書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『輝く断片』 シオドア・スタージョン (河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 大森望氏の編纂による日本オリジナル短編集で八編をおさめる。本邦初訳は三編、単行本初収録が一編である。同じ編者の『不思議のひと触れ』はイノセントな作品が中心だったが、こちらは鬼畜系である。スタージョンにはイノセントな面と…

『不思議のひと触れ』 シオドア・スタージョン (河出書房新社)

→紀伊國屋書店で購入 大森望氏編纂による日本オリジナル短編集で十編をおさめる。早川書房から邦訳の出ていた『奇妙な触れ合い』の新訳かと思ったが、重なっているのは二編だけだ。本邦初訳は三編、単行本初収録が二編で、半分は定評のある作品の新訳だった…

『海を失った男』 シオドア・スタージョン (河出文庫)

→紀伊國屋書店で購入 若島正氏の編纂による日本オリジナル短編集である。親本は2003年に晶文社から出たが、現在は河出文庫で入手可能。本書の成功のおかげで他の本の出版や復刊が実現したわけで、スタージョン・ルネサンスの端緒を作ったといえる。 八編をお…

『やさしいベイトソン』野村直樹(金剛出版)

→紀伊國屋書店で購入 「生物+環境こそ生存の単位、それが生き延びる、考える、進化する」 グレゴリー・ベイトソンの思考から、しばらく遠ざかっていることに気づき、あの着想の鉱脈めがけてまた潜っていきたいと思っていたちょうどそのとき、この本に出会っ…

『ヴィーナス・プラスX』 シオドア・スタージョン (国書刊行会)

→紀伊國屋書店で購入 うっかりしていたが、ずっと絶版だったスタージョンの本が相次いで復刊され、日本で編まれたオリジナル短編集が四冊も出ていた。ついこの間まで古書店で法外な値段がついていた『スタージョンは健在なり』は『時間のかかる彫刻』と改題…

『やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!』渡邉正裕(光文社)

→紀伊國屋書店で購入 「「タブーなきジャーナリズム」という実現困難な課題をビジネス化する」 不可能を可能にしようと挑戦する人が好きだ。 本書を執筆した渡邉正裕は、私の大好きな男のひとりである。そのビジネスの舞台である、MyNewsJapanは、広告に一切…

『できそこないの男たち』福岡伸一(光文社新書)

→紀伊國屋書店で購入 「生命科学の知見を「物語る」」 『できそこないの男たち』というタイトルから、いまどきの覇気のない男たちにゲキを飛ばすような内容を想像するかもしれない。が、そうではない。生まれ出ずる以前から、いかに男たちが「できそこない」…

246表現者会議★オープニング・ピクニック

11月1日(土)、246表現者会議の皆さんが新宿本店にご来店されます。 246表現者会議 : ベルク『246表現者会議展』 ★オープニング・ピクニック 『ベルク~ルミネ・ツアー~麗奈タン・トポスビックバン!!@紀伊国屋書店』 11月1日(土)12:00ベルク出発 ベル…

『ぼくは猟師になった』千松信也(リトルモア)

→紀伊國屋書店で購入 「京都でイノシシを狩る日々の充実と真実」 痛快な本だ。ヒトとケモノの関係を、根本的に考え直させる。というよりも、そもそも都市に住む人間が日ごろまったく意識せず、完全に忘却している問いを、つきつけてくる。 本題に入るまえに…

『歴史空間としての海域を歩く』早瀬晋三(法政大学出版局)

→紀伊國屋書店で購入 「「見て、聞いて、書いた」ものが、「論文」としてまかり通っている」と批判されるようになったのは、フィールドワークが一般化した1980年代だっただろうか。批判したのは、文献・理論を重視した近代科学の手法で研究してきた人たちだ…

『The Black Hole war: My Battle with Stephen Hawking to Make the World Safe for Quantum Mechanics』Leonard Susskind(Little Brown)

→紀伊國屋書店で購入 「スティーブン・ホーキングとの争いに勝利した回想録」 宇宙のなかでぽっかりと穴を空けているようなブラックホール。中心には超密度に収縮された核となる特異点と呼ばれる点があり、この点に向かってすべてのものは吸い込まれていく。…

フリーペーパー配布中

増山麗奈さんの作品展示にあわせ、期間限定で各種フリーペーパーをセッティングしました。 ・「DUFF」 第2号 ・「月刊ナチュラル・ハイ!!」 第4号 ・「月刊アール・エコ」 Vol.2 などなど。他にもいろいろございます。 数に限りがございますので、お早め…

『大衆音楽史』森正人(中央公論新社)

→紀伊國屋書店で購入 ロンドンは世界で最も人種多様性が高い街だ。ウィンブルドン化のジレンマも随分前から叫ばれているが、その中にあって今も最もイギリスらしさを残すものといえば、クリケット、パブ、そしてrock musicだろうか。この街で聴く音楽は、そ…

『薬が効かない!』三瀬勝利(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「細菌との共存社会」 先日ギヨーム・ドゥパルディユーが急死した。37歳という若さだった。彼をご存じない方もいらっしゃるかもしれないが、フランスを代表する俳優ジェラール・ドゥパルディユーの長男といえば、お分かりの方も多いだろ…

増山麗奈さん作品紹介

麗奈タン・トポス★ビックバン!! にて展示販売している作品を、増山麗奈さんのコメント付きでご紹介いたします。 アキバの喪失感 ロスジェネ別冊~秋葉原無差別テロ事件~「敵」はだれだったのか~ 表紙原画 2枚組みセット 税込¥55,000 紙にペン、スクリーン…

