書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

キノベス!2008

第1位 『出星前夜』 飯嶋和一

→紀伊國屋書店で購入 (小学館/税込2,100円) 書いてくれてありがとう。そんな気持ちになれる作家はあまりいない。飯嶋和一はそう思わせてくれる数少ない作家の一人だ。4年ぶりの新作のテーマは「島原の乱」。誰もが一度は耳にした変えられぬ史実から、飯嶋…

第2位 『そうか、もう君はいないのか』 城山三郎

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,260円) かつてジョン・レノンが「my love will turn you on」と唄い、宇崎竜童がヨコハマヨコスカ中を探し歩いた女性の名がヨーコ。昭和ヒトケタ生まれの男性に「天から妖精が落ちて来た」と言わし…

第3位 『のぼうの城』 和田竜

→紀伊國屋書店で購入 (小学館/税込1,575円) 膨大な参考文献を駆使して忍城の攻防を描いた歴史小説。でも、登場人物が、これほど生き生きと書かれている歴史小説はマレです。石田三成率いる二万の軍勢を敵に回して主人公と共にイザ、籠城! 〔堺北花田店・…

第4位 『人類が消えた世界』 アラン・ワイズマン

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/税込2,100円) ありそうもない仮定だと思いますか?例えば、人類がいない世界でTVの電波は永遠に宇宙をさまよい続ける。綿密な調査と知見そして圧倒的な科学的イマジネーション。好奇心はミステリー以上です。 〔松山店・秋…

第5位 『赤めだか』 立川談春

→紀伊國屋書店で購入 (扶桑社/税込1,399円) 芸人本は数多けれど、本人が書いて、これだけ読ませるのは珍しい。あの立川談志の愛弟子、談春が遂に筆を執った。波乱の下積み時代、そして真打―成長する談春自身と、その目が捉える師匠・談志の大きさが重なっ…

第6位 『経済は感情で動く』 マッテオ・モッテルリ-ニ

→紀伊國屋書店で購入 (紀伊國屋書店/税込1,680円) 「上・並」の商品だと売れるのは「並」。だけど「特上・上・並」だとなぜか「上」を選ぶ人が増える。このように人々のお金をめぐる判断は意外といい加減で、テキトーであることを明らかにする本書。経済で…

第7位 『田村はまだか』 朝倉かすみ

→紀伊國屋書店で購入 (光文社/税込1,575円) 深夜札幌のとあるバーで四十代の男女5人が小学校のクラス会の3次会をしている。彼らは同級生の田村に会いたいためにずっと待ち続けているのだが田村は来ない。愛すべき友人田村の思い出を語りながら、個々の懐…

第8位 『くまとやまねこ』 湯本香樹実 酒井駒子

→紀伊國屋書店で購入 (河出書房新社/税込1,365円) 一緒にきょうの朝を迎えるはずだったのに。悲しみに凍りついたくまの心をとかしたのは・・・。深い喪失感に悲しむひとに、この本をそおっと手渡したい。いつの日か、それぞれのやまねこに逢えますように…

第9位 『死刑』 森達也

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/税込1,680円) 著者は3年以上かけて本稿を書き上げたという。「死刑制度」を直視しようとしながらも逡巡する姿がリアルに、独特の筆致で描かれていく。「生きる価値のない人など認めない」―導き出した結論はだからこそ、…

第10位 『ルポ貧困大国アメリカ』 堤未果

→紀伊國屋書店で購入 (岩波書店/税込735円) 全てのバランスが崩れて悲鳴がきこえてきそうだった。特にアメリカの徴兵政策、戦争についての章は人が人と思わず、人が人でない、まるで使い捨てのモノのように扱っている事実が衝撃的すぎてうまくうけとめる…

第11位 『流星の絆』 東野圭吾

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込1,785円) 「キノベス」で推薦しなくたって東野圭吾作品の素晴らしさは誰もが知ってるであろうがしかし!やっぱり面白いものは面白い!最高にドラマティックな映画を見たような読後感。極上の1冊を読まずして今年の文学…

第12位 『食堂かたつむり』 小川糸

→紀伊國屋書店で購入 (ポプラ社/税込1,365円) いただきます。美しい言葉だとおもいませんか? ヒトはなぜ、食事の前に「いただきます」というのでしょう。 「食堂かたつむり」へ行けばその理由がわかります。その日のたった一組のお客様の為に、心を込め…

第13位 『テンペスト(上)(下)』 池上永一

→紀伊國屋書店で購入(上) →紀伊國屋書店で購入(下) (角川書店/各税込1,680円) 今年はこれを読まずして何を読むか! 2段組×2冊の圧倒的ボリュームですが、面白さも並じゃありません。男と女、国と国、天と地…あらゆる境をこえて疾風怒濤に駆け巡るス…

第14位 『決壊(上)(下)』 平野啓一郎

→紀伊國屋書店で購入(上) →紀伊國屋書店で購入(下) (新潮社/各税込1,890円) 渾身の力作といえるだろう。秋葉原無差別殺傷事件に内容が酷似していると発売前から話題になったが、決して読みやすい作品ではない。それこそ書いているうちに壊れてしまっ…

第15位 『ゴールデンスランバー』 伊坂幸太郎

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,680円) 有り得ないハズの話なのに、世の中こんなことが起こってるんじゃないかと考えさせられる。読み終わった後、実際に首相暗殺が起こってるんじゃないかと、ドキドキしながら、TVを付けた程だ!そして、人間捨て…

