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『だめだこりゃ』(新潮文庫)

13dame →紀伊國屋書店で購入


「だめだこりゃ
 ・・・なんてね(前編)
 NG集で一番笑わせてくれた
 堤真一

実はマズイことになってしまいました。
ある本の書評のつもりで書き始めていたんですけど(それも見え見えですけど)ところがいつも内容のウラを取る私としては、関係する文献をリファ(読んで確認)することを常としていて(やや自慢…)でも実はミイラ取りがミイラになるじゃなくて、つまりはそのリファレンスにはまってしまったのです。
その、ある本の書評では、まず初めに上のタイトルを思いついて、いかりや長介さんパターンで次いってみよう!と思い、そして長さんの本を読んでいたら、そちらの方に感動してしまったという訳です。

長さんの話は、多分、普通には普通の文章かもしれません。でも業界に身を置くものには「来る」ものがあります。子供の頃「祖母のくれた小遣いを握りしめて、映画館のある街まで4キロの道のりをてくてくと歩いていった」というくだり、「全員集合」はリアルタイムに見たり見なかったりでしたけど、その入念なリハーサル、毎週の生放送、業界のプロはこういう休みのない努力とこういう「引き」があるんだなあと。そして後半、俳優になって、はぐれ刑事よりももっと純情派の和久指導員にさらにグッと「来る」。「最高の親父」そし て「あとがき」までも、この手の本では珍しく、プロの苦労と控え目な性格を一気に読み切りたくさせる。

多分、今の店頭の帯は「踊る大捜査線」の帯になっていると思うけど、私の持っている帯は「こんな人生でした。ひとつ、読んでやってください」とある。長さんらしい…そう書きながら、実は今、気がついたのですが、その帯、2枚重ねになっていた。珍しいレアもの、何か縁を感じる…
ドリフターズとは流れ者とか漂流ものという意味らしく、誤解されようが何があろうが「こんな人生があってもいいのだろう」とさらりと流す。「苦労話も可笑しい話もあったが、そんなものは黙って棺桶に持って行けばいい。せいぜい死ぬ前に、女房と差し向かいで酒でもやりながらポツポツとひとっ節、語ってりゃあ十分…」と。これも長さんらしいが、何か最期を予感している感じで切ない。

何か、その、自分だけ知っている苦悩、誰もが思いあたる瞬間。
私の「だめだこりゃ」には何頁にも折りが入っていて、その一つ一つを文章に起こしたいけど、やめときます。何か説明すれば説明したでやぼったくなりそうで。
そこで、そのある本の書評用に書いていた文章の前半を、この長さんに捧げます。そしてその後半を来週に続けることにします。たまにはそんな構成もいいかもしれない、と思わせる、これも長さんの人柄かもしれません。

・・・前編・・・
自慢ではないが、この手の月9連ドラをリアルタイムで見たことがない。
ただ私は、ブームが去ってからマイブームにするという時間差攻撃を得意としていて、最終回にそのタイトルの意味が分かる「HERO」も家にビデオが残っていたからで、そのストーリーのリズム感で一時期一気に見てしまったことがある。最終回は36.8%の視聴率をマーク、瞬間最高は40.6%だそうで、うちも少しはそこに貢献していたのかもしれない。
キムタクというよりは、私としては松たか子が要チェックだったですけど、大塚寧々、勝村君、阿部ちゃん、渡る世間の角野卓造とか、役どころに憎い「引き」の演出が秀でていた感じがして、名前は知らないけど、あのバー「St.George's Tavern」のマスターもいい味を出していた。
一応、宇多田ヒカルの「Can You Keep A Secret ?」も必需品で購入しました。

ところが「Good Luck」に至ると、その時期、家に帰る時間が早かったのか、割とリアルタイムだったりで、一先ず、先に山下達郎の「Ride on Time」のシングルカットを買って気分を盛り上げていた。
いやいや、そうだ、日曜劇場だったからだ。だったから、毎週見てたんだ。
これもキムタクというよりは(でもこのキムタクはキムタクっぽくて良かったけど)私としては、ベースマンの長さんが、話に聞く長さんの親父さんそのもののような味を出していて気に入っていた。(それで一時期ラガーばかり飲んでいた)
そしてあの弟とユンソナちゃん、本当のスチワーデスにいたらまずい黒木瞳、ありがち柴咲コウ、あれから写真に走った内山理名、NG集で一番笑わせてくれた堤真一、バシバシの内藤ジェーン竹中直人段田安則さん、そうそう安住さんもいましたね。
いや、何かその「Good Luck」というキザッぽい機内アナウンスが、正直見え見えで、でも時に目からウロコだったりで、飛行機に乗った時の非日常性に拍車をかける感じで、中々良かったというところで最終回は37.6%をマーク。
で、こういう視聴率という「引き」も俳優やスタッフの「引き」の相乗効果だったりで、実は私としては長さんの押さえた演技に充分「引き」を感じていました。

ここまで来ると次に何が出て来るか見え見えかもしれませんが、いつものパターンですが、長さんであれば、ここはもちろん
「んじゃ、次いってみよう!」
となる訳です。
(次週につづく)

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