『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』アルバート ・ ラズロ ・ バラバシ(NHK出版 )
「複雑なネットワークの構造を解析!」
様々な複雑なネットワークの興味深い構造に関する理論と実例について詳しく解説されている。 バラバシ氏はネットワーク構造の研究をしている物理学者だが、 昔はサイエンスライターの仕事もしていたそうで、 様々な話題がまじえられており楽しく読むことができる。
世の中に存在するネットワークはランダムな構造をしていることは無い。
巨大なネットワークであってもノード間距離の平均は意外と短いという事実が
しばしば
「スモールワールド」と表現されるが、
ランダムなネットワークではこういう現象は起こらない。
世の中の複雑な事象は「羃(べき)法則」に従うものが多い。
対数グラフ上に描くと直線になるような関係は羃法則に従っていると呼ばれる。
パレートの法則
が成り立つような事象は羃法則に従っていることが多く、
最近流行の「ロングテール」というのもこの一例である。
フラクタルな構造は羃法則に従う。
本書では、ネットワークにおけるこのような性質のことを「スケールフリー」と呼んでおり、
インターネットの構造/Webの構造/人脈の構造/細胞の構造/経済活動の構造...
など様々な複雑なネットワークが「スケールフリー」になっていることを
詳しく解説している。
著者の考えでは、
徐々に構築される複雑なネットワークにおいてスケールフリー構造が出現するのだそうだが、
スケールフリーな構造は様々な原因によって出現するので、
因果関係が正しいかどうかは私にはよくわからない。
どちらかというと、
インターネットやWebのような複雑なネットワーク構造が羃法則に従うのはあたりまえであって、
複雑なネットワーク構造はほとんど羃法則に従うということが
最近まで知られていなかったことの方に驚いた。
複雑なネットワークがスケールフリー構造をしていることが解明されたことにより、
理論的にも実際的にも興味深い結果が得られる。
例えば、エイズが人脈関係で伝染するならハブの人間から治療するのが有効だし、
経済がスケールフリーなネットワークで動いているなら
予測もたてやすくなるというものである。
理論と実例を数多く含んだ本書は、
複雑なネットワーク構造に関する基本知識をつけるには最適である。
著者の主張がどこまで正しいのかはよくわからないが、
この分野をもっと調べると面白いことだけは確かである。