『Shopgirl』Steve Martin(Hyperion Book)
「人気コメディ俳優スティーブ・マーティンの小説」
コメディ俳優でもあるスティーブ・マーティンのノベラ(中編小説)『Shopgirl』。この作品はマーティン自身の脚色・主演で映画化もされている。
作品を紹介すると、主人公はビバリーヒルズにある高級デパートのニーマン・マーカスに働く28歳の女性ミラベル。ミラベルは絵描きになることを夢みて毎日デパートの手袋売場で働いている。しかし、どうも絵描きとしては成功しそうもない。
彼女の住んでいる場所はビバリーヒルズのずっと東にあるシルバーレイクという街だ。それも住所に「1/4」がつくような小さなアパートだ。
彼女は、鬱病気味で医者から坑鬱剤を処方してもらい飲み続けている。彼女の容姿は悪くないのだが、自分の美しさには気付いていない。そのため、自分に好意を持ってくれるというだけが取柄のような駄目男のジャーミーとつき合っている。しかしジャーミーとは夕食は割り勘、デートはお金のかからないショッピングモールやボーリング場というつき合い方だ。
こういうふうに彼女を取り巻く状況を説明すると悲惨なのだが、著者のペンのタッチは軽く、駄目男のジャーミーとの関係もコミック調で進んでいく。
そこに現れるのが大金持ちで60歳近いビジネスマンのレイ・ポーター。レイはおしゃれで優しい紳士だ。年の差を感じつつも、いままで考えたこともないような夢の体験をさせてくれるレイはやはり魅力的だ。
レイとの関係が自分をどこに導いてくれるか分からないまま、ミラベルはレイとつき合い始める。
サブプロットとして、ミラベルの友人であるリサが登場する。リサは自分のセックスの上手さで男を捕まえることができると信じている。リサはミラベルからレイを横取りすることを企む。このあたりのドタバタなどはまさにハリウッドのコメディ映画そのものだ。
マーティンの文章は、情景や人物の姿が思い浮かべられ表現力は十分だ。気の利いた比喩や台詞も多い。オペラに例えれば、コミックな流れのオペラ・ブッファだ。
同じタイトルの映画ではクレア・デインズ がミラベル役として出演している。デインズはレオナルド・ディカプリオと共演した「ロミオ+ジュリエット」で一度はアイドル的な存在になった女優。レイ・ポーター役がスティーブ・マーティンだ。
気楽なロマンチック・コメディを読みたいと思っている人にお勧め。