書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2007-07-03から1日間の記事一覧

『東京夢譚』鬼海弘雄(草思社)

→紀伊國屋書店で購入 「なつかしさという紐のこぶ」 曇りの日も、晴れの日も。こんな日は、いい写真が撮れるかもしれない。写真家は、「○○に行ってみるか」と家を出る。すれ違う人や犬や建物を観察しながら、頭の中は時と場所を超えてゆく。「Web草思」に連…

『生のものと火を通したもの』クロード・レヴィ=ストロース(みすず書房)

→紀伊國屋書店で購入 「待望の神話分析の一冊目」 レヴィ=ストロースの『神話論理』の邦訳の刊行がやっと始まったことを祝いたい。原著が一九六四年の刊行であるから実に四〇年後の翻訳出版ということになる。ぼくは半ば諦めて、安価に入手できる英訳本四冊…

『書物の宇宙誌-澁澤龍彦蔵書目録』国書刊行会編集部(国書刊行会)

→紀伊國屋書店で購入 もっとストイックなドラコニアをという欲ばり そもそも2006年が読書好きにとってとんでもない「驚異の年」になったのは、松岡正剛『千夜千冊』(求龍堂)と『書物の宇宙誌-澁澤龍彦蔵書目録』(国書刊行会)二点の刊行のせいである。貪…

『中国の歴史8 疾駆する草原の征服者-遼 西夏 金 元』杉山正明(講談社)

→紀伊國屋書店で購入 本書評は、早瀬晋三著『歴史空間としての海域を歩く』または『未来と対話する歴史』(ともに法政大学出版局、2008年)に所収されています。 「唐王朝を揺るがした「安史の乱」は、六〇〇年におよぶ大変動の序奏だった。耶律阿保機のキタ…

『技術と時間3——映画の時間と難—存在の問い』(未邦訳)ベルナール・スティグレール<br><font size="2">Bernard Stiegler, 2001, <I>La technique et le temps 3. Le temps du cinema—et la question du mal-être</I>, Galilée</font>

→紀伊國屋書店で購入 「可能性の世界における「新しい批判」」 スティグレールによれば映画というメディアは、『技術と時間』シリーズの第二巻、『方向喪失』において分析された二つの要素から成り立っている。一つは正定立、すなわちある対象そのものへと到…