人文書宣言×ピクウィック合同フェア(通称ジンピク) 第1週経過!
こんにちは。毎度フェアのご来場&ブログをご覧下さりありがとうございます。
6/1より突貫工事ではじまりました人文書宣言×ピクウィック合同フェア『小説と思考の繋留――〝気づき〟の先を想像する』も一週間を経過、ということで今回はよりざっくりとフェアの内容に切り込んでいきたいと思います。
フェアの愛称が正式決定! その名も『ジンピク』
今回のフェア、正式名称を『今こそ! 人文書宣言第23弾 人文書宣言×ピクウィッククラブ「小説と思考の繋留――〝気づき〟の先を想像する」』というのですが、
……長い
というわけで予てより愛称がいるだろうという話があり、『ピクベス』や『ぶんぱく』のようになにかいい愛称はないものかと話し合った結果、晴れて正式に決定いたしました。
人文書宣言の〝ジン〟に、ピクウィック・クラブの〝ピク〟を合わせて『ジンピク』
企画中に暫定で使われていた名称そのままなのはご寛恕願いたい次第です。
さてこの「人文書宣言」ですが、ご存じない方もいるかと思います。今回ジンピクフェアを開催しております、紀伊國屋書店新宿本店の5階は人文書売場なのですが、この階で毎月ないしは隔月で入れ替わる定期フェアのひとつがこの「今こそ! 人文書宣言」なのです。人文系出版社の在庫僅少フェアや、哲学・思想の先生方による企画もの、またお客様参加型の企画などもありました。これまでのバックナンバーを扱ったページがありますので、ジンピクで興味を持っていただけましたら是非「人文書宣言」もチェックしてみてください。
改良継続中? 売場案内
ではここから実際にどんなフェアなのか、売場がどうなっているのかを詳しくご紹介します。
世界文学を代表する12人の作家を選出
四本ある棚のうち、左右二本に陣取るのがこの12人の作家です。『ぶんぱく'11』でも活躍した作家から選者が読みこみたい作家を12人厳選いたしました。各作家の生存期間を示したパネルで棚の両端を色彩り、また著作で入手できるものはほとんどこちらに揃っているという圧巻のスペースです。
作家とその著作が持つ世界観をキーワードとして抽出
例えばカフカなら『越境する寓話』や『虫の生活』、カルヴィーノなら『アンチヒーロー』や『ウェルメイド宇宙』といっったふうに、著作から汲みとれる世界観に選者がキーワードを付け、本を読むことで受け取ったものの〝先〟を導くようなきっかけ作りに腐心しました。キーワードは作家のパネルにも掲載しています。
このキーワードは実際、読者によってまったく違ったものが抽出されると思います。本を読むことでおそらく誰でも自然とやっている分類、頭の中での繋がりを、今回は選者による恣意的なキーワードとして並べました。この関連づけこそ読書の醍醐味のひとつに違いありません。フェアをご覧の皆様もやってみると、自分が物事の繋がりをどう捉えているかがわかって面白いですよ。
キーワードに沿った人文書をはじめとするさまざまなジャンルの書籍を同時展開
左右が作家の著作なら、四本の棚のうち中央二本には上記のキーワードから連想された書籍をこれでもかというほど詰め込んであります。フェアの性質上人文書がメインですが、それに限らず画集や実用書なども挟まれているのが見物です。棚板には各作家に対応するラインを引き、またキーワードもライン上に配置されています。小説からから人文書その他の本へ、左右の棚から中央へという流れがここに見いだせるのではないでしょうか。棚をご覧の皆様の想像力を刺激できれば幸いです。
また棚の下、台になっているところにも趣を異にした本が並んでいます。ここには各作家の評伝や研究書、また小説のガイドブック、文学案内、そして文学理論や批評の本を集めました。一部棚に収まりきらない画集なんかも積んでありますので、手に取ってみてください。
第一回 作家紹介
さて、それではいったいどんな作家が取り上げられているのか。気になるところかと思います。
今回はその12人からまず3人、それぞれのキーワードと選書の一部を合わせて紹介していたいと思います。リンク先のKinokuniyaBookwebも是非ご利用下さい。
アントン・チェーホフ(1860-1904)