『ベートーヴェンの音符たち』池辺晋一郎(音楽之友社)

→紀伊國屋書店で購入 餅は餅屋。「芸は道によって賢し」や「海のことは漁師に問え」というのも同義の格言だ。本書ではまさにその神髄を味わうことができるだろう。伝統ある不動のクラシック音楽月刊誌『音楽の友』に連載された、多忙な(=人気絶大の)作曲…

『生きる力――神経難病ALS患者たちからのメッセージ』「生きる力」編集委員会編(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「患者の語りに導かれてALSの世界へ」 ALSは、近年、ケアと生き方に関する関心と情熱が高まっている領域の一つです。ALS(筋萎縮性側索硬化症 Amyotrophic Lateral Sclerosis)というのは、神経細胞(脊髄の側索および脊髄前角…

『ケア その思想と実践3 ケアされること』上野千鶴子編(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「ケアされる側の作法とは」 タイトルに「ケア」がつくと、売れるといわれる。 というか、ここのところ上野千鶴子さんと交流があるALS患者の橋本みさおも、本書に一章を寄せている。 それで、こないだ橋本の独居を尋ねた折に、玄関脇…

麗奈タン・トポス★ビックバン!!

新宿在住のアーティスト、増山麗奈さんの作品が紀伊國屋書店新宿本店6階、美術書コーナーに登場しました。 ポストカードセット、版画、別冊「ロスジェネ」(かもがわ出版)〔紀伊國屋サザンシアターで開催されたイベントの模様を収録〕の表紙、『幼なじみの…

『この国の経済常識はウソばかり』トラスト立木(洋泉社)

→紀伊國屋書店で購入 「現実の直視するために、いったん経済常識を捨てて、本書を読むべし」 アメリカ発の金融危機がすさまじいスピードで拡大しています。 「金融危機が加速している」と書いてもなんのことやら分かりません。 「アメリカ発の金融危機の影響…

『フランシス・F・コッポラ』村上龍、他(エスクァイアマガジンジャパン)

→紀伊國屋書店で購入 「私はただ単に忙しくしているだけで何も達成していない気がしてならない しかし今なら「地獄の黙示録」の映画評をもっと上手く書ける気がする」 私の顔写真がある機関誌に載って、それもプロのカメラマンが何十枚と撮って、その中から…

『小銭をかぞえる』西村賢太著(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「劇画時代の私小説」 「私小説界の救世主」などとも言われる西村賢太については、この「書評空間」でも阿部公彦氏がこの作家の本質を見事に切り取っているので、筆者が屋上屋を架す必要はないような気がした。ただ、西村については、芥…

『McMafia』Misha Glenny(Alfred a Knopf)

→紀伊國屋書店で購入 「裏社会の経済グローバル化」 ニューヨークにいる僕のところに時々おかしなメールが送られてくる。送り主はアフリカに住むという人からだ。彼あるいは彼女は、アフリカの大富豪または王の息子や妻ということだ。最近父または夫が死んで…

『乱視読者の英米短篇講義』若島正(研究社)

→紀伊國屋書店で購入 「明晰な情事」 大学生にお薦めの批評入門第二弾。文学とのお付き合いの方法がわからないという人には、是非手にとってもらいたい一冊である。いわば恋愛指南の書。 著者はこの何十年、文学という異性とさまざまな形で付き合ってきた。…

『コドモダマシ-ほろ苦教育劇場』パオロ・マッツァリーノ(春秋社)

→紀伊國屋書店で購入 「まあ、まんず、一杯。」 「反社会学講座」でノックダウンされている私は、 店頭でこの本を迷いなく手に取りました。 正直言うと、ちょっぴり読むのが怖い気持ち。 だって、だって、なんたって、「コドモダマシ」。 どんな痛いことが書…

『時が滲む朝』楊逸(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 「故郷とは?」 パリには外国人が多い。そして、パリで活躍する外国人も多い。天安門事件の頃、中国から亡命してきた若きリーダーもいた。早熟の才能を持ち活躍する中国人作家シャン・サもいる。その頃はシャイヨー宮から程近い所に住ん…

書を持て、街へ出よう! ― リトルマガジン「街から」入荷!

リトルマガジン「街から」(街から舎)が入荷いたしました! 当フェアの小冊子にもご寄稿いただいている本間健彦さんが編集&発行されているミニコミ誌です。 街の細い路地に分け入っていくかのような、わくわくするトピックが盛り沢山の誌面。 一般の書店で…

『狩猟と編み籠―対称性人類学〈2〉』中沢新一(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 宗教なかんずくキリスト教と映画の類似性を考察する書物であるが、そうした題材としてなら誰しも思いつく定番名画のいくつか<「十戒」(デミル)、「奇跡の丘」(パゾリーニ)、「ラルジャン」(ブレッソン)>に続いて、おこちゃま映…

『ECDIARY』 ECD著 (レディメイド・インタ-ナショナル)

→紀伊國屋書店で購入 「あるラッパーの思想と行動」 1979年、ニューヨークのソーホーで、「キッチン」という、文字どおり台所を改装したライブ・スペースで、奇妙なパフォーマンスを見た。アームの先にポータブルのレコードプレイヤーをつけた、形はエレキギ…

森山大道グッズ入荷!

森山大道さんのアートグッズが入荷しました! 森山大道の写真がプリントされたTシャツ(5,040円)。 「Tシャツはメディアである」もとい、Tシャツはアートである! インパクト大!なクリアファイル(368円)・ポストカード(157円)・リストウォッチ(5,880…