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『the period』<br>PINK CLOUD(BMGファンハウス)

11pink →紀伊國屋書店で購入

「最後の夏
 弾きつぶすやつら
 男のロック」

何も活字だけがストーリーテラーではない。
今や活字のない映像の多弁は無視出来ない。
紀伊國屋BookWebでもこのDVDは手に入る。

伝説のライブ。
ここまで弾きつぶすやつらを見たことがない。
野音の伝説"Free Spirit" (1979)もそうだけど、他にもいくつかの伝説の映像は残るが、私としてはこっちの解散ライブの方の凄まじいバトル、圧巻の武道館ロックスピリット"the period" (1994)に酔う。
1981年、初めて日比谷の野音で見た。
その時、私も最後の夏を感じた。

MIDIもループもシンセもまやかしもなし、生で細工なしで行くぜ、最初からスタンディングで行くぜ、どうだ、みたいな。
ところが、26分(〜hug letter)までCharは何の気なしに突然Jazzを弾きだす。それもキーボードでインプロビゼーション
実は昨年のAIをボーカルにすえたツアーではドラムもたたいた。野音と渋谷AXでも期待したが、とうとう見られなかった。
それもよくあるパターンではあるが、ストレートなロックを期待した観客にフラストレーションを与えておいて、でも本当はJohnny, Louis & Charでやりたかったこと、実力はこれだぜ、アハハって笑い声が入るし、観客をシニカルに裏切ることで、俺達ほんとはこのレベルだったんだぜ、みたいな。
ジョニーのあれっ?ていうボーカルもあるし(立ち上がりは仕方ない)。

で、26分(16〜)からは夏の野音のノリになる。外角低めのスローカーブに目が慣らされて、突然の胸元高めのシュート気味ストレート勝負に来た感じ。のけぞる。
行くぜ!ここまでやるか?知らねえよ、分かんないやつは帰りな、という3人のRockerの突き放したパワー。

日本に、日本に生まれて、こんなやつらが、こんな無骨なRockerが、日本にいて、いた、ということで、誇りに思う。RockerのRockerって、和製英語っぽい、それが言い得て妙。

日本人、Charと同じ日本人だったことを誇りに思うよ。
日本人のつらいロック人生は「外人」には分からない。

aren't you ready ?... karamawari... drive me nuts...
目を赤くする Char、それを見るジョニー、相変わらず伏せ目がちな加部。
15年もやってきたんだぜ。
何で俺達、解散するんだ?
でも、これがピリオドさ。
「という訳で、お疲れさんでした」とCharとジョニー。
でもそこに加部はいない。

これで最後のライブ。最後の夏。
いいんじゃないかな。
分からないやつには分からない。知らないやつは知らない。伝わらないやつには伝わらない。それでいい。
それだけ真剣勝負、ということ。

これは男のロック、素のままのロックバトル。
媚びない。
今年も野音の夏がやって来る。最後の夏を想い出しながら。

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