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はじまりは大阪にあり/井上理津子

はじまりは大阪にあり
井上理津子

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5/29/2013 11:11:07
工学部応用理工学科機械工学科目
4年生・男性

その本の名前と、著者の名前を教えてください。

はじまりは大阪にあり/井上理津子

その本はいつ読みましたか?

大学4回生の春

その本は、大阪とどのような関係がありますか?簡単なあらすじや設定等も含め、お答えください。

 この本は、大阪で始まって日本中、世界中に広がったものについて、どのような経緯で大阪で発祥したのか、どのような歴史があるのかについて書いた本である。そこには、大阪ならではの発想や思いが込められている。この本の中には、多くの大阪発祥のものが沢山紹介されている(例えば、即席麺、電卓、私鉄、焼肉屋、クレパス、自動車学校)が、ここでは、その中で「元禄寿司」と大学で販売されている弁当の容器にも使われている「リサイクル紙トレー」株式会社秀英「ホッかる」について紹介する。
 元禄寿司は、大阪発祥の回転寿司屋で、今では全国いたるところに存在する。寿司屋にベルトコンベヤーを導入するきっかけとなったのがアサヒビールの工場を寿司屋の大将が見学に行ったときであった。寿司屋は大繁盛だったので、注文が入ってから握っては追いつかないと考えた大将がベルトコンベヤーの上をビール瓶が流れ、ビールが次々と注がれている姿を見て、寿司屋にもベルトコンベヤーを導入したいと考えた。すると、大将は、知り合いの鉄工所の経営者に作ってもらい、翌年に完成し、元禄寿司1号店が布施にオープンした。オープンすると、お客の回転率も高く、大繁盛で、大将は大阪の真ん中で勝負をかけた。その後、回転寿司は、「日本のファーストフード」と騒がれるようになり、全国でブームとなった。大将は、「人のやらんことをやれ」をモットーに商売していた結果、回転寿司という発明を生み出したのである。
 株式会社秀英の「ホッかる」は、90%以上のリサイクル可能な環境に優しい紙で作られている弁当容器である。秀英の上田会長は、安くて便利なものがはやる使い捨ての時代に、高くて面倒だけど環境に優しいものを作りたいと、2000年の中ノ島まつり実行委員会の人と意見をやりとりしたうえで提供した。中ノ島まつりでは、前年度と比べて、ゴミ回収車が16台から13台に減って、目で見える形で成果を残している。また、「ホッかる」は、他のトレーと比べて、1つあたりの値段は高いが、ごみ処理費用のことを考えて、トータルで考えれば、決して高い商品ではない。中ノ島祭り以降、環境問題に関心のある人たちの間で注目を集める存在となり、今や多くの大学で、「ホッかる」は、弁当容器として使われている。

上に書いていただいた関係について、さらに薀蓄などがあればどうぞ(この問いは必須ではありません)

「ホッかる」は、昨年まで阪大でも売られていました。阪大生の方は、「ホッかる」は、緑色の容器と、黄色の容器2種類しかないと思っているかもしれませんが、他の大学に行くと、また、違ったデザインの容器もあり、バリエーション豊富です。

最後に、みなさんがいま通学している「大阪」という土地について、どう思われるかをお聞かせください(下宿の方は、自分の地元とどう違うか、など)。

「ホッかる」を開発した上田会長は、近年起こっているダイオキシン問題と、会長の息子さんが環境ホルモンの影響で子供を生むことができないという2つの問題から何か環境に配慮したものができないかと考えて、「ホッかる」を考案した。開発、販売していくことに際しても、自分の環境に優しいものを広めたいという想いを伝えていって、周りの人たちを巻き込んでいって、今や多くの場所で、ホッかるが販売されている。また、回転寿司を開発した人についても、自分の想いを周りに伝えることで、回転寿司のレールが完成し、店が繁盛したと思う。
 自分自身の本音そのもので発明し、可能性を信じてモノを作り上げ、自分自身の想いを周りに伝えていく商売の町「大阪」だからこそ色々な発明品を生み出すことができたのであると思う。大阪の人々は、おおらかで自由で、好奇心旺盛で、人と人との距離が近くて、だからこそ、本音で語り合うことができ、周りに想いを伝えることが容易ではないのかと思う。このようなことは、他の地域では真似できないと思うし、大阪に住んでいる者として誇りに思っている。