『年表で読む哲学・…

『年表で読む哲学・思想小事典』 フォルシェ- (白水社)

→紀伊國屋書店で購入 哲学史関係の記事を年代順にならべた「読む事典」で、紀元前2300年頃のエジプト神学の誕生からドゥルーズ=ガタリの最後の共著『哲学とは何か』(1991)までをカバーしている。 書店で本書を手にとった時、たまたま開いたのが529年にユ…

『西洋哲学史』 岩崎武雄 (有斐閣全書)

→紀伊國屋書店で購入 学生時代に読んで感銘を受けた本である。本書は1952年に初版が出て以来、半世紀以上にわたって版を重ねているロングセラーであり、簡にして要を得た哲学史として定評がある。今回、書店で健在なことを発見し、おおと声をあげた。 本書は…

『西洋哲学史』上 熊野純彦 (岩波書店)<br />『西洋哲学史』下 熊野純彦 (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 ヘーゲルは『哲学史講義』の最初の部分で哲学史は単なる私見の陳列室であってはならず、発展する体系でなければならないと述べているが、ヘーゲル的な絶対精神が説得力を持たなくなった今日、発展ストーリーで整理…

『エピソードで読む西洋哲学史』 堀川哲 (PHP新書)

→紀伊國屋書店で購入 哲学者には奇人変人が多く、紀元前三世紀には珍奇なエピソードを集めたディオゲネス・ラエルティオスの『ギリシア哲学者列伝』のような無類に面白い本まで書かれたが、本書はもしかしたらその近代版を意識したのかもしれない。堀川哲氏…

『反哲学入門』 木田元 (新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 本書は題名からして『反哲学史』とかぶっているが、中味も完全にかぶっている。異なるのは『反哲学史』が大学の講義を元にしているのに対し、本書は哲学とは縁遠い若い女性編集者に語った録音を原稿に起こし、新潮社のPR誌『波』に連載…

『反哲学史』 木田元 (講談社学術文庫)<br />『現代の哲学』 木田元 (講談社学術文庫)

→紀伊國屋書店で購入 →紀伊國屋書店で購入 『反哲学史』は立花隆&佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方』(文春新書)で波多野精一の『西洋哲学史要』とともに哲学史の名著として紹介されていたが、すごい本である。こんなにわかりやすく、しかも核心を素手で摑み…

『アウシュヴィッツ以後の神』H.ヨーナス(法政大学出版局)

→紀伊國屋書店で購入 「いま、神はどこに」 2009年の収穫といえる哲学書の翻訳を、一つ紹介しておこう。「神」について語ることは、現代いかにして可能か。二十世紀を生き抜いた哲学者ハンス・ヨーナス(1903-1993)は、本書に収められた晩年のエッセイ三篇…

『貧民の帝都』塩見鮮一郎(文春新書)

→紀伊國屋書店で購入 「格差問題を政策の問題としてではなく、「ほどこしの文化」の問題として考えるために」 いま日本社会を生きていると、貧困や所得格差の問題は社会政策の問題であり、税金分配の仕組みを合理的な制度に改革することが、その解決方法の全…

『西洋哲学史要』 波多野精一 (未知谷)

→紀伊國屋書店で購入 立花隆&佐藤優『ぼくらの頭脳の鍛え方』(文春新書)で木田元の『反哲学史』とともに哲学史の名著として紹介されていた本である。 波多野精一は『基督教の起源』(岩波文庫)、『原始キリスト教』(岩波全書)で知られている宗教哲学者…

『The Help』Kathryn Stockett(G.P. Putnam’s Sons)

→紀伊國屋書店で購入 「60年代南部での白人と黒人の絆を描いた作品」 アメリカ国内でもボストンで大学時代を過ごし、ニューヨークで多くの時間を過ごした私にとって、アメリカ南部は「もうひとつのアメリカ」と言っていいほどの文化的距離感がある。 しか…

『弱者の兵法』野村克也(アスペクト)

→紀伊國屋書店で購入 「例えば ダニエル・クレイグ 」 例えばアカデミー賞授賞式に招待され、または何かのプレミア試写会でも良い。黒塗りのリムジンで乗り付け、夫婦でも夫婦でなくても同伴で、男性は女性を女性は男性をエスコートしながらされながらレッド…

『精神分析臨床を生きる―対人関係学派からみた価値の問題―』サンドラ・ビューチュラー 著 川畑直人・鈴木健一 監訳 椙山彩子・ガヴィニオ重利子 訳(創元社)

→紀伊國屋書店で購入 「臨床への信念」 サンドラは、長い黒髪と大きな黒い瞳を持つ、身の丈150センチ足らずの小柄な女性だ。けれども、こぢんまりとした佇まいからは、地に足の着いた確固たる意気が伝わってくる。殊のほか印象的なのは、彼女が語る時の真剣…

『大人にはわからない日本文学史』高橋源一郎(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「「私」は小説のOS」 今日はクリスマスイブだ。日本はさぞかし賑やかなことだろう。フランスのクリスマスは家族が集まって過ごす日なので、丁度日本の大晦日のような雰囲気になる。美味しいものを食べて楽しむが、騒ぎはしない。その代…

『竹内好――アジアとの出会い』丸川哲史(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 河出ブックス創刊第3弾、来年1月上旬発売のタイトル2点をご紹介しています。 2点目は、丸川哲史さんの『竹内好――アジアとの出会い』です。 丸川さんは、明治大学政治経済学部准教授(東アジア文化論・台湾文学)。20世紀東アジアの視点…

