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『小さいことにくよくよするな!』<br>(サンマーク出版)

02kuyo →紀伊國屋書店で購入

にんげんだもの
「百年後にはどんな意味がある?」

 朝起きて、自分でも把握出来ていない無数の残務と〆切破りの山積みの原稿を横目に、今日も一日スケジュールだけに追われるかと思うと、シャワーを浴びながら、いつも頭をかかえこんではため息が出てしまう。そういう時は通勤電車の中で、私がこんなに督促に追われていることを、この車内の人達は知らないし、窓から見える街に住む人達にとっては督促のトの字も関係ない代わりに、私は他の人達がどんなに悩んで生活しているかを知らない、と思う事にしている。それで少しは気が楽になる。この本のおかげといつも思い出す。
 世界で4000万部以上売れた、言わずと知れた 超ベストセラー、くよくよするなシリーズ全5冊の原点でもある。そういう意味では、各項目が見開き1頁程度で読めるこの手の本は無数にあるし、タイトルもハウツーものにありがちなキャッチーな冗長さで、でも思い出したかのように時々この本を開けてしまう。
 その魅力は、何か「にんげんだもの」に通じる。どうしろとは言わない。いいじゃないそれで、という方向性。極めつけは「百年後にはどんな意味がある?」と。勿論そうなんだけど、そうも言ってられないから悩んでるんだけど、と思う日は気持ち不調の日。そんな日は早く帰って寝た方が良い、そんなバロメータにもなる。
 初めての仕事の面接試験で、自分の研究モットーは?と聞かれ「不完全な完全です」とつい生意気なことを言ってしまって「ああしまった」と思ったことがある。所がそこにいた理事の方が「いや分かるような気がする」と言われて救われたことを良く覚えている。そのことが本書の冒頭に出て来る。「くよくよするな!」「完璧主義を捨てるようになれば、それ自体で完璧」と。このセンテンスだけで購入してしまった。
 難しい話?はここまでで、あとは平たい話が続く。ちなみに「相田みつを美術館」は有楽町の東京国際フォーラムの地下にあって、いつも横目で見ながら通り過ぎてしまうので、早く帰ろうと思う日に寄ってみたいとリストアップしている。

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