2007-06-01から1ヶ月間の記事一覧
→紀伊國屋書店で購入 邦訳で600頁を越えるセリーヌの伝記である。作家の伝記にどれだけの意味があるかという見方もあるが、セリーヌの場合、作品がきわめて自伝的であることもあって、本名のルイ・フェルディナン・デトゥーシュの生涯と二重写しされる形で読…
→紀伊國屋書店で購入 「「格差」って言うな!」 「格差」論が喧しい。 ワーキングプアやネットカフェ難民が「発見」され、新自由主義下の不平等が問題となっている。しかし、社会的不平等は近年になって突然、顕在化した問題ではなく、バブル経済下の東京で…
→紀伊國屋書店で購入 「異形のキャラクターが官軍と戦う極上の大衆長編小説」 3日前に、北方謙三『水滸伝』全19巻を読み終えた。疲れましたよ。かなり。だって読み始めたら止まらないんだもん。19巻も一気読みしたくなるようなクオリティとエンターテイ…
→紀伊國屋書店で購入 「テロリストとたたかうスキャンダル屋」 本書は、昨年『週刊現代』で24回にわたって連載された「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」を単行本にまとめたものである。著者の西岡研介氏は、神戸新聞を経て『噂の真相』記者になり、…
→紀伊國屋書店で購入 「裁判で読むアテナイの生活」 古代のギリシアは完全な男社会だった。男性は家を支配し、ポリスにおいては政治の世界を独占した。女性が外出したり、戸口から外を覗いたりするのは下品なこととされていた。家の中でパンをやき、衣類を紡…
→『VOL 01』を購入 →『VOL 02』を購入 「格差」の話に飽きた人のために この1週間で2日しか仕事がないー。 トホホな話だが、こんなイントロで書評を始める人など、このサイトにはいないでしょう。 本当に飽き飽きしてしまったのだ、思想の話でも音楽の話でも…
→紀伊國屋書店で購入 生命の本質を分子レベルで問う 生き物のことを考えるようになったのは、スナネズミを飼うようになってからだ。 一匹、一匹の差が際立っていて、ひとつとしておなじものはいない。 犬猫ならそれも当然と受け流せるが、 こんなに小さな生…
→紀伊國屋書店で購入 ●「映像の地政学 ――情報戦争、世界化、メディア」 極東の四人の研究者が、中東の砂漠の島を訪れる。グローバリゼーションが進行し、米欧の主導によって世界の一元化が進展しているなか、この島は、それとは異なったオルタナティヴな視角…
→紀伊國屋書店で購入 マニエリスト皇帝のテアトロクラシー バルトルシャイティスの『アナモルフォーズ-光学魔術』は、加筆増補が行われなければ、明・清の中国宮廷における驚異の歪み鏡、歪曲遠近法の流行を記述したところで終っていたのである。こうだ。 …
→紀伊國屋書店で購入 セリーヌの二度目の妻、リュセット・デトゥーシュの回想を、彼女の舞踏の弟子であるヴェロニック・ロベールがまとめた本である。 各章の頭にはロベールによる短い紹介文がおかれているが、マリー・ローランサンの絵を思わせるような少女…
→紀伊國屋書店で購入 ●「クリティークとフィクション――哲学の批評、文学の批評、批評の批評」 表象不可能性に触れずにいられない粗雑な思考――好奇心あふれた厚顔無恥――に決して屈しないこと。蓮實重彦は「批評」をその抵抗の身振りとして提示する。蓮實によ…
→紀伊國屋書店で購入 「ですます調の小説とは?」 この小説、主人公の名が「蕗子(ふきこ)」という。相当な名前だ。加えて作中ではいつも、蕗子さん、と呼ばれている。こうなると作品そのものが名前と一体化して、言ってみれば「蕗子さん小説」というような…
→紀伊國屋書店で購入 ●「セミオ・リテラシーへ向けて ――記号のテクノロジーと意味のエコロジー」 石田英敬は、「社会における記号の生活」を研究する学としての「一般記号学」の遺産を相続しながら――それは二〇世紀的な知の体系そのもののあり方を問う身振り…
→紀伊國屋書店で購入 日本にいると、自分が日本人であるという事を意識する機会は少ないかもしれない。しかし、海外で生活するといたる所でそれを意識させられる。移民局で滞在許可書を申請する時のような正式な機会ではなくとも、マーケットで買い物中に突…
→紀伊國屋書店で購入 「メシア思想の解読の試み」 アガンベンの『アウシュヴィッツの残りのもの』は名著だったが、このタイトルにもなっている「残りのもの」という概念は、旧約聖書でも不思議に思わせる概念であった。神の王国にゆけるのは「イスラエルの残…
