石村清則
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「こころ」はどこにあるのか」 『カノン』、美しい響きだ。主人公である北斗=歌音の名前だが、やはり音楽の一形式である「カノン」を思い出してしまう。ある旋律を追唱していく一種の輪唱で、異なる音で始まるものもある。と…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「一色に込められた一生の姿」 いつだったか、京都の湯葉作りの名人と呼ばれる人のインタビューを読んだことがある。何十年となく毎日湯葉を作り続けている人だったが、今までどのくらい満足のできる湯葉ができましたかと問われ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「日常と非日常の狭間」 ホッとしてしまう。何故だろう。世代の近い作家だからだろうか。いや、そんなことではないはずだ。自分では気づかないうちに、その頃の文学の流れにゆったりと浸かって心地よかった時を反芻しているのだ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「官尊民卑と闘った男」 渋沢栄一には以前から興味を持っていたが、なかなかその人となりを詳しく知る機会はなかった。20年ほど前に古牧温泉を訪れたときに、そこに移設されていた旧渋沢邸を見たことがあっただけだ。書店で『渋…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「無償で無限な母の愛」 以前、なぜか小林多喜二の『蟹工船』がブームとなったことがあった。格差社会が広がり、生活保護を求める人が増え、低所得者にとって辛い世の中になったことが原因であるとの分析も見られた。授業で扱っ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「フランスに学ぶ少子化対策」 日本で少子化が問題となってすでに久しい。ところが、同じ経済先発国でもフランスでは子どもが増えている。私も長年フランスに住んでいて、子どもを持つ両親に対する保護政策が功を奏しているのだ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「印象派の画家達の光と影」 当たり前だが、画家も人間である。しかし、私たちは絵を通してしか巨匠達の姿を垣間見ることはできない。マティス、ドガ、セザンヌ、モネ、印象派の画家達は若い時を、そして晩年をどのように過ごし…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「残夢から一人の人生を読む」 年末になると、その年の10大ニュースが発表されたりして、一年を振り返ることが多い。また大晦日の前に残務整理に追われる人も多いだろう。多田富雄の『残夢整理』は、晩年に自己の一生を振り返っ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「闘うことの楽しみ」 手足の指の感覚がなくなっていく。休憩所に戻り手袋を脱ぐと、すぐにストーブにあたってはいけない。指を一所懸命こすり、感覚が少し戻ってきてから、遠くから少しずつストーブに近づいていく。酷い時には…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「日本の進むべき道を考えるための一冊」 パリでメトロに乗っていると、小銭をもらうために車内を回ってくる人によく出会う。歌を歌ったり詩を朗読したり人形劇を演じたりして何か芸を見せてくれる人もいれば、自分は失業者で今…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「一語の誤訳が世界を変える!」 「もしたった一語の日本語を英訳する仕方が違っていたら、広島と長崎に原爆が投下されることはなかったかもしれない」 歴史に「〜たら」や「〜れば」は禁句だと言われるが、この一文の持つ重み…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「幻の廃線跡を走る汽車」 中村弦の『ロスト・トレイン』を読み終えた時、宮崎駿の引退が悔やまれた。まだ「風立ちぬ」は観ていないが、宮崎は種々の作品で、人と自然との関わり方について、問題を提起してきた。『ロスト・トレ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「この奇跡は必然か?」 フランスのブルゴーニュ地方に、最高のワインを作るルロワ・ビズー女史がいる。ロマネ・コンティの共同経営者であった父の薫陶を受け、幼い頃から抜群のティスティング能力を発揮した。だが、次第に満足…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「真の日本料理とは?」 数年前から、パリは日本食ブームである。バカンス前は中華料理店だったのが、バカンスから帰ってきてみると「Restaurant Japonais」となっている事が珍しくなくなった。メニューは「寿司・焼き鳥」がメ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「作家夫婦の愛と苦悩」 高校一年生の時に、人生を変える本に出会った。