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『ワイルド7(セブン)』望月三起也<br>『ケネディ騎士団(ナイツ)』望月三起也

ワイルド7(セブン) ケネディ騎士団

→紀伊國屋書店で購入

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BGM(Christina Aguilera/Back To Basics(2006))

「真夜中のハードロック
 夜明けのバラード
 そして再びハードなリフで
 画びょうを握ってでも起きてろ」

とにかく強烈に忙しい。
破綻の一都六県、▲▼寸前、尋常ではない。

しかしそれを普通に見せる、あらゆる危機に冷静に対処するハリソンフォードのような体力が精神力がプロの勝負所。

分刻み秒刻みに食事の時間もトイレに行く時間もない。

オフィスや自宅の時計も腕時計も電波時計で、コンピュータのデスクトップにも秒針表示のweb時計があって、9時からミーティングであれば、8時59分30秒まで別件を片付けていて、30秒間でミーティングルームに向う。その30秒間で"show time !"と頭と顔を切り替え、すでに部屋に集まっている仲間に昨日のサッカーの試合で何であそこで小野を出しても迷うだけだよなとか雑談から始める。そして◆◆君そういえば昨日の●●はご苦労様でしたとか1分30秒ないし2分程度のイントロが終って先週までのディスカッションの内容をリマインドした頃に部屋に入ってきたやつらは正直■■■■。

夜は大体12時過ぎか1時ないし2時までには寝るが、横になると気を失ったかのように寝てしまうので、大体どうやって寝入ったかよく覚えていない。確かに昨夜は夕食を食べて、その椅子に座ったまま寝てしまった。そして3時台か遅くとも4時台には起きて仕事を始めないとその日の用意が間に合わず、大学に出る時は5時台、都内で会合が有る時は6時台、子供を駅に送る時でも7時前に家を出るまで、朝食を取る時間もなく、水を1リットルくらい飲みながら仕事を続ける。シャワーを浴びるも水ごりのため、佐伯祐三だ。先日お坊さんに水をかぶったりしてます?と聞かれてドキッとしたが、いやウチの親父のことでした。大体そんな睡眠時間では体がもたないことは分かっているがとにかくもたせる。いざとなったら画びょうでも握っていればいい。先日は4半世紀ぶりに帯状疱疹と蕁麻疹がいたるところに出て、突発性難聴もどきもさることながら体に免疫力がなくなっていることを実感したが、休む時間もなく、電車内も含めた数十分の休息に根性で回復力を目指す。それで蕁麻疹が治らなければ、自分の根性がたるんでる証拠で、富士山を徹夜で登頂してもその方が全然楽で、とにかくもたせて、それで死んだら死んだでさようならの世界。ミーティング中に寝ているやつらは正直■■■■ので起きろとも言わない。

移動中は移動中で電車か車かによって仕事の処理具合が違ってくるが、車内に立っていたらPowerBookを左手にかかえ、かかえる左手の親指シフトプラス右手で片手タイプをする。電車をおりる間際にはPowerBookを鞄にしまうが、その時左手はかかえて曲げた状態からゆっくり時間をかけてまっすぐに延ばさないとアクチン+ミオシンのスライドに負担をかけ、それでも左上腕は慢性腱鞘炎っぽい。世の中タラタラノロノロ歩く人ばかりで、夏休みとかオフタイムの人はノロノロで構わないし、むしろその方が良いが、社会人でノロノロタラタラは絶望的で正直■■■■。確かに山の手線に近づくにつれ、ましてや山の手線の内側はノロノロタラタラしている人は少ない。決して良いとは思わないが。

歩き方だけで、挨拶だけで、表情だけで、目だけで、分かるじゃない、何も出世する必要はないけれど、■■■■人は■■■■のでそれでも世の中それはそれで必要不可欠で成り立っている。この忙しさは決して良いとは思わないし、むしろ全て御破算にした方が良いとも思うし、でも浮浪者になろうとは思わないし。格好だけは普通でも気持ち的には浮浪者と大差ない場合も多く、それでも哲学的でもなく、でもいるだけの世の中にはいるだけ必要、こういう言い回しも意識して言い得て妙を狙うも空振り。

何れにしても、本稿の1行目からの内容は決して良い内容ではなく、それに甘んじているわけでもなく、むしろひどい生活であると思うし、それに酔っているわけでもない。ただ、人間、一生の内でいつかはそういう時期があるべき「マスト」で、◆◆さんにしても「あなたたち何を言ってもいいけど暇なんだよなあ」と言う気持ちが分かる。そういう経験のない一生は■■■■し、死んで生まれ変わっても、多分また悟るまで現世に戻ってくるのだと思う。ましてや、そういう経験のなさそうな、これからもなさそうな人との付き合いは勘弁してもらいたい。それがどういうことか、どういう意味か、本当にf▼▲k upでどういうこと、どういう意味なのか、世の中をどう見ているのか、見えているのか・・・まあどうでもいいことですけど。

今年の夏はほぼ毎週1回は高速を使って片道150 キロから200キロ程度を、日帰りないしは簡単に1泊して帰ってくるというスケジュールになっている。それも日帰りの方が滞在時間が長かったり、つまり早朝に出て深夜に戻るという日帰りの方は18時間程度のスケジュールで、夜にチェックインで早朝チェックアウトとなる1泊はたいてい12時間以下のスケジュールになっている。

1泊しても結局は4時かそこらに風呂に入り、そこで髭をそっても、髭がグッと延びるのはこれからの時間帯なんだけどなあと、9時からのミーティングには既に頬髭づらになりそうだなとか思いつつ、でも今しか髭を剃る時間がないと判断する。

明け方の高速は、そういう意味では快適で、夜明けのバラード、そして再びハードなリフで、また18時間後の真夜中のハードロックへと気持ちをつなぐ。そんな時、何故か最近、ワイルド7(セブン)とケネディ騎士団(ナイツ)とを思い出す。画びょうを握ってでも起きてろ、という1シーンを思い出す。


こういう生活を一生の内でいつかは余儀なくされる必要はあって、それがなくてノロノロタラタラリラックス、週末は買い揃えたセットで家族キャンプBBQ夫婦円満ロハスなんて生活は50年くらい昔の話で、どんなに忙しくてもロハスな生活は出来る訳で、また忘れた頃に戦争が始まったら、そんな時代もあったねと後で笑える時が来る、まわるまわる平成元禄浮世絵生活になって、正直そんな形式的な余裕なんて■■■■でしょう。要は何を言いたいかというと、こんな毎日の生活は決して基準にならない最悪の繰り返しで、満員電車でこれから向こうは女性専用車両かとかホームでの車両選択を元に戻して、人も見ていないところでチックになりそうに顔を変形する生活は尊くもなく、ということで、ノロノロタラタラ歩く生活は時代的には必要でも現世の修行レベルからするとまだ十分のオーラがなくて、正直■■■■。もう何回か生まれ代わって現世で数百年くりかえし見えない生活を余儀なくされるという運命で、大体これからそんな彼と彼女と豊かな生活が望めますか?

そうとでも言っておかないと、私の崩れてしまいそうなフラジャイルな気持ちがそのまま粉々になりそうで、もう・・・そう・・・もう、そろそろ・・・今、何が変わって行くのか、この気の果てに。


(これはフィクションです)


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