『逝かない身体』川口有美子(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「難病患者は生きるのに忙しい」 日本のALS患者と家族のために戦っている、尊敬する友人、川口有美子さんの著作です。 ALSの日本語の医学名は、筋萎縮性側索硬化症。全身の筋肉が衰えて、最後には呼吸停止にいたる難病中の難病です。病…

『初夜』イアン・マキューアン 松村潔訳(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「乗り遅れた60年代」 これだけ主人公をおちょくっておいて、しっかり感動的な小説として仕上げてしまうのだからたいしたものだ。原題はOn Chesil Beachだが、邦訳は『初夜』。このややストレートな邦題が示す通り、エドワードとフロ…

『夢は書物にあり』出久根達郎(平凡社)

→紀伊國屋書店で購入 「本が学校!」 パリの「蚤の市」は有名だが、それとは別に至る所でガラクタ市が開かれることがある。「Brocante」と呼ばれるものだが、本当に「ガラクタ」が多い。家の倉庫から持って来たらしい鍋の蓋や、煤けたグラス、古食器類等、何…

『変わるバリ 変わらないバリ』倉沢愛子・吉原直樹編(勉誠出版)

→紀伊國屋書店で購入 「本書は、グローバル・ツーリズムの中で大きく変容し、さらに多様化しつつあるバリを、新しい視点で捉えなおしてみようという発想から始まった」と、「はじめに」の冒頭で書かれている。そして、わたしは本書から、今日のバリの姿は、…

『心霊の文化史――スピリチュアルな英国近代』吉村正和(河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 ご無沙汰いたしました。 今月は、長山靖生『日本SF精神史』 、飯沢耕太郎『写真的思考』の2点を刊行いたしました。ぜひお手にとってご覧ください。 また、創刊ラインナップの橋本健二『「格差」の戦後史』が、昨日の朝日新聞書評にて…

『日本開国』渡辺惣樹(草思社)

→紀伊國屋書店で購入 副題に「アメリカがペリー艦隊を派遣した本当の理由」とある。帯には「捕鯨はたんなる口実だった!」と大きく印刷されている。江戸幕府の鎖国政策が19世紀になって解かれ、日本開国、そして明治維新に至った日本史を解析するために何か…

『Superfreakonomics 』Steven D. Levitt & Stephen J. Dubner(Harperluxe)

→紀伊國屋書店で購入 「経済学の視点でおもしろい結論を見せてくれる本」 シカゴ大学にスティーブン・D・レヴィットという経済学の教授がいる。ハーバード大学を卒業し、マサチューセッツ工科大学で博士号を取った秀才だ。レヴィットはこれまで数多くの論文…

『花泥棒』細江英公・写真 鴨居羊子・人形 早坂類・詩(冬青社)

→紀伊國屋書店で購入 「芸術ではなく商売」。下着デザイナー・鴨居羊子はかつて、自分のしていることはアートではなくビジネスなのだとくりかえし強調した。しかし、もともと画家か彫刻家になりたいと夢みた彼女の創造力は、会社という組織が大きくなるにつ…

『神と仏の出逢う国』鎌田東二(角川学芸出版)

→紀伊國屋書店で購入 「神仏でにぎわう年末年始に!」 まさに「師走」の慌しさが追いかけてくる。しかし、これを乗り切れば、一年間おつかれさまでした、となる。 年末年始は、にわかに神とか仏が気になるシーズンだ。クリスマスという異国の神のお祭りもあ…

『フィリピン関係文献目録(戦前・戦中、「戦記もの」)』早瀬晋三(龍溪書舎)

→紀伊國屋書店で購入 研究分野の発展には、専門研究書・論文だけでなく、研究・教育工具の充実も必要である。歴史学のような基礎研究では、とくに重要な意味をもつ。研究・教育工具が充実している分野は、研究をはじめやすく、研究者の数も多い。そして、研…

『酒肴酒(さけさかなさけ)』吉田健一(光文社文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「酒仙のエスプリ」 近年これほど痛快かつ爽快な本を読んだことはない。吉田健一は吉田茂の息子であり、そのおかげで幼少期よりイギリス、フランス、中国等で暮らしている。当時としては珍しく、和食以外のものを詳しく知っていた。ケン…

『第四間氷期』安部公房(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「私たちははたして未来に適応できるか?」 安部公房の作品との出会いは、札幌のジャズ喫茶だった。当時高校2年の私は、始めてジャズ喫茶に足を踏み入れた時、その空間に魅了されて、以後毎日のように通う事になってしまった。そんな時…

『斜陽』太宰治(新潮社)

→紀伊國屋書店で購入 「湯水のように」 「英米文学へのお誘い」という地味な授業を、同僚の江川さんとのリレー方式でやっている。対象は1~2年生。筆者が『斜陽』と『明暗』をやると言ったら、江川さんも「お前がそう言うならしょうがねえ、俺も『ノルウェ…

『Tokyo Vice : An American Reporter on the Police Beat in Japan』 Jake Adelstein(Pantheon Books )

→紀伊國屋書店で購入 「アメリカ人記者が追った日本の裏側世界」 私は夜眠る時に、ラジオを聞きながらでないと眠れない。もう20年以上続いている習慣で、最近はポッドキャストで日本の放送も聞いているが、たいていは地元ニューヨークのラジオ局WNYCのトー…

第1位『ヘヴン』川上未映子

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/1,470円) 読んだ後しばらくたっても、登場人物たちの言葉が胸にうずまいている。人の数だけ「世界」はあって、しかし生きてゆく「世界」はただひとつだということ。それが圧倒的に悲しい。初の長編作にして、生きる悲しみと…