ボーヴォワールの『人は全て死す』だ。不老不死を得た主人公が絶望的な不幸に陥っていく作品だが、衝撃的だった。限られた命しか持たない我々は、少しでも…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「真の愛国心とは?」 アーサー・ビナードを有名にしたエッセイ集『日本語ぽこりぽこり』は確かに面白い。大勢に順応しない健全な精神は小気味良いし、権威というものの真の姿が現れている体験談も示唆に富んでいる。例えば、彼…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「登場人物の同伴者としての作家」 石川啄木は「石もて追われ」た故郷であっても、やはり懐かしくてたまらなく、故郷の方言を聞くために上野駅に行ったことを詠んでいるが、「ふるさと」とは誰にとっても多かれ少なかれ重要な場…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「可愛い老人の物語」 日本は言わずと知れた長寿国である。しかし、同時にそれは老人大国である事も意味している。どんどん増えていく老人と比較すると、それを支える若者は逆に年年減少している。年金制度は破綻しかけ、日々の…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「人間漱石を知ることのできる一冊」 調べたことはないが、書いた作品数に比べて、書かれた評論やエッセイ等が非常に多いのが、夏目漱石の一つの特色ではないだろうか。研究書は無数に出版されているし、エッセイ等も弟子達のみ…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「テレーズは誰なのか?」 テレーズは何者だろうか。『テレーズ・デスケルウ』の序文で、作者モーリアックは「テレーズ、あなたのような女がいるはずがないと多くの人がいう。だがぼくには、あなたは存在しているのだ。」と告白…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「安楽死は必要か?」 安楽死を見届けた人を二人知っている。一人はご主人の、もう一人は友人の安楽死を経験していた。もちろん合法化されているオランダでの出来事だ。それを話してくれた二人の表情に曇りはなかった。家族や友…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「かれ」は何者なのか?」 リービ英雄はアメリカ人だが、長年日本に住んで日本語で作品を書いていることは知っていた。だが、彼が少年期に台湾に住んでいたことは知らなかった。『天安門』は5つの短編が載っている作品集だ。…
→紀伊國屋ウェブストアで購入 「「充たされない者」は誰か?」 「才能」という言葉が好きではない。これは「才」ある者の真の価値を隠してしまうからだ。あの人は才能があると言った時点で、何か納得してしまい、その人の能力に関しそれ以上考えることをやめ…
→紀伊國屋書店で購入 「今すぐ書くための文章術」 『20歳の自分に受けさせたい文章講義』では、プロのライターである古賀史健が、今までに培った文章を書くためのノウハウを、惜しげもなく披露している。非常に分かりやすく、時には思い切った切り口でヒント…
→紀伊國屋書店で購入 「二つの文化の狭間で揺れる子どもたち」 サードカルチャーキッズ(TCK・Third Culture Kids)という言葉をご存知だろうか。「第三文化の子ども」とは「発達段階のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごした子どものこと」である…
→紀伊國屋書店で購入 「作家の「フシギ」満載の楽しい一時」 本好きの者にとって、楽しい一冊だ。池内紀はドイツ文学者だが、エッセイストとしての方が名が通っている。エスプリの利いた、軽妙洒脱な文を書くが、この『文学フシギ帖』には彼の文学的趣味が存…
→紀伊國屋書店で購入 「「右岸」と「左岸」はどこで交わるのか」 辻仁成は器用な作家である。ミュージシャンであり、詩人であり、作家であり、映画監督でもある。しかし、我々はそういったカテゴリーから人を判断するために、ずいぶん「器用」な人だと思って…
→紀伊國屋書店で購入 「ハーバード生を魅了した授業!」 『ハーバード白熱日本史教室』というタイトルを見て、マイケル・サンデル教授の二番煎じかと思ったのだが、内容は全く違った。いや、学生の好奇心を刺激し、教室が受講生で溢れんばかりの授業であると…
→紀伊國屋書店で購入 「2011年を考えるための1冊」 年の瀬も押し詰まると、誰しも一年を振り返る事が多くなるだろう。『文学2012』はその一助となる。ただしここに収められているのは2011年の文芸雑誌に掲載された短編である。その意味では、振り返る一年は2…
→紀伊國屋書店で購入 「Aujourd'hui, maman est morte.」 水村美苗の『母の遺産 新聞小説』は、主人公の美津紀の母が死に、入居していた老人ホームから戻ってくる金額を、姉の奈津紀と電話で話している場面から始まる。何とも即物的な会話だと感じられるが、…