→『InterCommunication』No58・2006年autumn ●「無声映画と歴史 ――映画批評とメディア論」 本論「声と文字」は、蓮實重彦が、現在『InterCommunication』誌(NTT出版)に連載している「思考と感性とをめぐる断片的な考察」の第7回として書き上げたテクス…
→紀伊國屋書店で購入 マニエリスム英文学を体感 敬愛する編集工学研究所所長、松岡正剛氏の話題の『17歳のための世界と日本の見方』(春秋社)を読んで、背景にミッシェル・セールのライプニッツ研究やジル・ドゥルーズの『襞』を置きながらバロックを先駆的…
→紀伊國屋書店で購入 [劇評家の作業日誌](27) 日本演出者協会は「演出者の仕事」と題したシリーズを企画しているが、昨年、その第一巻が出た。副題は「60年代・アングラ・演劇革命」。この本はわたしも共同編集者の一人として携わり、内容構成や執筆者のリ…
→紀伊國屋書店で購入 「ボッコちゃん」の人 その後たとえSF読みにならないにしても、私くらいの世代の多くは、星新一の本を手にした時期があったと思う。 ずっとあとになって、あるときふと読み返した星の代表作『ボッコちゃん』は、どの話もなにやらもの…
→『Memoires 1983』 →『Aus den Fugen 脱臼した時間』 自死した妻のメモワール 金属のように光る馬の皮膚、ピンと背筋を伸ばしてまたがる女性、 彼女の張り出した額、凝視する鋭い視線。 ただならぬ予兆に充ちた表紙写真だ。 背後が闇で、この場所についてな…
→紀伊國屋書店で購入 ●「映画との対話 ――映像の思惟学と記憶の政治学」 十九世紀と二一世紀のはざま――映画の世紀――を批判的に解読すること。本書において浅田彰が試みるのは、松浦寿輝、蓮實重彦、鵜飼哲、四方田犬彦とともに、映画をめぐる対話、ディスカッ…
→紀伊國屋書店で購入 ●「映画的、ゴダール的 ――クリティークとクリエーション」 蓮實重彦がいうように、映画とは、いつ炸裂するともしれぬ「時限爆弾」である。映画には、撮られた時代や社会から遠く離れた地点で、時空を超えて不気味に作動し続ける時限装置…
→紀伊國屋書店で購入 「2006年度 日本新聞協会賞受賞」 インターネット配信などもあり、 情報は常に過剰供給で身辺で氾濫している。 だから、知りたくもないようなことも知らされるので、 悪いニュースに溺れるような気もしないでもない。 でも、社会の…
→紀伊國屋書店で購入 「ウッディ・アレンさん、新しい本を出してくれてありがとう」 今回紹介する『Mere Anarchy』はウッディ・アレンが久々に出版した作品集だ。 僕は以前、マディソン街と76丁目にあるカーライル・ホテル内にあるカフェ・カーライルにク…
→紀伊國屋書店で購入 「書物としての身体」 本書は、すでに流行のテーマとなった身体の歴史を、古代からルネサンスにいたる中世の時期を中心にまとめたものである。中世の身体は、「調教された身体」としての近代の身体とはことなる意味と象徴をそなえている…
→紀伊國屋書店で購入 ●「映画の孤独な擁護 ――二〇世紀を批判的に肯定する試み」 蓮實重彦は問う。二〇世紀といかなる関係を維持すべきか、国際紛争と大量虐殺の世紀といかに接すべきか、と。二〇世紀が私たちのほとんどを作り上げ、私たちのほとんどが二〇世…
→紀伊國屋書店で購入 格差社会論争が賑やかだ。経済の地球化、業績主義の導入、労働の非正規社員化などが進行するにつれて、日本は一億総中流社会から格差社会へ急転換したという説がもっぱらである。 しかし、この問題が論壇で問題視される前から、実は日本…
デザイン愛への誘惑者 極私的なことでいえば、今年2007年上半期最大の欣快事は、リトアニア出身の幻視家ユルギス・バルトルシャイティス(Jurgis Baltrušaitis)の『アベラシオン』および『イシス探求』が重版なり、久しぶりに、バルトルシャイティス著作集…
→紀伊國屋書店で購入 「トラウマと死の欲動」 心的外傷とも訳されるトラウマという概念は、最初は精神分析の世界で使われていたものだった。フロイトは第一次世界大戦の兵士たちがかかる奇妙な神経症の症状に注目した。この戦争の歴史を変えた初めての近代的…
→紀伊國屋書店で購入 猫と新歴史学 大変象徴的な標題だが、フェリシティ・ナスボーム、ローラ・ブラウン共編の『新しい18世紀』という論叢が出たのが1987年。ジェンダーの逆転とか監獄改革とかをテーマにカルチャル・スタディーズから見た18世紀各局面の総覧…