書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

川口有美子

『わたしは目で話します』たかおまゆみ(偕成社)

→紀伊國屋書店で購入 「伝えることをあきらめない」 著者のたかおまゆみさんとは何度かお会いしたことがある。都内のALS患者さんのお宅に見学に来られた時、同席したのが最初の出会い。車椅子から立ちあがって、まだ歩けていた頃だ。彼女のブログの愛読者に…

『神様からの宿題 』山本育海 (著), 山本智子 (著), 藍原寛子 (著), 藍原 寛子 (編集) (ポプラ社)

→紀伊國屋書店で購入 「それは、みんなへの宿題」 「病気とは人生の夜の側面で、迷惑なものではあるけれども、市民たる者の義務のひとつである。この世に生まれた者は健康な人々の王国と病める人々の王国と、その両方の住民になる。人は誰しもよい方のパスポ…

『世界で1番大切なことの見つけかた PRESENT』坂之上洋子(メディアファクトリー)

→紀伊國屋書店で購入 「クリスマスシーズンを生き抜くために」 クリスマスって幼い子どものいる家庭や 一緒に何気なく過ごす人がいる人には やってきて当たり前の年中行事のひとつだろうけど、 そうではない人にとっては、 悲しく、痛く、辛い1日。 どうや…

『海のいる風景 重度心身障害のある子どもの親であるということ』児玉真美(生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「親子の間に横たわるもの」 子を授かると、新品の電化製品を購入するかのごとく、どこにも欠陥がなければいいとか、返品不可能なのだから、などと思ってしまう。重い障害のある児は生まれない方がいいとさえ言われてきた。だが、社会と…

『弱いロボット』岡田美智男(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「ひとりでできないもん、って、つぶやいていたんだけど」 ロボット開発の話かと思いきや、そうではなかった。この本は私に「違う話」をしたがっている。いや、もちろん著者の岡田美智男さんは優秀な科学者でロボットの開発者で、そして…

『愛雪〈上下巻〉―ある全身性重度障害者のいのちの物語 』新田勲(第三書館)

→紀伊國屋書店で購入 「人生はみじめさと愛で溢れている。だから素晴らしい。」 どのように生きたらよいのか。誰かに基準を示されないと価値感も気力も失われ、生きている目的が見つからない。そんな風に嘆いている世の男たちに(男ばかりではないけれども)…

『脳死・臓器移植Q&A50』山口研一郎監修 臓器移植法を問い直す市民ネットワーク編著(海鳴社)

→紀伊國屋書店で購入 「家族の同意による「脳死」臓器移植のおかしさ」 平成22年7月、改正臓器移植法により15歳未満も含めて家族の承諾で「脳死」での臓器提供が可能となった。あれから約2年。この間の15歳以上の提供は89例と急増したが、15歳未…

『俺に似たひと』平川克美(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「親の介護・・・その意味は後から遅れてやってくる」 『俺に似たひと』。最初このタイトルを見た時は昔の歌謡曲のタイトルかと思った。著者の平川克美さんはリナックスカフェの創始者で、『小商いのすすめ』など著作も多数。内田樹さん…

『自分をいかして生きる』 西村佳哲(basilico)

→紀伊國屋書店で購入 「自分の仕事を考える3日間」 あけましておめでとうございます。 今年は頻繁にブログ更新したいと思いま~す。どうぞよろしくお願いします♪ 1月8日、奈良県立図書館情報館は年明け早々面白いイベントを開催。 今年で3回目。でもこれ…

『ザ・ママの研究』信田さよ子(理論社)

→紀伊國屋書店で購入 「ママとのつきあい方を研究しよう」 新大久保の韓国焼肉屋で初めて信田さよ子さんにお目にかかった。編集者や書店の人たちが企画した熊谷晋一郎さんの退院祝いであった。たらふく食べた後、喫茶店で2時間ほどみんなでおしゃべりしたが…

『いのちの選択――今、考えたい脳死・臓器移植』小松 美彦、市野川 容孝、 田中 智彦 (編) (岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「いのちの選択・・・自分の頭で考えよう」 昨年7月13日、臓器移植法が改定になった。 これにより、日本でも脳死を一律に死と認めたことになった。そして、本人の意志はなくても家族の判断で生きている身体から臓器を提供できるよう…

『リハビリの夜』熊谷晋一郎(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「敗北の体験から会得できる官能」 著者の熊谷晋一郎は32年前に仮死状態で生まれ、脳性マヒになった。小中高と普通学校に通い、東大医学部を卒業。小児科医として病院勤務を経験し、現在は東大先端科学技術センターの特任講師である。…

『障害受容再考――「障害受容」から「障害との自由」へ』田島明子(三輪書店)

→紀伊國屋書店で購入 この土日は、京都の立命館大学で開催された障害学会第六回大会に参加していた。私はALS関連のポスター報告3題にただ名前だけ連ねて報告はせずに済んだので、とても気楽で、大半の時間を図書販売の手伝いをしながら、ロビーの片隅で通…

『ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて』生井久美子(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「苦悩には意味がある」 本書の主人公、福島智さんは幼少の頃に光を失い18歳で音も奪われ、盲ろうになった。そして、プロローグの詩にあるように、「闇と静寂の中でただ一人ことばをなくして座っていた」が、現在は東大教授。3年前の…

『33個めの石 傷ついた現代のための哲学』 森岡正博(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 「なにげないエピソードを糸口に」 バージニア工科大学でおきた無差別な銃乱射によって、32名の大学生の命が奪われた。犠牲者を悼んでキャンパスには32個の石が置かれ、花や手紙で飾られていたが、ある日、33個目の石が置かれてい…

『良い死』 立岩真也(筑摩書房)