ロシアを代表する劇作家で、また多くの短篇小説もものしています。その魅力はなんといっても作品に登場する〝普通の人たち〟の描写にあるでしょう。
>>>著作より
アントン・チェーホフ(作)ワレンチン・オリシヴァング(絵)『泥棒たち』中村喜和(訳)未知谷
>>>キーワード〝散歩観察〟より
ウラジーミル・ギリャローフスキイ『世紀末のモスクワ』中田甫(訳)群像社
>>>キーワード〝作法のメタモルフォーゼ〟より
ヴィレム・フルッサー『デザインの小さな哲学』瀧本雅志(訳)鹿島出版会
>>>キーワード〝場を持つこと〟より
ヒューバート・ドレイファス『世界内存在―『存在と時間』における日常性の解釈学』門脇俊介ほか(訳)産業図書
>>>キーワード〝アドホック〟より
ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』多田道太郎,塚崎幹夫(訳)講談社
フランツ・カフカ(1833-1924)
ドイツ語作家でプラハ生まれのユダヤ人家系。言葉と書くことのあいだでゆれた作家として遺したプリミティブな文章は、読み手に想像を繋ぐ楔を打ちこみ続けます。
>>>著作より
フランツ・カフカ『夢・アフォリズム・詩』吉田仙太郎(訳)平凡社
>>>キーワード〝越境する寓話〟より
ルイス・キャロル『スナーク狩り』河合祥一郎,高橋康也(編訳)新書館
エードゥアルト・フックス『ユダヤ人カリカチュア―風刺画に描かれた「ユダヤ人」』羽田功(訳)柏書房
>>>キーワード〝虫の生活〟より
グレゴリー・ベイトソン『精神と自然―生きた世界の認識論』佐藤良明(訳)新思索社
>>>キーワード〝身体の地層〟より
ルートヴィヒ・ビンスワンガー,ミシェル・フーコー(著)『夢と実存』荻野恒一ほか(訳)みすず書房
ヨセフ・ハイーム・イェルシャルミ『ユダヤ人の記憶 ユダヤ人の歴史』木村光二(訳)晶文社
>>>キーワード〝頭の中の連絡〟より
A.R.ルリヤ『偉大な記憶力の物語――ある記憶術者の精神生活』天野清(訳)岩波書店
オリヴァー・サックス『音楽嗜好症(ミュージコフィリア)―脳神経科医と音楽に憑かれた人々』大田直子(訳)
イタロ・カルヴィーノ(1923-1985)
イタリアの作家。リアリズム小説から児童文学、SF、メタフィクションまで多彩な作風を持ちますが、注目すべきはむしろその作風の変遷からうかがえる理想の小説像でしょう。フランスの言語遊戯グループ「ウリポ」にも加入していました。
>>>著作より
イタロ・カルヴィーノ『宿命の交わる城』河島英昭(訳)河出書房新社
イタロ・カルヴィーノ『カルヴィーノ アメリカ講義――新たな千年紀のための六つのメモ』米川良夫,和田忠彦(訳)岩波書店
>>>キーワード〝アンチヒーロー〟より
エリック・ホブズボーム『匪賊の社会史』船山榮一(訳)筑摩書房
カール・シュミット『パルチザンの理論―政治的なものの概念についての中間所見』新田邦夫(訳)筑摩書房
>>>キーワード〝解釈と価値〟より
ティル・バスティアン『アウシュヴィッツと〈アウシュヴィッツの嘘〉』石田勇治ほか(編訳)白水社
>>>キーワード〝ウェルメイド宇宙〟より
フィリップ・ド・ラ コタルディエール,ジャン=ポール・ドキス(監)『ジュール・ヴェルヌの世紀―科学・冒険・〈驚異の旅〉』私市保彦ほか(監訳)東洋書林
スティーヴン・ウェッブ『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由―フェルミのパラドックス』松浦俊輔(訳)青土社
>>>キーワード〝時間と記号と連続性〟より
ミロラド パヴィッチ『帝都最後の恋―占いのための手引き書』三谷惠子(訳)松籟社
ソール・クリプキ『名指しと必然性―様相の形而上学と心身問題』八木沢敬,野家啓一(訳)産業図書
今回は以上の三人です。次回更新時以降、じょじょに公開していきたいと思います。
乞うご期待!
それでは、長くなりましたがこの『ジンピク』フェア、紀伊國屋書店新宿本店の5階人文書売場にて、エレベーターのすぐ横にあるフェア棚で展開しております。開催期間は7月中旬まで。会期中、棚にちょっとした変化もあるかも?
分野ごとに明確にわけられた書店の棚らしくない、人の家の本棚のような並びは、眺めているだけでも楽しいもの。一度といわず何度でもご来場いただければ幸いです。