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第3位『アライバル』ショーン・タン

第3位『アライバル』ショーン・タン

→紀伊國屋書店で購入

河出書房新社/2,625円)

なんの先入観もなく、まず手に取ってページを捲ってほしい絵本。これほどまでにイマジネーションを掻き立てられる「本」に出会ったのは多分初めてだと思う。絵の素晴らしさはもちろん、文章が無い、新しいタイプの本。あえて絵本ではなく「小説」と言わせてもらいたい本。どんなに想像力の乏しい人でも思わずストーリーが頭の中に浮かんでくるはず。現実とかけ離れた空想世界の下地がありつつも、トーンの淡い人間味あふれる画風のおかげで、押しつけがましくならない不思議な世界が繰り広げられます。一度読み終えても、何度も繰り返し「見て」その都度違った「話」を楽しめそう。

〔札幌本店・池田朋子

旅立つ父。見送る家族。上空にしのび寄る不気味な影…。この本を最初に手にしたのは、3月11日からまだ数日後。まさに目の前で起きようとしている現実が描かれている!?と、震えが止まらなかった。住み慣れた地を離れる不安と孤独。そして新しい出逢い。言葉のない絵本。だのに、深く静かに大人の心をしめつける。主人公同様、今なお困難な状況におられる方々が、一日も早く笑顔を取り戻されんことを願ってやまない。

クレド岡山店・小倉みゆき〕

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