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プロの読み手による書評ブログ

2010-04-30から1日間の記事一覧

『新日本人の起源』 崎谷満 (勉誠社)

→紀伊國屋書店で購入 著者の崎谷氏はもとはウィルス学が専門ということだが、日本人の成り立ちをさぐるために、分子遺伝学、人類学、言語学までを射程におさめ、京都大学の伝統である学際的なとりくみをおこなっている研究者である。本書も第一章はDNA、第二…

『Y染色体からみた日本人』 中堀豊 (岩波科学ライブラリー)

→紀伊國屋書店で購入 ミトコンドリアDNAが母系で受け継がれるのに対し、Y染色体は父系で受け継がれる。ミトコンドリアDNA解析は過去10万年の人類の移動を明らかにしたが、正確には女性の移動なので、ヨーロッパ人のアメリカ大陸侵略のような男性主体の移動は…

『不純なる教養』白石嘉治(青土社)

→紀伊國屋書店で購入 『不純なる教養』は、フランス文学者の白石嘉治によって書かれた大学と思想をめぐるテクストをまとめた書物である。大学あるいは大学という運動、そしてその無償化を中心に、フランスの大学ストライキ、札幌・トリノの大学サミット、洞…

『監獄ビジネス-グローバリズムと産獄複合体-』アンジェラ・デイヴィス(岩波書店)

→紀伊國屋書店で購入 「監獄ビジネスの危険性」 グローバリゼーションの時代に、資本が国内市場で新たな市場を開発するための重要な手段の一つが、公的な領域で行われるべき業務を民営化することにあるのはよく知られていることだろう。 公共機関は、税金で…

『「私」を生きるための言葉』泉谷閑示(研究社)

→紀伊國屋書店で購入 「ゼロ人称集団という世間からの解放の書」 ユニークフェイス当事者と話をしていると避けがたい苦悩として、他者からどう思われているのか、という「とらわれ」がある。気にすることはない、といくら言っても効果はない。その人は、他者…

『世に棲む日々』司馬遼太郎(文春文庫)

→紀伊國屋書店で購入 「幕末は面白い!」 フランス人が日本人より読書量が多いかどうかは知らない。ただ、こちらの書店を覗くと、いつでも歴史文学が置いてあり、歴史に対する関心の高さが分かる。日本でも歴史文学は常に一定の読者を持っているように思える…