第16位 『吉本隆明の声と言葉。』 吉本隆明 糸井重里

→紀伊國屋書店で購入 (東京糸井重里事務所/税込1,499円) 吉本さんの頭の中を、チラッと覗かせて頂く。そこに広がるのは思考の宇宙!なんだかどきどきわくわくしてきます。理解する、理解できないなんていうことよりも、まずは吉本さんの言葉で「体験する…

第16位 『世界の測量』 ダニエル・ケ-ルマン

→紀伊國屋書店で購入 (三修社/税込1,995円) これは、ファンタジーなのかはたまた伝記か?! 世界を地図に収めんと西へ向かったフンボルトと、ヨーロッパに留まったガウス。二人の偉大な知の巨人の、まるで熱にうかされたかのような情熱が伝わってくる一冊…

第18位 『深海のYrr(上)(中)(下)』 フランク・シェッツィング

→紀伊國屋書店で購入(上) →紀伊國屋書店で購入(中) →紀伊國屋書店で購入(下) (早川書房/各税込840円) 店長、申し訳ございません!仕事中もこの本の続きが気になり、休憩時間が待ち遠しくてたまりませんでした(勤続19年にして初めてです)!なんか…

第19位 『聖おにいさん1巻』 中村光

→紀伊國屋書店で購入 (講談社/税込579円) 仏教の祖である“目覚めた人”ブッダと、キリスト教の祖である“神の子”イエスが現代日本に休暇に訪れた!住まいは毎月家賃の支払いに追われるアパートをシェア。お金に細かいブッダと衝動買いの多いイエスが下界で…

第20位 『ちいさなあなたへ』 アリスン・マギ- ピ-タ-・H.レイノルズ

→紀伊國屋書店で購入 (主婦の友社/税込1,050円) 母であってもなくても生きていることに感謝したくなる本!『全米の母親が号泣』もウソではありません。一読の価値アリ! 〔名古屋名鉄店・鈴木かおり〕 →紀伊國屋書店で購入

第21位 『フロスト気質(上)(下)』 R.D.ウィングフィ-ルド

→紀伊國屋書店で購入(上) →紀伊國屋書店で購入(下) (東京創元社/各税込1,155円) ヨレヨレスーツに皺くちゃシャツ。垢の付いたネクタイに下世話なジョーク。上司の叱責には自動濾過装置が働き、寝る間も無く働くフロスト警部!!署内のドタバタを乗り…

第22位 『ザ・ロード』 コ-マック・マッカ-シ-

→紀伊國屋書店で購入 (早川書房/税込1,890円) 父と子は旅をする。ひたすら南に向かって・・・。果たしてそこに人類の希望の光はあるのか・・・!?父親の何としても子どもを守ろうとする決意に―。子どものあまりにも純粋すぎる清らかさに―。胸が痛くて、苦…

第23位 『シズコさん』 佐野洋子

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,470円) 辛いことを正直に書いた著者はスゴイと思う。自身を正当化するでも言い訳がましいこともない。その時思っていたこと、今になって思うこと、わかること全てを正直に。今までそしてこれからの私と母のことを考え…

第24位 『ボックス!』 百田尚樹

→紀伊國屋書店で購入 (太田出版/税込1,869円) 危険で過酷なボクシングというスポーツに高校生達は何故のめり込んでゆくのか。ボクシングに魅せられとり憑かれた男達に時にゾクッとする。試合毎のスピード感、臨場感がたまらない、体中に力が入りラストは…

第25位 『告白』 湊かなえ

→紀伊國屋書店で購入 (双葉社/税込1,470円) 暇つぶしでもかまいません、まず1ページをめくってみてください。私は1行目からひきつけられて、一気読みしちゃいました。「牛乳」が好きでも嫌いでも、この作品から「怖さ」を感じる人は多いはず!どうなる…

第26位 『若者を見殺しにする国』 赤木智弘

→紀伊國屋書店で購入 (双風舎/税込1,575円) 誰かに何かを伝えたい、そういう想いの結晶が本だとするなら、今年一番切実で、濃密で、複雑な想いを孕んでいるのはこの一冊だ。「希望は戦争」という叫びを発せざるを得ない著者のことを、一人でも多くの人に…

第27位 『さよなら渓谷』 吉田修一

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,470円) どこにでもいる夫婦。でも彼らにはある暗い秘密があった。その秘密が明らかになるにつれ、やるせなさが胸に募ってくる。幸せになるために一緒にいるのではない、けれど2人で生きるしかない、こんな絆があって…

第28位 『この写真がすごい2008』 大竹昭子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/税込1,995円) なんてまとまりのない写真の集まりだろう。風景、動物、人の死、くだらない生き様、そしてエロス。しかし、その一枚一枚が見る者の想像力をフル稼動させ、かき乱して行く。一日一枚の写真について必死に考…

第28位 『なぜ君は絶望と闘えたのか』 門田隆将

→紀伊國屋書店で購入 (新潮社/税込1,365円) 光市母子殺人事件で突然妻と子を奪われた本村洋さんの9年にもわたる闘いの軌跡が描かれているこの本。本を読んでこれほど泣いたのははじめてだと言える程涙した。あまりの凄惨な状況に涙し、理不尽さに涙し、そ…

第30位 『ひゃくはち』 早見和真

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/税込1,470円) 「108」。人間の煩悩の数をタイトルに冠した本書で、読者は青春時代の自分自身との邂逅を果たすだろう。何かに一心に打ち込んでいたあの季節、それでも僕らはいつだって煩悩を抱えていた。大人になった今だから…