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『Odd Girl Out』Rachel Simmons(Mariner Books)

Odd Girl Out

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「アメリカ女子学生のいじめの形」

『Odd Girl Out』はアメリカの10代の女の子がいかにいじめをおこなうかについて書かれた本だ、

著者のレイチェル・シモンズは1996年生まれ。ニューヨーク州にあるバッサー・カレッジ卒業。専攻は政治科学とウイメンズ・スタディ(女性学)。その後、イギリスのオックスフォード大学に進み、卒業後はワシントンDCで政治の仕事に携わった経験の持ち主。

 

レイチェルはこの本を書くあたり10校の中学や高校を訪れ、約300人の女子学生から話を聞き、女の子同士のいじめの現状を聞いた。

そのほかにも、すでに成人した昔の友人に会い、何故いじめが起きたのか、その時どんなことを感じたかなどの質問をしている。

『Odd Girl Out』は体験記ではなく、手法としてはケーススタディと言っていいだろう。

この本を読んで、中学や高校の女子学生のいじめの対象は、対立するグループからではなく、仲のいい者のなかから現れることが多いと分かった。いじめはある日突然、始まるという。

仲間のリーダー格が好きな男性と仲良くした、仲間のなかでいつも偉そうにしている、などのちょっとした理由で、ある特定の女の子が、仲間全員から無視され、いじわるをされ始める。そのきっかけが、仲間内で交わされる悪口や、噂、それに相手を陥れるための嘘などの時もある。

また、リーダー格に取り入るために、誰かがこんなことを言っていたよと告げ口をする者もいるという。全ては本人の裏でおこなわれるため、本人は自分がどうしていじめを受けるのか分からない場合も多いらしい。

この時期の女性同士のいじめは、外部からは発見しづらいという。暴力や言い争いがほとんどなく、相手を孤立させることでいじめを達成させるからだ。それだけ、女の子にとって仲間外れになることは辛いものなのだ。先生に相談しても、あなたはその女の子と仲がよかったじゃない、友達なのだから話し合えばいいと言われる。しかし、みんなは口も聞いてくれない。

いじめを受けた者は、自分に対する価値感が下がり自信をなくす。それは、その後の人生に影響を及ぼすという。友人を信じられなくなり、自分を素直に出すことを恐れるようになる。

著者自身もいじめを受け、またある時は仲間に加わりひとりの友人を無視し続けたことがあったという。つまり、女の子同士のいじめは大きく取り上げられてこなかったが、世代に関係なくずっと続いている問題なのだ。

アメリカにもやはりいじめはある。しかし、いじめを受けた女の子の多くはすぐに他の学校に移っている。転校が簡単なアメリカだからできることなのだろうか。

そのほか、いじめが始まったのと同じくらい突然にいじめが終わる場合もある。女の子たちの興味がほかに移り、もう相手をいじめるのに飽きてしまう場合だ。

女の子のいじめだけについて語られた興味深い本だ。


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