→紀伊國屋書店で購入 「良い死?ではなくて、存在の肯定のためのあらゆる思考」 しばらく更新を怠っていました。スミマセン。患者会の仕事も、ますます忙しくなる今日この頃です。先々週は、厚労省の「終末期医療の在り方に関する懇談会」第三回目にALSの…

『ニーズ中心の福祉社会へ 』上野千鶴子+中西正司(医学書院)

→紀伊國屋書店で購入 「当事者主権の次世代福祉戦略」 2008年は波乱万丈の年だったが今まさに暮れようとしている。こうして今年を振り返ってみると、まず新年早々から中医協の診療報酬改定があった。後期高齢者医療の終末期相談支援料案が浮上し、驚いて…

『良い支援?』寺本晃久、末永弘、岡部耕典、岩橋誠治 (生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「”たいへんな人”の自立生活っ?」 昨日、中野サンプラザでJALSA講習会が行われた。富山県から患者会研究の伊藤さんも参加され賑やかな会になった。 うちの患者会では年に一度、有志が集まってこのような勉強会を開いてきたが、年…

『最期の教え』ノエル・シャトレ(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「母が予告した死までのカウントダウン」 ある著名な作家の妻がこう言った。 「車椅子の生活になるくらいだったら死んだほうがまし。」 昔、脇役女優だったこともある彼女は、注意深い自然食主義のおかげなのか、今でもその美貌は色あせ…

『ケア その思想と実践3 ケアされること』上野千鶴子編(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「ケアされる側の作法とは」 タイトルに「ケア」がつくと、売れるといわれる。 というか、ここのところ上野千鶴子さんと交流があるALS患者の橋本みさおも、本書に一章を寄せている。 それで、こないだ橋本の独居を尋ねた折に、玄関脇…

『草食系男子の恋愛学』 森岡正博(メディアファクトリー)

→紀伊國屋書店で購入 「暗い青春を送るあなたのために」 生命学の提唱者である森岡さんの著書をいくつか立て続けに読んだのは確か2000年ごろだったが、私は森岡さんが挑むのは生命倫理ではなくて、生命の哲学なのだとわかって嬉しかった。それは生命の良し悪…

『我らクレイジー☆エンジニア主義』 リクナビNEXT Tech総研 (講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「天才科学者たちの研究哲学」 ここのところ読書をしていなかったわけではなく、紹介できるような気持ちになれる本を読んでいなかったので、ブログの更新を怠っていました。 資料集めのための読書というのは、砂を噛むような時間の連続…

『現代思想』3月号~特集:患者学-生存の技法(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「患者の体験に学べ」 2月号、3月号と続けて誌上で貴重なインタビューをさせていただいた。前号はご紹介したとおり、難病治療を現代思想の切り口から中島孝医師に語っていただいたが、今回は難病対策の歴史を遡り、その創始期に活躍され…

『体の贈り物』レベッカ・ブラウン[著] 柴田元幸[訳] (マガジンハウス)

→紀伊國屋書店で購入 「ケア小説における引き算の効果」 高校の友人で最近はケア関係のライターやっている石川れい子から、『家庭の医学』を薦められたのが、レベッカ・ブラウンを知ったきっかけ。その時はただぱらっと見ただけ。正直言えば、介護事業をして…

『閉鎖病棟』帚木蓬生(新潮文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「閉鎖しているのは病棟なのか?」 久しぶりに小説を読んだ。本書を手にとったのは、確か東京駅地下の本屋だったと思う。 商売柄か、題名にまず惹かれた。『閉鎖病棟』。そしてまたちょうどその頃、厚生労働省で障害者団体の交渉があり…

『現代思想』2月号~特集:医療崩壊-生命をめぐるエコノミー(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 「QOLと緩和ケアの奪還」 20代後半の若手編集者、とても東大卒には見えない甘めのルックスだけど「できる」と評判の栗原さんから、この企画をいただいたのは昨年の暮れだったか。雑誌は集団の力を見せつける。『現代思想』2月号の特…

『潜水服は蝶の夢を見る』 ジャン=ドミニック・ボビー[著] 河野 万里子[訳」 (講談社)

→紀伊國屋書店で購入 「まばたきで綴られた精神の自由」 表題のごとく、重く狭苦しい潜水服と化した自分の身体に閉じ込められたまま、一言も発することができない著者は、左目のまばたきだけで言葉を綴りつづけた。意識は鮮明なまま、まったく身動きできない…

『母よ!殺すな』 横塚晃一[著]、立岩真也[解説] (生活書院)

→紀伊國屋書店で購入 「今一度、「愛と正義を否定する」」 「青い芝」と聞いて震え上がる人を何人も知っている。そのうちのひとりKさんは何でも若かった時に彼らの介助を買って出たが、かえってさんざん叱られて、それで障害者を見るのもいやになってしまっ…

『貧困の終焉 2025年までに世界を変える』ジェフリー・サックス、訳:鈴木主税・野中邦子(早川書房)

→紀伊國屋書店で購入 「アメリカの援助政策を批判する」 先日、大正大学で行われた日本生命倫理学会で報告してきた。表看板からして達筆な毛筆書きでも 私は怯まず、中年社会人院生の図太さを発揮してきたのだ。母の介護で身と心が引き裂かれていたのを、学…

『粗食のすすめ レシピ集』幕内秀夫(東洋経済新報社)

→紀伊國屋書店で購入 「忘れていた本当のおいしさと豊かな生活」 スピード料理の本を探していたら、妹に「はい、これ」と手渡された。 食べ盛りの息子がいつも腹ペコだから(信じられないくらい食べる!)、窓の外が暮れてくると夕餉の支度が気になりそわそ…