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『Unwritten Laws』Hugh Rawson(Castle )

Unwritten Laws

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「人生を乗り切る法則の数々」


「ボールを投げなければ、打たれない」。

 これはニューヨーク・ヤンキースのピッチャーだった、バーノン・(レフティ)・ゴメスの法則だ。一九三七年の試合で強打者ジミー・フォックスをバッターボックスに迎え、ツー・アンド・ツーになった時に編み出された法則といわれている。キャチャーはゴメスに投球のサインを出したが、ゴメスは全てのサインに首を振った。最終にゴメスは投球を行い、ジミー・フォックスはその球をレフトスタンドに叩きこんだ。

 また、広島と長崎に投下された原爆を作りだしたマンハッタン・プロジェクトに参加した、核物理学者のロバート・オッペンハイマーはこんな言葉を残している。「楽天家はそれが今ある世界で最良の選択だと思い、悲観論者はそれが本当であることを知っている者だ」。

 こんなふうに、人々が今に伝える法則や言葉を集めた本がこの『UNWRITTEN LAWS』だ。この本には500以上の法則や言葉が紹介されている。

 「自分で行う必要のない人にとって不可能はない」。

 映画評論家のA・H・ウェイラーの法則だ。ニューヨーク・タイムズ紙の記事で使われたらしい。

 違う立場の人が同じような法則を残している場合もある。まずは、シカゴのギャングだったアル・カポネの法則。

 「優しい言葉と拳銃は、優しい言葉だけより多くのことを成し遂げられる」。

 ウーム。なかなか怖い言葉だ。この法則とよく似た法則をセオドア・ルーズベルトが1901年に残しているので紹介しよう。

 「静かに話し、大きな棒を持っていればいろいろなことができる」。

 映画監督のウッディ・アレンジョージ・ブッシュ大統領(父親の方)も同じ内容の言葉を残している。オリジナルはウッディ・アレンの方で、「成功の80パーセントはそこにいることだ」という言葉。

 これはウッディ・アレンが若手の脚本家に向けたアドバイスで、初期の段階で自作が取り上げられずに、すぐ書くことを辞めてしまう若手が多いことに対する助言だった。ジョージ・ブッシュはアレンの言葉を借り、演説の際に「人生の90パーセントは顔を出すことだ」といった。

 そのほかにも、例えばマリリン・モンロー主演の映画で有名になったアニタ・ルーズの本、「紳士は金髪がお好き」の次作のタイトルが「でも、紳士は黒髪と結婚する」だったことや、フランクリン・ローズベルト大統領の夫人であったエレノア・ローズベルトが「貴方の同意なしには誰も貴方に劣等感をもたせることはできない」といっていたこともこの本で知った。

 また、金持ちであることで有名なフォーブス誌の発行人、マルコム・フォーブスはこんな法則を残している。

 「金が全てではない。貴方が充分といえるお金を持っている限りは」。

 では、最後にもうひとつ。化粧品会社エスティ・ローダの一族のひとりレオナルド・ローダの法則を紹介しよう。

 「経験を持つ人と、お金を持つ人が出会うと、経験を持つ人はお金を得て、お金を持つ人は経験を得る」。

 この的を射た法則には、思わず声を出して笑ってしまった。


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