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新宿南店仕入だより~3月(『80対20の法則を覆すロングテールの法則』ほか)

80対20の法則を覆すロングテールの法則

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【登場する新刊】


80対20の法則を覆すロングテールの法則』(菅谷義博、東洋経済新報社

セイヴィングキャピタリズム』(R.G.ラジャン&L.ジンガレス、慶應義塾大学出版会)

持続可能な発展の経済学』(H.E.デイリー、みすず書房

○月○日

5階「経営書」のチームリーダー・Iさんに売場イチオシの最新刊『80対20の法則を覆すロングテールの法則』の感触について聞く。新刊台に大きく展開中で、好調な滑り出し。「来週早々に追加注文をして、さらに売り伸ばしたい」と闘志あふれる取り組みに仕入も思わず喜ぶ。ネットビジネス業界で広まりつつある最新キーワード「ロングテール理論」について書かれた注目の新刊。

書籍はネットや新聞、雑誌に比べると、情報の鮮度は落ちるものの、時代の最先端を象徴するキーワードに関する新刊は、ビジネス書の販売の中では、もっとも面白いところ。特に「類書がない」状態でいかに見極めて店頭に並べるかは、書店の実力が試される瞬間でもある。 

×月×日(日)

朝日新聞読書欄のトップで待望の新刊が紹介される。『セイヴィングキャピタリズム』。比較制度分析の第一人者である青木昌彦教授が「現代日本にとり、理性にもとづく警世の書としての価値は大」と大絶賛。金融市場に焦点をあてた壮大な資本主義論が膨大な注を添えて、翻訳刊行。新宿南店の大きな特徴のひとつとして、学術専門書の売上が高い点があるが、この本も書評にとりあげられる前から、着実に売上を伸ばしてきた。今も南店が紀伊國屋グループの、ダントツの売上で独走中!

 経済学に関する専門書の最近の傾向として、従来の経済学の枠を超えた「学際的」な内容が目立つ点があげられる。環境経済学の開拓者ハーマン・デイリー著『持続可能な発展の経済学』も今回のように書評紹介がきっかけで売れている一冊。

 新しい学問分野に関する新刊専門書は店頭販売はもとより、インターネット経由で大学や図書館からの注文も多いのが特徴。特にネット注文の反応は早いので、その本がこれから書評で紹介されるか否かの判断基準としても、活用している。【新宿南店仕入担当・二宮】