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第12位 『ゆれる』 西川美和

ゆれる

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ポプラ社/税込1,260円)


「今年の日本映画の傑作」(川本三郎)と評価の高い「ゆれる」小説版。オリジナル脚本も手がけた監督は、'74年生まれとは思えない、鋭い生活感と人生観が光る言葉遣いで、一瞬一瞬に息を呑む質感豊かな映像を見事に活字化しています。

(野間健司・洋書部)

きょうだいをもつ人間ならば、誰しも思いあたるふしがあると思う。きれい事の裏で飼い続けている嫉妬や猜疑心は、何かのはずみで思いがけずくっきり顔を出す。しかし家族という血のつながりは、もっと愚直でシンプルな感情で成り立っていることを、この本は改めて認識させてくれる。醜い心や考えこそが、「記憶のボタンをかけ違えさせて」いくことに、ふだんなぜ我々は気づかないのだろう。

(林 亮介・大分店)

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