書評空間::紀伊國屋書店 KINOKUNIYA::BOOKLOG

プロの読み手による書評ブログ

2009-12-01から1ヶ月間の記事一覧

第2位『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/1,779円) とても静謐な世界。伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡の物語。彼を縦糸とするならば、彼を囲む人々が横糸となり、静かで美しい物語を織り上げてゆきます。どうぞゆっくり、物語の世界…

第3位『星守る犬』村上たかし

→紀伊國屋書店で購入 (双葉社/800円) 10分ちょっとで読み終え、数時間の余韻が残り、幾日も思い出され、何度も読み返してしまう。犬と人との淡々と流れる物語。「幸せ」とは言いきれないラストながら、その幸せの枠組みを考えさせてくれる。単純に「泣…

第4位『八朔の雪』髙田郁

→紀伊國屋書店で購入 (角川春樹事務所/579円) ぴりから鰹田麩にとろとろ茶碗蒸し。読んでる先から生唾がぁ・・。時代小説に求める三要素のひとつ、読み手の想像が膨らんでいく「料理」を軸に主人公澪を取り巻くあったかい人々と、悪辣な妨害にも立ち向か…

第4位『プリンセス・トヨトミ』万城目学

→紀伊國屋書店で購入 (文藝春秋/1,649円) 無限の想像を掻き立てる緻密でありえへん話。大阪人の団結力なめるなよ! 文句あるんやったら大阪全部止めるからな! とばかりに守られる秘密。でも、「ホンマは言いたいねん!大阪城の下には実はなぁ・・・」「いや…

第6位『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』加藤陽子

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/1,785円) 歴史は科学だと思いますか?の問いが新鮮です。日本人はなぜ戦争を選択したのか?栄光学園の中高生たちとロジカルに追究していきます。彼らの勉強ぶりと、どんな発言でも受け止めて応える加藤先生の「匠の技」…

第7位『宵山万華鏡』森見登美彦

→紀伊國屋書店で購入 (集英社/1,365円) 夏の妖しさと華やかさに目がくらむ。ひとりの男を騙すため、今壮大な「偽祇園祭」がはじまる。やがて、つくりものが現実に溶け出し、夏の不思議も混ざり合い、新たな物語がはじまる。“超金魚?”“宵山様?”そして繰…

第8位『神去なあなあ日常』三浦しをん

→紀伊國屋書店で購入 (徳間書店/1,575円) 「あぁ、神去村で林業に従事したら、こんな楽しい生活が送れたのかなぁ。俺も行きてぇ~」なんて妄想してしまう傑作。タイトルからまったりした内容なのかなと思いきや、笑いありトキメキありダイナミックなアク…

第9位『単純な脳、複雑な「私」』池谷裕二

→紀伊國屋書店で購入 (朝日出版社/1,785円) 二枚の異性の写真を交互に見せられた時、人は少しでも長く見せられた方を「好みのタイプ」に選ぶ確率が高い。これは脳が長く接したものほど「好き」と感じるから。そこに私達が「カッコいい」等の様々な理由を…

第10位『元素生活』寄藤文平

→紀伊國屋書店で購入 (化学同人/1,365円) 高校時代に読んでいたら、あれほど化学を毛嫌いせずに済んだだろうという1冊。111種もある元素全ての特徴を擬人化して紹介するというアホらしくも勉強になる教養書。駅などでもよく見かける寄藤さんのイラス…

『川辺川ダムはいらない-「宝」を守る公共事業へ』高橋ユリカ(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 ものごころついたときから川べりを歩き、泳いだり、釣りをしたりした川は、もうない。瞼を閉じれば、川面は浮かび、石の形まではっきりと思い出される。1957年に、突如、新聞報道でダム計画を知らされ、37年余の反対運動は95年に「終わ…