酒が飲みたくなる3冊
正確に言えば「酒浸りになりたくなる」と言ったほうがいいのかもしれない。間違っても「何かをやりとげた後、じっくり味わうシングルモルト」とか「二人で祝うラトゥール何年もの」とかそういう本(ヘミングウェイならどちらも出てきそう)の話ではありません。
●『詩人と女たち』(C.ブコウスキー、中川五郎訳、河出文庫)
ご存知酔いどれの王道ブコウスキー、どれを読んだって酒・酒・酒ですが、個人的にはこの作品が一番好きです。色々な人がブコウスキーを訳していますが中川五郎さんのものが自分には一番しっくりきます。
この作品ではなかったかもしれませんが、少しだけビールの残っている缶を灰皿代わりにしていて間違ってそれを飲んでしまうなんて、いかにもああ、ありがちって感じです(ないか?)。
そういえばこんな言葉もありました。「人は、嬉しいことがあると酒を飲む。哀しいことがあると酒を飲む。何もなければ何かを起こそうと思って酒を飲む」
テーマ的には悪友・檀一雄の『火宅の人』などのほうが合っていそうですが、『人間失格』のイメージで語られがちな太宰の、ユーモアあふれる軽い文章の面白さを知ってほしくて敢えて出しました。どちらも非常に短いエッセイですが、特に「禁酒の心」は笑いなしでは読めません。
●『平成よっぱらい研究所』(二ノ宮知子、祥伝社)
『のだめカンタビ―レ』が大ブレークの彼女。でも私にとってはこちらの作品のほうがよほど重要です。
飲みすぎて、へまをして、自分ごとこの世から消し去りたいなんてくよくよしているとき、そんなあなたをこの作品がきっとパワフルに励ましてくれます。まさしく一種のバイブルだと、勝手にですが思っています。
【新宿本店・石井温己】