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『ゆっくり走れば速くなる』浅井えり子(ランナーズ)

ゆっくり走れば速くなる

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LSDって言っても
 Lucy in the Sky with Diamonds
 ではありません」

確かに子供の頃からミュージカルには馴染みがありましたけど、お金もなく仕方なくビクトリアステーションの裏の安いB&Bにいた時も、ほとんど毎日マチネのミュージカルで天井桟敷で泣いていましたけど、ボブフォッシーを観た時の衝撃は凄かった。これ、俺じゃないの?って、何たる大それた妄想・・・いや何て理想的なミュージカルなんだ!って。ロイシャイダーも死ぬ時に、このカットを観たに違いないでしょうし、私も死ぬ時に、このカットを観るに違いないでしょう。

やる事がない時は走ることにしています。

やる事がないはずはないですけど、逆に山ほどあるので、一瞬やる事が思い浮かばなくなる時は走ることにしています。

それから、ホテルに着いたら走れるか泳げるかを確認することにしています。

ここ数ヶ月は出張とかで出たり入ったりで、先日の目白ロードレース(今年はローカルレースを中心にエントリしようと)の用意にしても、仕事と並行してやろうとすると、ディナーに集合する前に1時間あったりすれば5キロは行けますし、日程の間隔からして今夜は走っておかなければと思えば「今日ちょっとホテルに戻ってやらなければならない事があって」と飲み会を失礼したりします。嘘ではないですし。最近は日本のホテルでもレセプションデスクでジョギングマップを用意している所もありますし、ジムはいたる所にありますし、なので、大阪で、北京で、お台場で、ホテルのジムのランニングマシンで走る時だけはセレブになった気にもなれて一石二鳥です。

外では最近は、2キロ走って休み、5キロ通しで走り、最後に1キロでクールダウン。むしろ、その時によってキロ5分から6分ペースで加減して、スピード感よりも、足を動かし続けるという5キロとか1キロとかの距離感、30分間走り続けるという時間感覚があった方が、ロードレース中はペースの目処がつきやすい感じです。ただ目白ロードレースの3回の上り坂だけは誤算でした。来年はあそこをどうにかせねば。

9月に地元の小学校のPTAのバレーボール大会があるからと誘われました。市内にある公立小学校の対抗戦らしいのですが、ウチの子はもうとっくに卒業していて、でも今年からルールが変わって、在校生の親でなくても、卒業生の親でも学区在住であれば出ても良いことになったらしく、ただ男は前で打ってはいけなく、レシーブだけとのことですが、実はこのPTAのバレーボール大会というのは要はママさんバレーなのでレベルが高いですし、経験者がバンバン打ってきます。

実は前の教頭先生は見るからに走り込んでいるランナーで、校内でマラソン大会があると、1年から6年まで学年別に走るのに、それに全部つきあって走っていたという快活な先生で、東京マラソンの前の東京シティロードレースにも出ていて(その先生の方が全然早いですし、娘さんに至っては実業団の選手ですし)ゴールの国立競技場で着替えながら「先生どうでした?」「今日は暑かったですね〜」と話をしたものです。実際、最後の東京シティロードレースは猛暑になり、何人も倒れて、走る横を何台もの救急車が行き来していました。その先生はウチの子が卒業する時に、校長先生として転校されたのですが、お世話になった御礼に、首まわりの日よけ付きのジョギングキャップを贈りました。その先生がバレーボールにも熱心で、今回のお誘いになったのではないかという御縁です。

人間ドックで女医さんからの問診で「何か体に良い事やってますか?」と聞かれたので、やや自慢げに「いや、まあ、ちょっと走ってますけど」と答えたら、「走る事が体に良いとは誰も証明していませんし、低酸素運動は体に良くないですよ」と言われて、所さんの目がテンになったことがありました。

確かに・・・

確かにですが、ロードレースで走る年輩の方々の体は無駄がありませんし、顔は生き生きしてますし、年輩に限らず、老若男女を問わず、走り終わった後の一種の高揚感あふれる顔は、何ともやる事がないはずはない毎日とは違う世界が観えます。

まあ、ちょっと、ど根性の話はまたにしましょう。

キーナートさんに「だから日本のスポーツは」と言われそうですが、まさに巨人の星世代は、小学校の時に家の前でうさぎ跳びをして、膝がオスグットシュラッテルになったという私です。

でも

体に良くないからって、死ぬ時は同じ

ボブフォッシーのカットに

ツェッペリンのフレーズに

トレントのフィストアップ

それで十分でしょ

絞っている方がポックリ行ける

何て幸せなんでしょう


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