書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-06-05から1日間の記事一覧

『父フロイトとその時代』マルティン・フロイト(白水社)

→紀伊國屋書店で購入 「フロイトのウィーン」 フロイトには三人の息子と三人の娘がいた。息子たちはマルティン、オリヴァー、エルンストであり、娘たちはマティルデ、ゾフィー、アンナである。息子たちは精神分析からは遠い世界で育ったが、末娘のアンナだけ…

『加藤恕彦留学日記-若きフルーティストのパリ・音楽・恋』加藤恕彦(聖母文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「アルプスに消えた幻のフルーティスト」 人の日記を読むのがおもしろいなどと言ったら趣味を疑われてしまいそうだが、この日記は是非読むことをお勧めしたい。 日記を書いたのは、若き有望なるフルーティスト。生きていたらとっくに還…

『イギリス的風景-教養の旅から感性の旅へ』中島俊郎(NTT出版)

→紀伊國屋書店で購入 高校生がピクチャレスクを学ぶ日 旧式な人文科学が気息奄々とする一方、メディア論を核に新しい人文科学が醸成されつつあるのはたしかだし、ぼくなども教育現場にそうした趨勢を反映したカリキュラムを工夫しようと、柄にもなく「教育者…

『女ひとり玉砕の島を行く』笹幸恵(文藝春秋)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 本書に登場するのは、普通の日本人である。その普通の日本人が、六十年以上も前に戦争で亡くな…