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『ライク・ア・ローリング・ストーン』マーカス・グリル(白夜書房)

ライク・ア・ローリング・ストーン


→『ライク・ア・ローリング・ストーン』マーカス・グリル(白夜書房)



『ローリングストーン日本版』
(インターナショナル・ラグジュアリー・メディア)



BGM(Nine Inch Nails/year zero (2007))

「ノートが始められない」

言いたいことは山ほどあって

感じることは千の風ほどあって

それでも

どう書いても伝わらない、と

原稿を書いては捨て、書いては捨て

この半年は30年前のように頭が爆発しそうでした


映画は作れるはずもなく

中学高校と山ほどのノートを無駄にしました

最初の1行を書いては

どう書いても伝わらない、と

そのまま、その1行を書いただけで

捨てました

山積みにされた1行だけ書かれたノートを見て

気持ち悪いと言われました

でも、私に取っては切実でした

ノートが始められない、と


その時に流れていたボブ・デュラン


受験の頃は、予備校に行くと言いながら

誰もいない休日の教室で空気を完全にしようとしていました

私のまわりの空気は切実なBGMもなくあまりにも不完全でした

誰もいない休日の教室は、遠くグランドからのかけ声が聴こえ

金管楽器のフラットするような練習音が聴こえ

それでも私は目を閉じ教室の空気を完全にしようとしていました


その後、ある所で、完全に近い空気を見つけました

木曜の夕方にはパイプオルガンが鳴りました

時々、通り過ぎると、暖かい丸い浮遊物を感じました


大学受験が終り

山ほど原稿を書きました

そしてキネマ旬報に、そして音楽雑誌に

山ほど投稿して、一喜一憂していました

誰にも分らない世界、それを伝えたいと

でも、どう書いても伝わらない、と


大学を卒業して、留学して

山ほど原稿を書きました

強烈に書いて、そして捨てました

どう書いても伝わらない、と

その残骸がどこかのダンボールに

その山ほどの手書きの原稿の残骸があるはずです


風にたなびく木の葉を恐れ

たたずむ風に涙が止まらず


そして

最近、あの人には、あの風景が見えない

それが気になっている

そして

最近、あの人には、寂しい浮遊物がある

そして、そのまま地獄に堕ちるだろう

それが気になっている


ローリングストーン誌が創刊したと苦笑する

10歳のテイタム・オニールの創刊号

1973年9月のこと

ジョン・レノン最期の日に撮影された表紙

1980年12月のこと

そして、カート・コバーンの蒼い目


どうのこうの言わないで下さい

全ては雑音にしか聴こえません

コンテンツの違いに意味はなく

ただ

ローリングストーン誌が創刊したと

苦笑して買う自分がいて

まだ死なないでいて


「■■■■■」


結論の言葉を濁す自分は

どう書いても伝わらない

それでもこのBGMに救われて


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